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うつけ村編
42 あの日
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42 あの日
虹が倒れた、魘されている時もある。 恐らくまた声が聞こえている。
うつけ村、次はそこで何かが起こることは分かっている。だが何かの部分も、いつなのかも分かっていない。
それに、うつけ村のことは私も忘れていた。 確かに一時はかなり大問題になったが、村人は全員焼死体と化し、その人達の知り合いが他の村や街にいる気配もなかった。
ただ、咲から聞いた人身売買らしきことがあったらしいという情報はどこからも入手できなかった。
……いや、知り合いの記者の話によれば、その話は突き返された、知っていたことをなかったことにしようとしたのは国なのかもしれない。
結局、国なんてものは上の人達が操るもののことを表すだけで、本当に国全体が悪いわけじゃない。ただ、そこの頂点に立った人達が、自分のために悪事をして、なかったことにする。 よくある話だ。
戸籍もない人達を集めて、オークションを行う。 この世界では中々聞いた事のない事例だが、そんなこともあるのかと思いながら、咲に言われ色々探ってはみた。
まずあの大火事の原因は何だった? 火元は何処だ、数年前となれば今のように私に全てのことの情報が入ってきた可能性が少ない。 うつけ村の時は話は聞いていたが、実際にそこまで深く関わってはいない。
……それにあの時期の私は荒れていた。 1番信頼していた男が突如として、この機関から消えた。
誰も信じてはいなかった俺、朝霧 奏斗に初めて信頼という言葉を教えた男だった。
言うことも為すことも全てが正義ではない。 己のために生きているような男だったが、それでも周りを助けていた。
勘違いをして、勝手にあの男の中で自分は信頼されていると思い込んでいた、何だって話してくれるのだと思っていた。
ただの妄想に過ぎず、何も言わずにある日消えた。咲は冷静だったが、あの男の行方は知らないと答えた。
それからだ、『俺』を『私』に変え、言葉遣いもあの男を真似した。 朝霧 奏斗という人間の中に志賀内 萬という男を作り出した。
虹に聞かれるまで本当に萬のことは誰にも言う気はなかった。知ったとしても何かになる訳では無い。
だが、虹に知りたいと言われ、それに答えないことは許されなかった。 優しいあの子は無理には言わせない、言いたくないと言えば言わなくても良かったのだろう。
けどいつかそれを理由に溝が出来るのを恐れた。それなら今のうちに話しておく方が得策だ。
……そうだ、志賀内 萬が消えて、ほんの数ヶ月後にうつけ村での大火事があった。
周りからも荒れているのだと悟られたのか、その時はほとんど仕事らしい仕事をしていなかった気がする。
戸籍のない人もそうだが、それを買う立場にあった人も焼死体とはならなかった。どこかに逃げた……。 しかし、その奴隷たちは今も生きているのだろうか、こんな数年前の姿でほぼ骨と皮のような人間ばかりだ。
子供もいる。顔は見えないが背格好からしてそうだろう。
きっちりとし過ぎているな。 戸籍のある村人は全員が死んだ、死体も確認済み。 戸籍のない村人以外は死体もなければ、そこにいたという形跡もない。
……誰かが逃がしたのか、村人以外を。
でも何でだ。 奴隷の中の誰かが逃げ出すために火事を起こしたとしてどうして買う立場の奴もいなくなる。逆に村人よりも殺したいと思うのはそちらの人間のはずだ……。
大火事起きたのは事故ではなく、誰かに仕組まれたもの……、そして村人のみを殺す策略。
村人以外は何故か死体とならない、でもどこへ消えた……。
その大火事の日の後、数ヶ月にわたって記録された死人のリストに戸籍のない人間はいない。 奴隷となっていた人達の死体はどこかにある、もしくはこの時の奴らに連れ去られた……?
