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第6話 ハヤテ
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第6話 ハヤテ
俺は両親から『天才児』という扱いを受けてきた。物心がついた時には、既に他の同い年の人よりも頭の回転が良かった。
しかし、それは天才として生まれた訳では無い。両親の方針が『天才児』を作り上げるために、他よりも勉強を早めに教え始めただけだった。
学校に通わずとも、オンラインでの授業、海外留学をせずに、インターネットを通して、外国人と話すことも今の時代は簡単に出来る。
俺には一切の娯楽を与えてはくれなかった。勉強、食事、勉強、研究、睡眠……それしかやることがなかった。
だから、学校がどんな場所かも知らないし、知ろうとも思わなかった。日本の歴史に大学を作った人の名前があったから、大学があることを知ったくらいだ。
世間の人よりも学力では勝っていた。けれど、世間の人が知っている常識を俺は知らない。
そんな俺を『天才児』だと思い込んだ両親が憐れで仕方なかった。
「ハヤテはさ、どんな所で生まれ育ったの? 能力が無くても生きていける場所って?」
アタミさんは、ズケズケと俺に質問をしてくる。今、ここで日本と答えたところでこの世界にそんな国は、存在しないのだろう。
「……俺は、ただ親の方針上、部屋で勉強をするだけでした。だから、外の世界には出ないので、能力なんて使わなくていいんです」
また、微妙に濁した答え方をした。嘘はないが、もっと詳しく話せる部分はたくさんある。しかし、今その話をしてもメリットはない。
「勉強? 魔法とか治療とかの?」
「……いや、それは……………」
失敗した。ここで言う勉強は、そっちの方向になるのか。漢字や計算、歴史のことではない。
「い、色々です……でも、役立つような知識は持っていません」
「ふーん……じゃあ、君の親は? 能力者なのかな?」
……どんどんとまずい方向に話が行っている気がする。本音を言ってしまうことは容易いが、それを信じるはずもない。
アタミさんには悪いが、ここで嘘を吐かせてもらうことにしよう。
「親の能力は見た事がありません。何せ部屋に閉じ込められていたので。親と会ったこともほとんどありません」
嘘に少し本当のことを混ぜるとそれっぽくなるとどこかで聞いた。
親に能力なんてないことは知っているが、敢えて持っているはずだ、という意味で言葉を返した。
「……あんまり、聞かれたくないことのようだね」
!!バレたのか…? アタミさんは「そうかそうか」と言って一息吐く。
「今は、あまり深堀はしないでおくよ。話せる時に話せばいい」
……アタミさんは、そう言うが俺はもう死ぬかもしれないということを忘れているのだろうか。
2~3日後にある生死を決める日、次死んだらもう生き返るなんてことは出来ないだろう。
生き返ったところで、この『無能力者』という最悪な立場なわけだ。
「ハヤテ、覚えておきな。私とカゲミは君を殺されることを阻止するために動くんだよ」
「それは、『無能力者』の俺がアヴィウスに狙われないからどうにか強くして、ここの生徒や街の人を守るためですよね」
そう言うと、アタミさんは悲しげな表情で俺を見つめる。
俺は本当のことを言っただけだろう。この人たちにとって俺は利用するための道具に過ぎない。
俺は、助けてくれた2人には悪いが、2~3日で生きる意味を証明して、ここから逃げるつもりでいた。
利用できるものは利用しないと、俺は自由な生活を送れない。
「カゲミにそう言われたのかい?」
「違います、でもここの生徒が何人も攫われた話は聞きました。だから、俺をどうにか強くしてアヴィウスを討つつもりでしょう? そう簡単に上手くいくとは思いませんが……。
それに、万が一俺が攫われようが、殺されようが、貴方たちに不利益はない……」
勝手な自己解決ではあるが、言わないだけでそーゆう事だろう。
「……私もカゲミもそんな器用に考える人間ではないんだけどな」
「?」
アタミさんは頭を掻きながら、ボソッと何かを呟いた。
「ハヤテは世間と切り離された環境で育ってしまったんだね……」
アタミさんの言うことは最もだ。世間なんて知らない。どんな人間がいるのかも分からなかった。それ以上に、俺にとってそんなことどうでもよかった。
無関係の人たちが何を思っていようが、何をしようが……俺には関係のないことだ。
「……ハヤテは、もう少し人を信用するべきなんだろうけど、君の過去からそれは現時点では無理なんだろうね」
「何が言いたいんですか……」
「君はもう少し他人に守られる環境に慣れるべきだね」
アタミさんは意味の分からないことを言うと部屋の扉を開けた。
「話はここまでだ。ハヤテ、学校を案内しよう!着いておいで!」
学園長が学校案内するのか……
俺はアタミさんの後ろを歩くと、アタミさんは「隣においで、話しながら行こう」と言って、手招く。
俺は言う通りアタミさんの横に並んで歩き出した。
こんな風に誰かの隣を歩くのは初めてかもしれない……
……そういえば、俺はいつも家の中では「颯様」とか呼ばれてたし、親もほとんど家にいなかったから、こんなに呼び捨てで名前を呼ばれることは初めてだな……。
