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第5話 能力者
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第5話 能力者
この能力者学校の学園長の存在にあたる男
「アタミ」は一言で言うと明るい男だ。
俺の想像よりも年齢が若く、しかめっ面でない分、弟というカゲミよりも遥かに若く感じる。
「しかし、無能力者なんて本当にいるんだね」
「海に転がってんだ、何処の国から来たかも分からねぇが、そんなに遠くではないだろ。話が通じる」
「話には聞いてたけど、本当に何にも感じない。実は能力で自分の能力を隠してるとかは?」
「いや、転がってたときは完全に気絶していた。自分の意識がないなかで能力を使うのは無理だろ」
2人で淡々と話を進めていく。少しアタミさんに疑われたが、カゲミさんの説明もあり「確かに」と納得した。
「……ん~、特別身体能力が高いわけではなさそうだね…ハヤテは、今までどうやって生きてきたの」
どうやってって……能力とはまるで無縁の平凡な人間が生きる世界で、普通に生きることもできずに勉強だけして生きてました。って言っても、この世界には通用しないんだろうな。
「……能力なしでなんとか生きれる場所で暮らしてました」
全く嘘ではない。本当のことだ。色々省略はしたが……
「能力なし、でね……」
「そんな国あるなら、平和そのものだな」
カゲミさんは両手を頭の後ろで組んで、ソファの背もたれに全体重を乗せる。
アタミさんは、興味あり気にジィっと俺を見つめてくる。
「…………あっ、カゲミ! 君の机の上に溜まってた報告書、置いておいたからやっておいてね」
アタミさんは、ハッと気づいたように、カゲミさんの方を見てそう言った。
「は!? 何勝手に………」
「すぐやらないと上から怒られるよ~、今からやってくれば?」
カゲミさんはチッと舌打ちをしてアタミさんを睨む。そして、チラリと俺の方を見てから立ち上がった。
「アタミ、ふざけんなよ」
「ほらほら、そんなこと言ってる暇はないよ」
シッシッと手で追い払い、早く行けと促す。
カゲミさんはドカドカと歩き、学長室を出た。バンッと物凄い力で扉を閉める。
「…………なんですか、カゲミさんに聞かれたらまずいことですか……?」
「……ん?」
俺の顔を見てから、あからさまに急に思いついたかのように、カゲミさんを追い出した。
俺に聞きたいことがあることは、すぐに分かった。
「……ハヤテは、察しがいいんだね」
「俺はカゲミさんに聞かれてまずい話なんて持ってないですけど」
「いや、ただアイツが煩くなりそうだから追い払っただけ」
この人笑いながらなんてこと言うんだ。
「……能力のこと何も知らないんだろ? 教えてあげるから、ハヤテのことも聞かせて欲しい」
直感で分かる、アタミさんって……怖い人なんだ。カゲミさんとは違って言葉に圧はないが、笑顔から圧を感じる。
「俺の事…って言っても…そんな特別なことは……」
「まぁまぁ、先に能力の話をしよう」
「この世界でほとんどは能力者って言うのは、聞いたかな? 君のような『無能力者』はほとんどいないし、私も見た事はない。そしてこの街は、全員が能力者だ。 世界の中でも能力者が多い街とされてきた」
「されてきたってことは、やっぱり、攫われていなくなったってことですね」
「そう。歴代強いとされる能力者は、全員此処を出ている者ばかりだ。それに気づいたのかアヴィウスは、ここの街の者を狙う。こちらとしても、狙われたくはないが、アヴィウスを討つのには、最も適した街だ。だから、能力者の強化、育成を行うのがこの学校だ。自分から強くなりたいと願う者もいれば、元々の遺伝なんかから強いとされた者は強制的に、この学校に入学する。
私は嫌なんだけど、上のおじいちゃ……お偉い方たちからのお達しでね」
やっぱりこの人カゲミさんと兄弟だ……。思いっきりおじいちゃんって言った。