それとも、全く関係ない第三者が奴隷たちをどこかに……。
可能性は広がるが、それを確かめることは出来ない。そもそも第三者って誰だ……、それにうつけ村に関しては昔のことよりも、次に何が起こるのかを……。
机の上で電源をつけたパソコンと昔の死人リストの紙の束、うつけ村の資料を前に髪の毛をぐしゃぐしゃに掻くようにしていると、奥からカチャと扉の開く音がした。
「……虹」
「……」
ドアをゆっくりと開く虹の足はおぼつかない。今にも転びそうで顔色も悪い。片手で頭を押さえているところを見ると頭痛があるらしい。
「……体調が治らないのかい、もう少し寝ていた方が……」
「……聞こえたよ、うつけ村……次にいつ何が起こるのか……」
やはり聞こえたのか、そう思い急かして聞きたいところだが、虹の目に見える具合の悪さは相当だ。横にさせた方が良い。
そう思い、一度パソコンを閉じ、虹のもとへ近づき、肩を手で掴み部屋に戻す。ベッドに座るように促すと、そこに座った。
「……5日……いや、あと4日後。 あそこであの日の悪人たちを懲らしめる、それが聞こえた」
虹は座ったと同時にそう答えた。ギュッと自分の両手を握り合う虹は、弱々しい声で「あの日っていうのは分からないけど……」と続けた。
あの日の悪人たち……うつけ村でのあの日……大火事のことか……? 悪人たち……っていうのは、大火事を起こした犯人のこと……、いやそれだと虹の聞く声の主は、うつけ村に関係する人か。
「……あ、あと、あの日皆死んだでしょって……」
おかしい、確かに村人は死んだ。それは確かだ。 だとしたら……あの光景を見ていた人物……。 生き残りは奴隷とそれを買うはずだった人、声の主はそれのどちらか……。
あの日の悪人=火事の犯人、しかも複数人と考えると、火事の犯人たちを懲らしめる……、でも何故だ。 今更あの火事のことを恨めしく思い何か起こす……? 変だ、そもそもうつけ村で火事を起こしたのは…………誰だ。
こんなにも何年も経ったというのに、あの大火事について自分は何も分かっていなかった。いや、きっと誰も分かっていない、知ろうとしていない。 あの日の奴隷たちが、あの場でオークションに参加した人達が誰かなんてどうでも良かったんだ。
犯人すら見つけないまま、村人は全員死んだ、それで勝手に終わりを迎えた。
「……皆死んだでしょって言ってた声、楽しそうだった……、怖かった。 それに悪人たちを懲らしめるって言ってた時も楽しそうだった……」
死んだことを楽しんでいる……、そうだとしたら……普通に考えてあの大火事の犯人は……
声の主になる。
化け物を数年前から生み出し、世界を脅かした人間、H大学で街の人間を殺そうとした人間、うつけ村での大火事を起こした犯人、それが全て同一犯……この世界で最も大罪人となる存在の声が虹の中でずっと鳴り響いている。
虹が倒れた、魘されている時もある。 恐らくまた声が聞こえている。
うつけ村、次はそこで何かが起こることは分かっている。だが何かの部分も、いつなのかも分かっていない。
それに、うつけ村のことは私も忘れていた。 確かに一時はかなり大問題になったが、村人は全員焼死体と化し、その人達の知り合いが他の村や街にいる気配もなかった。
ただ、咲から聞いた人身売買らしきことがあったらしいという情報はどこからも入手できなかった。
……いや、知り合いの記者の話によれば、その話は突き返された、知っていたことをなかったことにしようとしたのは国なのかもしれない。
結局、国なんてものは上の人達が操るもののことを表すだけで、本当に国全体が悪いわけじゃない。ただ、そこの頂点に立った人達が、自分のために悪事をして、なかったことにする。 よくある話だ。
戸籍もない人達を集めて、オークションを行う。 この世界では中々聞いた事のない事例だが、そんなこともあるのかと思いながら、咲に言われ色々探ってはみた。
まずあの大火事の原因は何だった? 火元は何処だ、数年前となれば今のように私に全てのことの情報が入ってきた可能性が少ない。 うつけ村の時は話は聞いていたが、実際にそこまで深く関わってはいない。
……それにあの時期の私は荒れていた。 1番信頼していた男が突如として、この機関から消えた。
誰も信じてはいなかった俺、朝霧 奏斗に初めて信頼という言葉を教えた男だった。
言うことも為すことも全てが正義ではない。 己のために生きているような男だったが、それでも周りを助けていた。
勘違いをして、勝手にあの男の中で自分は信頼されていると思い込んでいた、何だって話してくれるのだと思っていた。
ただの妄想に過ぎず、何も言わずにある日消えた。咲は冷静だったが、あの男の行方は知らないと答えた。
