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1 出会いと別れ
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1 出会いと別れ
「クロウス……、どうして、貴方はαで生まれてこなかったの……? 私が悪いの? ねぇっ!!」
母親の悲しく責め立てる声が、毎日毎日耳を通り抜けた。
「お前にこの城を……国を受け継ぐ資格はない、ユリウスに今後のことは任せる……、お前はジェイラード家の汚点にしかならない」
父親の怒りに満ちながらも冷静な罵倒。
弟であるユリウスへと城、国の権限が渡ることが決まった。
ジェイラード家は、代々αの血筋が絶えなかった。そんなある日産まれたα以外の血縁者、俺クロウス=ジェイラードは、最悪なことにΩとして産まれてしまった。
ただ、幸い弟のユリウスはαであった。そんなユリウスを父も母も……周りも可愛がった。
俺はできるだけ人目を浴びぬようにと、城から出されることが少なかった。
血縁者の中にΩがいると分かれば、隣国からの狙われる対象になりかねない。
俺はそれなりに権力も金あるこの家のお荷物となった。
18歳を迎える弟を横に、父から言い渡された後継者の名前。 ユリウスは唯一、俺にも優しかった。 隣で何か言いたそうにする弟を横目に自分の存在を否定する感情が生まれた。
ユリウスと2人で城の庭に出た。まだ何か言いたげにするユリウス。言いたいことは分かっている、長男の俺に後継者をして欲しい、αやΩは関係ないと思っているのだ。
「……ユリウス、お前は俺より優秀だ。 αとかΩとか関係なく、お前の方が後継者には向いているんだよ」
口からデマカセを話す。もちろん、そんな事思ってはいなかった。αだから、優秀に育ったお前だから、周りから良い目をされるお前が、後継者にならざるを得ないんだ。
「……そしたら、兄さんは……? 別に兄さんは悪くないじゃないか!」
本当に優しい子に育ったな、と感心する。
18歳の弟、それの1つ上の俺、そこまで歳は変わらないのに、ユリウスの方が何でも出来た。
「……俺は……、今までと変わらず、か。 外には出られないだろうし、これからも城の中で存在を潜めることになるだろうな」
フッと少し笑いながら話すと、ユリウスは涙目になりながら、言葉を失った。
彼にかける言葉を探す。強く「俺なんてほっとけ」と突き放してしまえば、彼はもっと考え込み、父たちに何か言いかねない。
「……ユリウス、じゃあ、後継者になって、俺の居場所を作ってくれ、それで俺は満足だ」
ニカッと笑いながら、そう言った。ユリウスは、「うぅ…」と少し唸ったが、それが1番最善なのだと理解して、「分かった、約束する!」と強く言った。
優しい優しい俺の弟、真面目で、人を見た目やバースで判断しない優秀なユリウス。
どうか、お前だけは幸せに生きてくれ。
そんな約束も虚しく、後日、俺は父に呼び出された。
ユリウスの姿だけがなく、父と母、そして俺の3人だけだった。珍しい事もあるものだと思いながら、2人の前に立っていた。
「クロウス、お前にはこれからある場所に行ってもらう。先日、隣国のマルシャール家との対談があった」
マルシャール家、隣国でジェイラード家と肩を並べる、いや、それ以上の財産、権力を持った家だ。そんな奴らと何を話すって……
「どういう訳か、お前の存在が向こうにバレた。もちろん、Ωだということも。 向こうから、お前を渡せば、お前のことを世に広めないと言われた」
俺は身体が固まった。隣国、しかも対立していたマルシャール家にΩがいると知られていた。それが世に出回れば、一気にジェイラード家の評判は落ちる。権力だって霞む。
「……それで、だ。もう話はついている。お前を隣国、マルシャール家へと受け渡すことになった」
父がそう言っている中、母は何を話すわけでもなく、下を俯いているだけだ。
つまり、厄介払いという訳か。
向こうもよく分からない条件を出したものだ。とっとと世に広めれば良いものを受け渡すことで、広めない? 理由が分からない。
「……それは、本当なのですか、私自身言うのも何ですが、向こうの意図が分かりません」
「それだけではない、どういう訳か前金として1000万も貰っている」
それこそどういう事だ、なんで金が発生する。しかもこちらに渡す……? マルシャール家は大丈夫なのか?
