心からの愛してる

マツユキ

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――――2か月後

結良の体調も大分回復して、今は竜元と共に寮の部屋で自主勉強に励んでいた。本来なら、緊急に改装された入院部屋は、元の寮室へ改装しなおす事になっていたのだが、結良の人への恐怖心が学園側が思っていたよりも強かった為に、入院部屋は自主勉強と生徒会の仕事をする為の部屋へと改装される事になった

改装と言っても、ベットなどを撤去し机などを入れただけだ

結良は竜元に対しては、恐怖を感じなかったために、竜元も結良と共に、引き続き自主勉強と言う事になっている。これが許されたのは、単に2人がとても優秀で、先生の目が無くとも、きちんと自主的に勉強すると分かっているからである。いわば、先生側からの信頼も厚いのだ

そして、例の断罪の件は着々と進み、もうじき結良が安心して学園に通えるようになる日も近かった

加賀城を始め、親衛隊の隊員達、そして先生までもが協力をしてくれ、思ったよりもスムーズに事が運びそうだと、加賀城から連絡を受けた竜元

実は、結良への信頼度は生徒よりも先生方の方が厚いのだ。当時1年生だった結良を、生徒会副会長にと言って来たのも先生方である事からも、その信頼度は分かるだろう

結良は初等部の頃から、優秀で心優しい子だったと、先生方の口癖だった。それはそれは、我が子の事の様に自慢げに言う先生方には、少し呆れた物だが、竜元もその意見には賛同していた

ここの生徒たちは、竜元が大財閥の御曹司だと言う事を知っているが、結良が竜元と同等か、それ以上に格が上の家柄だとは知らない

先生方や、ほんの一部の生徒は知っている事なのだが、これは結良が自分の出自を、鼻にかけていない故に、気づかれていないに過ぎない

そして、それに輪をかける様に、結良の実家は知る人ぞ知る、と言う家柄な事もあって、知っている、または気づく者が殆ど現れないのだ

そんな家柄の結良を、傷つけた輩は当然ながら、許される事は無い。加えて結良は家族に、かなり溺愛されている。徹底的に、報復される事は目に見えて分かっていた

そして、竜元や加賀城。そして協力してくれた生徒達や先生方も、手加減などはする気は一切なかった




断罪の舞台となるのは、とある名目で急きょ開催される事となった、パーティーだ。主要人物の家族も呼ばれている。その場で、親ともども断罪するのだ

子がやった事の責任は、親にもある

まともに育てていれば、あのような考えを持つ子供には育たない筈だ。甘やかし、言う事を何でも聞いて来た結果がこの参事

これは、一企業の子供が。将来多くの人の人生を背負う立場になる者に、許される事ではない

これまでの振る舞いや、今回の事で、学園側も厳重注意で済ませるにはいけないと判断した結果、この様な事を行う事が決まった

様は見せしめでもあるし、戒めとする為でもある

立場が上だからと、威張り散らかすのではない。上に立つ者は、下の者達を守る責任がある。だから、大切にしなければならないのだ

それを、しっかりと分からせるために

「もうすぐだ…」

「会長?」

「いや、なんでもない」

「?」

不思議そうな顔をする結良に、微笑みながら竜元は思うのだ

結良の親族に、認めてもらえるように頑張らないとな、と
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