それからだ、『俺』を『私』に変え、言葉遣いもあの男を真似した。 朝霧 奏斗という人間の中に志賀内 萬という男を作り出した。
虹に聞かれるまで本当に萬のことは誰にも言う気はなかった。知ったとしても何かになる訳では無い。
だが、虹に知りたいと言われ、それに答えないことは許されなかった。 優しいあの子は無理には言わせない、言いたくないと言えば言わなくても良かったのだろう。
けどいつかそれを理由に溝が出来るのを恐れた。それなら今のうちに話しておく方が得策だ。
……そうだ、志賀内 萬が消えて、ほんの数ヶ月後にうつけ村での大火事があった。
周りからも荒れているのだと悟られたのか、その時はほとんど仕事らしい仕事をしていなかった気がする。
戸籍のない人もそうだが、それを買う立場にあった人も焼死体とはならなかった。どこかに逃げた……。 しかし、その奴隷たちは今も生きているのだろうか、こんな数年前の姿でほぼ骨と皮のような人間ばかりだ。
子供もいる。顔は見えないが背格好からしてそうだろう。
きっちりとし過ぎているな。 戸籍のある村人は全員が死んだ、死体も確認済み。 戸籍のない村人以外は死体もなければ、そこにいたという形跡もない。
……誰かが逃がしたのか、村人以外を。
でも何でだ。 奴隷の中の誰かが逃げ出すために火事を起こしたとしてどうして買う立場の奴もいなくなる。逆に村人よりも殺したいと思うのはそちらの人間のはずだ……。
大火事起きたのは事故ではなく、誰かに仕組まれたもの……、そして村人のみを殺す策略。
村人以外は何故か死体とならない、でもどこへ消えた……。
その大火事の日の後、数ヶ月にわたって記録された死人のリストに戸籍のない人間はいない。 奴隷となっていた人達の死体はどこかにある、もしくはこの時の奴らに連れ去られた……?
それとも、全く関係ない第三者が奴隷たちをどこかに……。
可能性は広がるが、それを確かめることは出来ない。そもそも第三者って誰だ……、それにうつけ村に関しては昔のことよりも、次に何が起こるのかを……。
机の上で電源をつけたパソコンと昔の死人リストの紙の束、うつけ村の資料を前に髪の毛をぐしゃぐしゃに掻くようにしていると、奥からカチャと扉の開く音がした。
「……虹」
「……」
ドアをゆっくりと開く虹の足はおぼつかない。今にも転びそうで顔色も悪い。片手で頭を押さえているところを見ると頭痛があるらしい。
「……体調が治らないのかい、もう少し寝ていた方が……」
「……聞こえたよ、うつけ村……次にいつ何が起こるのか……」
やはり聞こえたのか、そう思い急かして聞きたいところだが、虹の目に見える具合の悪さは相当だ。横にさせた方が良い。
そう思い、一度パソコンを閉じ、虹のもとへ近づき、肩を手で掴み部屋に戻す。ベッドに座るように促すと、そこに座った。
「……5日……いや、あと4日後。 あそこであの日の悪人たちを懲らしめる、それが聞こえた」
虹は座ったと同時にそう答えた。ギュッと自分の両手を握り合う虹は、弱々しい声で「あの日っていうのは分からないけど……」と続けた。
あの日の悪人たち……うつけ村でのあの日……大火事のことか……? 悪人たち……っていうのは、大火事を起こした犯人のこと……、いやそれだと虹の聞く声の主は、うつけ村に関係する人か。
「……あ、あと、あの日皆死んだでしょって……」
おかしい、確かに村人は死んだ。それは確かだ。 だとしたら……あの光景を見ていた人物……。 生き残りは奴隷とそれを買うはずだった人、声の主はそれのどちらか……。
あの日の悪人=火事の犯人、しかも複数人と考えると、火事の犯人たちを懲らしめる……、でも何故だ。 今更あの火事のことを恨めしく思い何か起こす……? 変だ、そもそもうつけ村で火事を起こしたのは…………誰だ。
こんなにも何年も経ったというのに、あの大火事について自分は何も分かっていなかった。いや、きっと誰も分かっていない、知ろうとしていない。 あの日の奴隷たちが、あの場でオークションに参加した人達が誰かなんてどうでも良かったんだ。
犯人すら見つけないまま、村人は全員死んだ、それで勝手に終わりを迎えた。
「……皆死んだでしょって言ってた声、楽しそうだった……、怖かった。 それに悪人たちを懲らしめるって言ってた時も楽しそうだった……」
死んだことを楽しんでいる……、そうだとしたら……普通に考えてあの大火事の犯人は……
声の主になる。
化け物を数年前から生み出し、世界を脅かした人間、H大学で街の人間を殺そうとした人間、うつけ村での大火事を起こした犯人、それが全て同一犯……この世界で最も大罪人となる存在の声が虹の中でずっと鳴り響いている。
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