「兎に角、この後に及んで、お前を渡さないなんてことはできない。……それに、お前もユリウスには恵まれたまま継いで欲しいだろう」
ユリウスの名前を出されてしまえば、言葉が返せない。
ユリウス、すまない。約束はどうやら俺の方が守れそうにないようだ。
「……善は急げということで、今日、迎えを寄越すと言われている。お前をそこで引き渡す」
突然なことに驚きを隠せない。
しかし、それでも何か言って解決できる問題でもない。目を瞑り、俺は頷くことしか出来なかった。
タイミングを測ったかのように、ドアがノックされる。使用人が来たようだ。
「旦那様、クロウス様、マルシャール家の者が……」
それを告げられ、俺のこの城での居場所は本当に無くなったのだと言われたのだと思った。
玄関先に馬車が1台、それなりに良質な馬と車。隣国の中でも、高い地位に位置する家なのだと再度確認する。
玄関先には、ユリウスがいた。顔を青ざめて使用人に連れられてきた俺と父母を見ている。
俺の方に駆け寄り、両腕を強く掴む。もう泣きそうなユリウスを見て、最後に兄らしく笑いかける。
「…待って、兄さん。 何処にも行かないよね……?」
ユリウスは出来る子だ。分かっているはずだ、もう俺がこの馬車に乗ることを。
「……ごめんな、約束、守れそうにない」
兄弟2人の悲しい別れを割くように、馬車から1人の男が降りてきた。
「……お別れは終わったか? クロウス=ジェイラード」
少し褐色肌で、サラサラとした白髪を後ろで束ねた男だ。
そして、やはりα……。今まで会ってきたどのαよりも匂いが濃い。 ドクドクと嫌に胸が鳴る。身体も熱い、ヒートではないのにここまで熱くなるのは初めてだ。
質の良い衣服に身を包み、目の前に立つとかなり高身長で、嫌になるほど顔が良い。
俺を離そうとしないユリウスを見下し、俺に右手を差しのべる。
「……俺はヴァラドル=マルシャール、お前の夫だ」
褐色肌の口元から綺麗に並んだ白い歯が現れる。
おっと、……オット、夫か……『夫』!!??
マルシャール家が急におかしくなったのかと思えば、本当におかしくなったようだ。
俺はてっきり、性的暴行をされて壊され、何処かに売られる未来を見ていた。
俺は……男だぞ……! いや、Ωだから関係ないというのか……?!
「……仲の良い兄弟だな、だが、もうお別れの時間は終わりだぞ」
ユリウスに向かってそう言うと、差し出された右手を俺の右腕を引っ張り、左手でユリウスを押し返す。
急に腕を引かれ、足がもつれてヴァラドルの胸に顔を打ち付ける。
フワリと近くに寄ると、匂いで頭がおかしくなりそうになる。
他のαと関係を持たないように、人との関係を絶たれていた俺には刺激が強すぎる匂いだった。
身体が痺れたように動かなくなる。熱い、心臓がうるさい、息が荒くなる。
「……っに、兄さん! 待って、お願いだから、僕をおいて行かないで……」
ユリウスの震える声が遠くで聞こえる。この男から離れたいのに身体が動きたくないと言うように、離れようとしない。
意識がボゥとなっていく、力なく胸に倒れ込んだまま意識を手放した。
「……おや、お休みかい?」
「っ兄さん!!」
ユリウスが何かを叫んでいる……。俺の両足がフッと地面から離れ、浮いたような感じがした。掠れていく視界の中、嫌に整ったヴァラドルの顔が近くにあることに気づき、自分は抱えられているだと分かった。
ギィと馬車の扉が開き、バタンと閉まるとともにユリウスの声は聞こえなくなった。
「クロウス……、どうして、貴方はαで生まれてこなかったの……? 私が悪いの? ねぇっ!!」
母親の悲しく責め立てる声が、毎日毎日耳を通り抜けた。
「お前にこの城を……国を受け継ぐ資格はない、ユリウスに今後のことは任せる……、お前はジェイラード家の汚点にしかならない」