「……カゲミからも言われてると思うけど、無能力者は良い扱いなんて受けれないだろう。……もう経験済みかな……牢屋になんか連れていかれたもんね」
「……それが、この世界なら仕方がないですよね」
「私は能力ある、なしにこだわりはないから、ハヤテにはそのままでいて欲しいんだけどね……能力がないだけで弱い、要らないと決めつける上の人たちのせいで、そうもいかない。」
アタミさんは優しいのか、それともただ単に上のいわゆるお偉い様たちが嫌いなのか…
とりあえず、俺を無能力者として見下すことはしないということか。
「……まあ、能力者にも強い奴から弱い奴もいるよ。本当に弱ければ、空を飛ぶだけっていう子もいる。ほとんど、ハヤテと変わりないよ」
俺は空を飛べる人間なんて知らないんだけどな…そんなことできるなら、現実世界では何か賞でも取れるぞ。
「強い奴……主に攻撃に特化した子は、この街に重要な存在だ。アヴィウスがいつ仕掛けてくるかも分からない。そういう子がこの学校には、多くいる。君を最も差別し、軽蔑する子たちだろう」
「……俺はどうせ、2~3日で生死が決まる人間です。長い間ここでお世話になるわけでもありません。能力が強いとか、弱いとか俺に関係ないです。ただ、生きる意味が必要なだけです」
よく分からない文字に、生き返らせてもらった命だ。自分の自由なままに過ごせればなんだっていい。数日の軽蔑の目なんて俺には関係ない。
「……そうかい……まぁ、今はそれでいいよ。
ハヤテ、私は能力者でない君に生きる必要がないなんて思わない」
これは優しさか、同情か……でも、アタミさんの言葉は嘘ではない気がする。
「能力が持つことができずに、他人にできることができないことは多くあるよ。でも、ハヤテにしかできないこともあるはずだ。それは、君の能力だよ」
そう言うとアタミさんは、ポンポンと優しく俺の頭を撫でた。カゲミさんは叩くのに……兄弟で似てるのか似てないのか……けれど、彼らは俺を軽蔑しない、そこは確かに同じなようだ。
この能力者学校の学園長の存在にあたる男
「アタミ」は一言で言うと明るい男だ。
俺の想像よりも年齢が若く、しかめっ面でない分、弟というカゲミよりも遥かに若く感じる。
「しかし、無能力者なんて本当にいるんだね」
「海に転がってんだ、何処の国から来たかも分からねぇが、そんなに遠くではないだろ。話が通じる」
「話には聞いてたけど、本当に何にも感じない。実は能力で自分の能力を隠してるとかは?」
「いや、転がってたときは完全に気絶していた。自分の意識がないなかで能力を使うのは無理だろ」
2人で淡々と話を進めていく。少しアタミさんに疑われたが、カゲミさんの説明もあり「確かに」と納得した。
「……ん~、特別身体能力が高いわけではなさそうだね…ハヤテは、今までどうやって生きてきたの」
どうやってって……能力とはまるで無縁の平凡な人間が生きる世界で、普通に生きることもできずに勉強だけして生きてました。って言っても、この世界には通用しないんだろうな。
「……能力なしでなんとか生きれる場所で暮らしてました」
全く嘘ではない。本当のことだ。色々省略はしたが……
「能力なし、でね……」
「そんな国あるなら、平和そのものだな」
カゲミさんは両手を頭の後ろで組んで、ソファの背もたれに全体重を乗せる。
アタミさんは、興味あり気にジィっと俺を見つめてくる。
「…………あっ、カゲミ! 君の机の上に溜まってた報告書、置いておいたからやっておいてね」
アタミさんは、ハッと気づいたように、カゲミさんの方を見てそう言った。
「は!? 何勝手に………」
「すぐやらないと上から怒られるよ~、今からやってくれば?」
カゲミさんはチッと舌打ちをしてアタミさんを睨む。そして、チラリと俺の方を見てから立ち上がった。
「アタミ、ふざけんなよ」
「ほらほら、そんなこと言ってる暇はないよ」
シッシッと手で追い払い、早く行けと促す。
