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9背負い過ぎた17歳
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9 背負い過ぎた17歳
『僕を助けなくて良い』
せっかく、義父母から離れるきっかけをくれた人にとても失礼なことを言っていることは、承知の上だった。
申し訳ないと思っている、既に1度朝霧は僕を助けてくれているのだから。あの二人から引き離してもらっておきながらも、約束は守れないと言っているのだ。
自分が酷く醜くて、最低な生き物になった気がした。だから、皆に嫌われているのかとも感じてきた。
もちろん違うことは分かっている。原因はあの義父母だったことも分かっている……、けど、今は人から嫌われるのも当然な人間でいるような感じがする。
「……それは、どうして? 助けたくない? 救いたくない?」
朝霧が静かに僕に問うようだった。違う、救いたいとか救いたくないとかじゃない。
ただ、僕は……自分がそんなこと出来る人間じゃないことを知っている。
「……もし、本当に僕が聞いたのがその人の声だとしても、僕は勝手に流れてくるモノを聞いてるだけで、受け身だ……聞こうと思って、聞けるモノじゃない……」
そうだろ…誰よりも、強いから必ず助ける、それが出来るなら約束だって出来る。僕は違う。強くもない、心の声を聞きたいと思った時に聞けるんじゃない、こんなの能力だ、力だなんて言ってはいけない。
「っ……怖い、周りから…『どうして、もっと早く聞かなかったんだ』、『使えない』、『お前のせいで誰かが死んだ』なんて言われるのが怖い……責められたくない、責められるのはとても辛いから」
朝霧は僕の言葉を遮ろうとはしなかった。ただ、ずっと真剣に、真っ直ぐ僕を見ている。
かっこ悪いって、弱いった思っているのだろうか。でも、それは前と変わらない、僕は何も悪くないのに、勝手に周りが責め立てて僕を悪者にした。また、それが繰り返されるのが我慢できない。
「……そんなことが、ずっと続くなら……僕はここで消えたいよ……」
仕方ないと思っていた、これが普通なんだと…でも心の奥では普通じゃないって、仕方ないで片付けたくないって思っていた。
「……虹、私との約束を忘れたのかい」
「忘れてない、だから、その約束はできない……」
「約束は、私が虹を守ることが1つの条件だよ。 もし、君が誰かが責められるようなことになったら、それは私が約束を破ったことと同じだ。
……そうだね、こんな交換条件みたいに言った私が悪かった」
朝霧の朝食はすっかり片付いていて、皿の上には何も無かった。
座っていた椅子から立ちあがり、机を挟んで向かいにいた僕の前に立ち、ゆっくりとしゃがみ込んだ。左足を床に置き、椅子に座る僕に目線を合わせた。
「私に虹を助けさせて欲しい、近くにいるだけで良い。 何か聞こえる時があれば、その時に言ってくれれば良い。 何も聞こえずとも私は虹の存在が意味無いなんて思わないよ」
朝霧は僕に優しくそう言った。僕は他人を信じたくなかった。だっていつも裏切られるから。 でも、今、この人なら……信じられるかもしれないと思っている。
「まだ20歳にも満たない君が、意味も分からずそんなに抱え込まなければいけないのか、ずっと助けたかった。謝りたい、すぐにあの二人のもとか君を連れ出さなかったことを。遠くから見ていて、虹が辛くて最悪な生活を送っているのを知っていたのに、手を出せなかった」
朝霧はごめん、と僕の右手を取り、俯いて謝った。なんで、この人が僕なんかに謝っているんだろう。何も悪くないのに、この人は僕の恩人のはずだ。
「……誰からも君を責めさせないよ、約束する。傷つけることはしない。だから、この世界で今起きていることを完結させるために手を貸してほしい」
「……分かった……、でも、本当に僕が言うことが正しいのかはーー……」
パッと顔を朝霧に向けると、僕の手から彼の手が離れた。一瞬のうちに、朝霧の顔がすぐ横にあり、トンっと後ろに身体が揺れたと思えば、後頭部と背中を押さえられ、朝霧の方にグッと近づけられる。
僕は何が起きたか分からず、1度息も忘れる程停止した。