父親の怒りに満ちながらも冷静な罵倒。
弟であるユリウスへと城、国の権限が渡ることが決まった。
ジェイラード家は、代々αの血筋が絶えなかった。そんなある日産まれたα以外の血縁者、俺クロウス=ジェイラードは、最悪なことにΩとして産まれてしまった。
ただ、幸い弟のユリウスはαであった。そんなユリウスを父も母も……周りも可愛がった。
俺はできるだけ人目を浴びぬようにと、城から出されることが少なかった。
血縁者の中にΩがいると分かれば、隣国からの狙われる対象になりかねない。
俺はそれなりに権力も金あるこの家のお荷物となった。
18歳を迎える弟を横に、父から言い渡された後継者の名前。 ユリウスは唯一、俺にも優しかった。 隣で何か言いたそうにする弟を横目に自分の存在を否定する感情が生まれた。
ユリウスと2人で城の庭に出た。まだ何か言いたげにするユリウス。言いたいことは分かっている、長男の俺に後継者をして欲しい、αやΩは関係ないと思っているのだ。
「……ユリウス、お前は俺より優秀だ。 αとかΩとか関係なく、お前の方が後継者には向いているんだよ」
口からデマカセを話す。もちろん、そんな事思ってはいなかった。αだから、優秀に育ったお前だから、周りから良い目をされるお前が、後継者にならざるを得ないんだ。
「……そしたら、兄さんは……? 別に兄さんは悪くないじゃないか!」
本当に優しい子に育ったな、と感心する。
18歳の弟、それの1つ上の俺、そこまで歳は変わらないのに、ユリウスの方が何でも出来た。
「……俺は……、今までと変わらず、か。 外には出られないだろうし、これからも城の中で存在を潜めることになるだろうな」
フッと少し笑いながら話すと、ユリウスは涙目になりながら、言葉を失った。
彼にかける言葉を探す。強く「俺なんてほっとけ」と突き放してしまえば、彼はもっと考え込み、父たちに何か言いかねない。
「……ユリウス、じゃあ、後継者になって、俺の居場所を作ってくれ、それで俺は満足だ」
ニカッと笑いながら、そう言った。ユリウスは、「うぅ…」と少し唸ったが、それが1番最善なのだと理解して、「分かった、約束する!」と強く言った。
優しい優しい俺の弟、真面目で、人を見た目やバースで判断しない優秀なユリウス。
どうか、お前だけは幸せに生きてくれ。
そんな約束も虚しく、後日、俺は父に呼び出された。
ユリウスの姿だけがなく、父と母、そして俺の3人だけだった。珍しい事もあるものだと思いながら、2人の前に立っていた。
「クロウス、お前にはこれからある場所に行ってもらう。先日、隣国のマルシャール家との対談があった」
マルシャール家、隣国でジェイラード家と肩を並べる、いや、それ以上の財産、権力を持った家だ。そんな奴らと何を話すって……
「どういう訳か、お前の存在が向こうにバレた。もちろん、Ωだということも。 向こうから、お前を渡せば、お前のことを世に広めないと言われた」
俺は身体が固まった。隣国、しかも対立していたマルシャール家にΩがいると知られていた。それが世に出回れば、一気にジェイラード家の評判は落ちる。権力だって霞む。
「……それで、だ。もう話はついている。お前を隣国、マルシャール家へと受け渡すことになった」
父がそう言っている中、母は何を話すわけでもなく、下を俯いているだけだ。
つまり、厄介払いという訳か。
向こうもよく分からない条件を出したものだ。とっとと世に広めれば良いものを受け渡すことで、広めない? 理由が分からない。
「……それは、本当なのですか、私自身言うのも何ですが、向こうの意図が分かりません」
「それだけではない、どういう訳か前金として1000万も貰っている」
それこそどういう事だ、なんで金が発生する。しかもこちらに渡す……? マルシャール家は大丈夫なのか?