カゲミさんはドカドカと歩き、学長室を出た。バンッと物凄い力で扉を閉める。
「…………なんですか、カゲミさんに聞かれたらまずいことですか……?」
「……ん?」
俺の顔を見てから、あからさまに急に思いついたかのように、カゲミさんを追い出した。
俺に聞きたいことがあることは、すぐに分かった。
「……ハヤテは、察しがいいんだね」
「俺はカゲミさんに聞かれてまずい話なんて持ってないですけど」
「いや、ただアイツが煩くなりそうだから追い払っただけ」
この人笑いながらなんてこと言うんだ。
「……能力のこと何も知らないんだろ? 教えてあげるから、ハヤテのことも聞かせて欲しい」
直感で分かる、アタミさんって……怖い人なんだ。カゲミさんとは違って言葉に圧はないが、笑顔から圧を感じる。
「俺の事…って言っても…そんな特別なことは……」
「まぁまぁ、先に能力の話をしよう」
「この世界でほとんどは能力者って言うのは、聞いたかな? 君のような『無能力者』はほとんどいないし、私も見た事はない。そしてこの街は、全員が能力者だ。 世界の中でも能力者が多い街とされてきた」
「されてきたってことは、やっぱり、攫われていなくなったってことですね」
「そう。歴代強いとされる能力者は、全員此処を出ている者ばかりだ。それに気づいたのかアヴィウスは、ここの街の者を狙う。こちらとしても、狙われたくはないが、アヴィウスを討つのには、最も適した街だ。だから、能力者の強化、育成を行うのがこの学校だ。自分から強くなりたいと願う者もいれば、元々の遺伝なんかから強いとされた者は強制的に、この学校に入学する。
私は嫌なんだけど、上のおじいちゃ……お偉い方たちからのお達しでね」
やっぱりこの人カゲミさんと兄弟だ……。思いっきりおじいちゃんって言った。
「……カゲミからも言われてると思うけど、無能力者は良い扱いなんて受けれないだろう。……もう経験済みかな……牢屋になんか連れていかれたもんね」
「……それが、この世界なら仕方がないですよね」
「私は能力ある、なしにこだわりはないから、ハヤテにはそのままでいて欲しいんだけどね……能力がないだけで弱い、要らないと決めつける上の人たちのせいで、そうもいかない。」
アタミさんは優しいのか、それともただ単に上のいわゆるお偉い様たちが嫌いなのか…
とりあえず、俺を無能力者として見下すことはしないということか。
「……まあ、能力者にも強い奴から弱い奴もいるよ。本当に弱ければ、空を飛ぶだけっていう子もいる。ほとんど、ハヤテと変わりないよ」
俺は空を飛べる人間なんて知らないんだけどな…そんなことできるなら、現実世界では何か賞でも取れるぞ。
「強い奴……主に攻撃に特化した子は、この街に重要な存在だ。アヴィウスがいつ仕掛けてくるかも分からない。そういう子がこの学校には、多くいる。君を最も差別し、軽蔑する子たちだろう」
「……俺はどうせ、2~3日で生死が決まる人間です。長い間ここでお世話になるわけでもありません。能力が強いとか、弱いとか俺に関係ないです。ただ、生きる意味が必要なだけです」
よく分からない文字に、生き返らせてもらった命だ。自分の自由なままに過ごせればなんだっていい。数日の軽蔑の目なんて俺には関係ない。
「……そうかい……まぁ、今はそれでいいよ。
ハヤテ、私は能力者でない君に生きる必要がないなんて思わない」
これは優しさか、同情か……でも、アタミさんの言葉は嘘ではない気がする。
「能力が持つことができずに、他人にできることができないことは多くあるよ。でも、ハヤテにしかできないこともあるはずだ。それは、君の能力だよ」
そう言うとアタミさんは、ポンポンと優しく俺の頭を撫でた。カゲミさんは叩くのに……兄弟で似てるのか似てないのか……けれど、彼らは俺を軽蔑しない、そこは確かに同じなようだ。
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