「……ありがとう、虹」
あっ……僕は今、彼に抱きしめられているのか。後頭部を撫でれる。相変わらず冷たい身体だが、温かく感じてくる。
「……僕、人に抱きしめられたの、初めてかもしれないです」
抱きしめる所か、触ることすら嫌がられた僕をこの人は最初から触ってくれた。言葉で僕を殴らなかった。
嬉しかった、なんの役に立たなかったとしても、ここに僕の居場所がある気がして、胸が温まった。
居場所があってなかった、あっちの世界とは違うんだ、この人は僕が、虹がここにいても良い存在なんだと言ってくれる。
「……あ、そうだ……あ、さぎりさん……」
初めて呼ぶ名前にもどもどとし、少し恥ずかしくなる。
「……その、変な作り笑い……やめてほし、いです……なんか、怖い……」
調子に乗りすぎたか? 怒らせたか? と思いながら、朝霧から体を離して顔を見ると、朝霧は一瞬驚いた顔をして、フッと笑った
「……虹、少し失礼だね」
「……ごめん……」
そう言うが、朝霧は僕の頭を最後に1回ゆっくり撫でて立ち上がる。
「……これは、職業病みたいなものだよ、ごめんね」
何故か悲しそうな笑い方で、朝霧はそう言った。その顔は偽りの笑顔ではなかった。
この人にも、心の奥に閉まった闇があるような気がしたが、怖くて聞き出そうとは思えなかった。
朝霧は着々と朝食の皿を台所に持っていき、水をザーッと流した。
少し家族ごっこのような形ではあるが、「僕も手伝う」と言おうと、立ち上がった。
その時、目の前がグワンと一瞬揺れ、立ちくらみか……? ズクンと頭に衝撃が走る。
「…にじ……?」
朝霧が、僕の名前を呼び終える前に床に座り込んだ。
真っ暗になる、目を閉じたから……?
すると、また機械音が鳴る。
ーーーーーーズッジジッ……ザーーー
『……ヤット、アトニカイネタラ……ハジマルヨ』
声、声だ。言わなきゃ、聞こえた、聞こえたって……。痛い、痛い……頭痛が酷い。頭がパンクする。
同じ男……なのか…?分からない、けど……あと2回……寝たら……始まる………?
イヤダ、ココハ、コノオトコノコエトイッショニイタクナイ……
ガーーーーーと今まで1番酷く、うるさい機械音が終わりの合図となり、男の声は消えた。
『僕を助けなくて良い』
せっかく、義父母から離れるきっかけをくれた人にとても失礼なことを言っていることは、承知の上だった。
申し訳ないと思っている、既に1度朝霧は僕を助けてくれているのだから。あの二人から引き離してもらっておきながらも、約束は守れないと言っているのだ。
自分が酷く醜くて、最低な生き物になった気がした。だから、皆に嫌われているのかとも感じてきた。
もちろん違うことは分かっている。原因はあの義父母だったことも分かっている……、けど、今は人から嫌われるのも当然な人間でいるような感じがする。
「……それは、どうして? 助けたくない? 救いたくない?」
朝霧が静かに僕に問うようだった。違う、救いたいとか救いたくないとかじゃない。
ただ、僕は……自分がそんなこと出来る人間じゃないことを知っている。
「……もし、本当に僕が聞いたのがその人の声だとしても、僕は勝手に流れてくるモノを聞いてるだけで、受け身だ……聞こうと思って、聞けるモノじゃない……」
そうだろ…誰よりも、強いから必ず助ける、それが出来るなら約束だって出来る。僕は違う。強くもない、心の声を聞きたいと思った時に聞けるんじゃない、こんなの能力だ、力だなんて言ってはいけない。
「っ……怖い、周りから…『どうして、もっと早く聞かなかったんだ』、『使えない』、『お前のせいで誰かが死んだ』なんて言われるのが怖い……責められたくない、責められるのはとても辛いから」
朝霧は僕の言葉を遮ろうとはしなかった。ただ、ずっと真剣に、真っ直ぐ僕を見ている。
かっこ悪いって、弱いった思っているのだろうか。でも、それは前と変わらない、僕は何も悪くないのに、勝手に周りが責め立てて僕を悪者にした。また、それが繰り返されるのが我慢できない。
「……そんなことが、ずっと続くなら……僕はここで消えたいよ……」
仕方ないと思っていた、これが普通なんだと…でも心の奥では普通じゃないって、仕方ないで片付けたくないって思っていた。
「……虹、私との約束を忘れたのかい」