俺は少しだけ嬉しいかも、などと思ってしまった。
俺は両親から『天才児』という扱いを受けてきた。物心がついた時には、既に他の同い年の人よりも頭の回転が良かった。
しかし、それは天才として生まれた訳では無い。両親の方針が『天才児』を作り上げるために、他よりも勉強を早めに教え始めただけだった。
学校に通わずとも、オンラインでの授業、海外留学をせずに、インターネットを通して、外国人と話すことも今の時代は簡単に出来る。
俺には一切の娯楽を与えてはくれなかった。勉強、食事、勉強、研究、睡眠……それしかやることがなかった。
だから、学校がどんな場所かも知らないし、知ろうとも思わなかった。日本の歴史に大学を作った人の名前があったから、大学があることを知ったくらいだ。
世間の人よりも学力では勝っていた。けれど、世間の人が知っている常識を俺は知らない。
そんな俺を『天才児』だと思い込んだ両親が憐れで仕方なかった。
「ハヤテはさ、どんな所で生まれ育ったの? 能力が無くても生きていける場所って?」
アタミさんは、ズケズケと俺に質問をしてくる。今、ここで日本と答えたところでこの世界にそんな国は、存在しないのだろう。
「……俺は、ただ親の方針上、部屋で勉強をするだけでした。だから、外の世界には出ないので、能力なんて使わなくていいんです」
また、微妙に濁した答え方をした。嘘はないが、もっと詳しく話せる部分はたくさんある。しかし、今その話をしてもメリットはない。
「勉強? 魔法とか治療とかの?」
「……いや、それは……………」
失敗した。ここで言う勉強は、そっちの方向になるのか。漢字や計算、歴史のことではない。
「い、色々です……でも、役立つような知識は持っていません」
「ふーん……じゃあ、君の親は? 能力者なのかな?」
……どんどんとまずい方向に話が行っている気がする。本音を言ってしまうことは容易いが、それを信じるはずもない。
アタミさんには悪いが、ここで嘘を吐かせてもらうことにしよう。
「親の能力は見た事がありません。何せ部屋に閉じ込められていたので。親と会ったこともほとんどありません」
嘘に少し本当のことを混ぜるとそれっぽくなるとどこかで聞いた。
親に能力なんてないことは知っているが、敢えて持っているはずだ、という意味で言葉を返した。
「……あんまり、聞かれたくないことのようだね」
!!バレたのか…? アタミさんは「そうかそうか」と言って一息吐く。
「今は、あまり深堀はしないでおくよ。話せる時に話せばいい」
……アタミさんは、そう言うが俺はもう死ぬかもしれないということを忘れているのだろうか。
2~3日後にある生死を決める日、次死んだらもう生き返るなんてことは出来ないだろう。
生き返ったところで、この『無能力者』という最悪な立場なわけだ。
「ハヤテ、覚えておきな。私とカゲミは君を殺されることを阻止するために動くんだよ」
「それは、『無能力者』の俺がアヴィウスに狙われないからどうにか強くして、ここの生徒や街の人を守るためですよね」
そう言うと、アタミさんは悲しげな表情で俺を見つめる。
俺は本当のことを言っただけだろう。この人たちにとって俺は利用するための道具に過ぎない。
俺は、助けてくれた2人には悪いが、2~3日で生きる意味を証明して、ここから逃げるつもりでいた。
利用できるものは利用しないと、俺は自由な生活を送れない。
「カゲミにそう言われたのかい?」
「違います、でもここの生徒が何人も攫われた話は聞きました。だから、俺をどうにか強くしてアヴィウスを討つつもりでしょう? そう簡単に上手くいくとは思いませんが……。
それに、万が一俺が攫われようが、殺されようが、貴方たちに不利益はない……」
勝手な自己解決ではあるが、言わないだけでそーゆう事だろう。
「……私もカゲミもそんな器用に考える人間ではないんだけどな」
「?」
アタミさんは頭を掻きながら、ボソッと何かを呟いた。
「ハヤテは世間と切り離された環境で育ってしまったんだね……」
アタミさんの言うことは最もだ。世間なんて知らない。どんな人間がいるのかも分からなかった。それ以上に、俺にとってそんなことどうでもよかった。
無関係の人たちが何を思っていようが、何をしようが……俺には関係のないことだ。
「……ハヤテは、もう少し人を信用するべきなんだろうけど、君の過去からそれは現時点では無理なんだろうね」
「何が言いたいんですか……」
「君はもう少し他人に守られる環境に慣れるべきだね」
アタミさんは意味の分からないことを言うと部屋の扉を開けた。
「話はここまでだ。ハヤテ、学校を案内しよう!着いておいで!」
学園長が学校案内するのか……
俺はアタミさんの後ろを歩くと、アタミさんは「隣においで、話しながら行こう」と言って、手招く。
俺は言う通りアタミさんの横に並んで歩き出した。
こんな風に誰かの隣を歩くのは初めてかもしれない……
……そういえば、俺はいつも家の中では「颯様」とか呼ばれてたし、親もほとんど家にいなかったから、こんなに呼び捨てで名前を呼ばれることは初めてだな……。
俺は少しだけ嬉しいかも、などと思ってしまった。
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