「兎に角、この後に及んで、お前を渡さないなんてことはできない。……それに、お前もユリウスには恵まれたまま継いで欲しいだろう」
ユリウスの名前を出されてしまえば、言葉が返せない。
ユリウス、すまない。約束はどうやら俺の方が守れそうにないようだ。
「……善は急げということで、今日、迎えを寄越すと言われている。お前をそこで引き渡す」
突然なことに驚きを隠せない。
しかし、それでも何か言って解決できる問題でもない。目を瞑り、俺は頷くことしか出来なかった。
タイミングを測ったかのように、ドアがノックされる。使用人が来たようだ。
「旦那様、クロウス様、マルシャール家の者が……」
それを告げられ、俺のこの城での居場所は本当に無くなったのだと言われたのだと思った。
玄関先に馬車が1台、それなりに良質な馬と車。隣国の中でも、高い地位に位置する家なのだと再度確認する。
玄関先には、ユリウスがいた。顔を青ざめて使用人に連れられてきた俺と父母を見ている。
俺の方に駆け寄り、両腕を強く掴む。もう泣きそうなユリウスを見て、最後に兄らしく笑いかける。
「…待って、兄さん。 何処にも行かないよね……?」
ユリウスは出来る子だ。分かっているはずだ、もう俺がこの馬車に乗ることを。
「……ごめんな、約束、守れそうにない」
兄弟2人の悲しい別れを割くように、馬車から1人の男が降りてきた。
「……お別れは終わったか? クロウス=ジェイラード」
少し褐色肌で、サラサラとした白髪を後ろで束ねた男だ。
そして、やはりα……。今まで会ってきたどのαよりも匂いが濃い。 ドクドクと嫌に胸が鳴る。身体も熱い、ヒートではないのにここまで熱くなるのは初めてだ。
質の良い衣服に身を包み、目の前に立つとかなり高身長で、嫌になるほど顔が良い。
俺を離そうとしないユリウスを見下し、俺に右手を差しのべる。
「……俺はヴァラドル=マルシャール、お前の夫だ」
褐色肌の口元から綺麗に並んだ白い歯が現れる。
おっと、……オット、夫か……『夫』!!??
マルシャール家が急におかしくなったのかと思えば、本当におかしくなったようだ。
俺はてっきり、性的暴行をされて壊され、何処かに売られる未来を見ていた。
俺は……男だぞ……! いや、Ωだから関係ないというのか……?!
「……仲の良い兄弟だな、だが、もうお別れの時間は終わりだぞ」
ユリウスに向かってそう言うと、差し出された右手を俺の右腕を引っ張り、左手でユリウスを押し返す。
急に腕を引かれ、足がもつれてヴァラドルの胸に顔を打ち付ける。
フワリと近くに寄ると、匂いで頭がおかしくなりそうになる。
他のαと関係を持たないように、人との関係を絶たれていた俺には刺激が強すぎる匂いだった。
身体が痺れたように動かなくなる。熱い、心臓がうるさい、息が荒くなる。
「……っに、兄さん! 待って、お願いだから、僕をおいて行かないで……」
ユリウスの震える声が遠くで聞こえる。この男から離れたいのに身体が動きたくないと言うように、離れようとしない。
意識がボゥとなっていく、力なく胸に倒れ込んだまま意識を手放した。
「……おや、お休みかい?」
「っ兄さん!!」
ユリウスが何かを叫んでいる……。俺の両足がフッと地面から離れ、浮いたような感じがした。掠れていく視界の中、嫌に整ったヴァラドルの顔が近くにあることに気づき、自分は抱えられているだと分かった。
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