「忘れてない、だから、その約束はできない……」
「約束は、私が虹を守ることが1つの条件だよ。 もし、君が誰かが責められるようなことになったら、それは私が約束を破ったことと同じだ。
……そうだね、こんな交換条件みたいに言った私が悪かった」
朝霧の朝食はすっかり片付いていて、皿の上には何も無かった。
座っていた椅子から立ちあがり、机を挟んで向かいにいた僕の前に立ち、ゆっくりとしゃがみ込んだ。左足を床に置き、椅子に座る僕に目線を合わせた。
「私に虹を助けさせて欲しい、近くにいるだけで良い。 何か聞こえる時があれば、その時に言ってくれれば良い。 何も聞こえずとも私は虹の存在が意味無いなんて思わないよ」
朝霧は僕に優しくそう言った。僕は他人を信じたくなかった。だっていつも裏切られるから。 でも、今、この人なら……信じられるかもしれないと思っている。
「まだ20歳にも満たない君が、意味も分からずそんなに抱え込まなければいけないのか、ずっと助けたかった。謝りたい、すぐにあの二人のもとか君を連れ出さなかったことを。遠くから見ていて、虹が辛くて最悪な生活を送っているのを知っていたのに、手を出せなかった」
朝霧はごめん、と僕の右手を取り、俯いて謝った。なんで、この人が僕なんかに謝っているんだろう。何も悪くないのに、この人は僕の恩人のはずだ。
「……誰からも君を責めさせないよ、約束する。傷つけることはしない。だから、この世界で今起きていることを完結させるために手を貸してほしい」
「……分かった……、でも、本当に僕が言うことが正しいのかはーー……」
パッと顔を朝霧に向けると、僕の手から彼の手が離れた。一瞬のうちに、朝霧の顔がすぐ横にあり、トンっと後ろに身体が揺れたと思えば、後頭部と背中を押さえられ、朝霧の方にグッと近づけられる。
僕は何が起きたか分からず、1度息も忘れる程停止した。
「……ありがとう、虹」
あっ……僕は今、彼に抱きしめられているのか。後頭部を撫でれる。相変わらず冷たい身体だが、温かく感じてくる。
「……僕、人に抱きしめられたの、初めてかもしれないです」
抱きしめる所か、触ることすら嫌がられた僕をこの人は最初から触ってくれた。言葉で僕を殴らなかった。
嬉しかった、なんの役に立たなかったとしても、ここに僕の居場所がある気がして、胸が温まった。
居場所があってなかった、あっちの世界とは違うんだ、この人は僕が、虹がここにいても良い存在なんだと言ってくれる。
「……あ、そうだ……あ、さぎりさん……」
初めて呼ぶ名前にもどもどとし、少し恥ずかしくなる。
「……その、変な作り笑い……やめてほし、いです……なんか、怖い……」
調子に乗りすぎたか? 怒らせたか? と思いながら、朝霧から体を離して顔を見ると、朝霧は一瞬驚いた顔をして、フッと笑った
「……虹、少し失礼だね」
「……ごめん……」
そう言うが、朝霧は僕の頭を最後に1回ゆっくり撫でて立ち上がる。
「……これは、職業病みたいなものだよ、ごめんね」
何故か悲しそうな笑い方で、朝霧はそう言った。その顔は偽りの笑顔ではなかった。
この人にも、心の奥に閉まった闇があるような気がしたが、怖くて聞き出そうとは思えなかった。
朝霧は着々と朝食の皿を台所に持っていき、水をザーッと流した。
少し家族ごっこのような形ではあるが、「僕も手伝う」と言おうと、立ち上がった。
その時、目の前がグワンと一瞬揺れ、立ちくらみか……? ズクンと頭に衝撃が走る。
「…にじ……?」
朝霧が、僕の名前を呼び終える前に床に座り込んだ。
真っ暗になる、目を閉じたから……?
すると、また機械音が鳴る。
ーーーーーーズッジジッ……ザーーー
『……ヤット、アトニカイネタラ……ハジマルヨ』
声、声だ。言わなきゃ、聞こえた、聞こえたって……。痛い、痛い……頭痛が酷い。頭がパンクする。
同じ男……なのか…?分からない、けど……あと2回……寝たら……始まる………?
イヤダ、ココハ、コノオトコノコエトイッショニイタクナイ……
ガーーーーーと今まで1番酷く、うるさい機械音が終わりの合図となり、男の声は消えた。
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