裏切りの先にあるもの

マツユキ

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あれから何度も彼女に会いに行った

彼女は口を堅く閉ざしたままだった。

そんな事を繰り返して数か月がたった。その間にも父上はモリスとの婚約の話を進め結婚式の日取りまですでに決まっていた。

これが最後になるかもしれない、彼女の屋敷に着いた時彼女のご両親が私を呼んで悲痛な面持ちで『妊娠している』と言ったのだ

私と彼女との子供だと。私は喜んだ、彼女と私の子。それに妊娠していると知ったら父上も反対は出来ないだろうと

だが私の考えは甘かったのだ。モリスとの結婚がなぜこんなにも急がれているのか。

私は父上に、彼女が妊娠していると伝えたが、父上は笑いながら『知っている』と言った

『それがどうかしたのか』とも

愕然とした。知っていても尚、私にモリスとの結婚を強いている。

私はモリスの屋敷に赴き、恋人がいる事、妊娠している事そして何より彼女を愛している事を伝えたがモリスの父親は嘲笑うかの様に『知っている。だが、モリスが君と結婚したいと言っているのだ。君の父上にも言ったが、この結婚は破棄など出来ないぞ?陛下にも承認を頂いているのだからな。それに私は公爵だぞ?その娘と腹の子などどうとも出来るのだ。』

何て身勝手な言い分だろうかと怒りに震えた

だけど同時に彼女に手を出されるかもしれないと言う恐怖にもかられたのだ

私は彼女を心から愛している。お腹の子供の事を考えると彼女と一緒になりたい。

だが、私に残された道は『モリスと結婚する』事だけだった

モリスとの結婚式も終わり妊娠も発覚した

おかしいと思ったさ。私とモリスは契っていないのだから。

同時に理解した。モリスが何故結婚を急いだのか

そして半年が過ぎたとき、モリスは出産し女の子が生まれた。私とは似ている所が無い子が

そんな時だ、彼女の屋敷が火事になったと知らせを受けたのは

私は使用人たちの制止を振り切り彼女の屋敷へと走った。

屋敷は全焼し彼女の両親は彼女を助け出し屋敷の外まで逃げてきていたが、その過程で負ったやけどが原因で私が駆けつけた時には既に亡くなっていた。

顔や体は酷いやけどで面影もなかったのだ。動けたことが不思議なほど酷い状態だった

少し離れた所に彼女はいた。酷く興奮しているのか大声で叫んでいる

「彼女は無事なのか!?」

慌てて駆けつけると傍に居た医師がお腹の子が危険な状態だと言った

「ロイド!私の赤ちゃんを助けて!お願いよ!」

目に涙を溜め自分もやけどを負って瀕死の状態であるにも関わらずに

「でも君の命が!!」

「ロイド…私はいいの。でも赤ちゃんだけは……あなたとの子だけは!お願いよロイド!」

涙で彼女の顔が滲む。しゃべっている間も彼女の口からは血が滲んでいた

「もしお腹の子を助けたいのならば一刻の猶予もありませんぞ」

子供を犠牲にしたとしても彼女はきっと助からない

ならば彼女との唯一の繋がりである子を犠牲にするわけにはいかない

「先生、赤ん坊を……どうか助けてください!」

「わかった」

「ロイド……ありがとう」

それが私が見た彼女の最後の笑顔だった

赤ん坊は未熟児だったが助かり、施設にと話しが出ていたのを私が振り切り引き取った

一週間後、私は病院から赤ん坊を引き取り屋敷へ戻った。

「その子はなに!?」

出迎えたのはモリスの罵声だった

「この子は私が引き取る」

「そんなの私が許さないわ」

「君の許しは得なくても構わない。君が抱いている子も私の子ではないからな」

「!?……あなたお父上の事ご存じないのね」

「…何が言いたい?」

「何故、私があなたと結婚したと思っているの?」

「……その子の事が原因だろう?」

モリスは勝ち誇ったように言った

「ふふ、この子はあなたの妹よ」

「…!?どう言う事だ!?」

「妹だと言ったのよ?私とあなたのお父上との子なの」

「なんだって!?」

信じられなかった。自分の父親とモリスとの子だなんて想像するのも悍ましい

「お父上は素敵な方よね?お顔も整っていらして、令嬢の間では有名なのよ?」

「いったい何がどうなっている!?」

「晩餐会に出席した時、お父上とお会いしてそのまま契りを交わしたの。まさか一度で妊娠するなんて……私も思っていなかったのよ?」

わびれた様子も見せずに言うモリスに吐き気を覚える

「汚らわしい!!君には節度と言うものが無いのか!?」

「あら、それはあなたのお父上にも言えた事でしょう?」

「陛下に離縁を申し出る」

「そんな事は出来ないわ。お父様が許さない。それに何故あなたの元婚約者の屋敷が火事になったと思っているの?」

「まさか……」

恐ろしい考えが私の頭によぎる

「その子もどうなるか分からないわね?」

なんて恐ろしい女だ。自分の為なら人の命などどうでもいいと言うのか!?

「そうねぇ…その子を屋敷で育てる事は許してあげるわ。だけど、あなたに自由は無い。その子の事を思うなら言う事を聞くことね」

彼女との唯一の繋がりであるこの子を失いたくはない。

「……わかった」

それ以来、私はモリスに逆らう事を辞めた

彼女の名はセシル。彼女と同じように可憐で優しい子に育ってほしかった私は赤ん坊に母であるセシルの名を付けた

彼女が生きられ無かった分、彼女が感じる事が出来なかった分の幸せが訪れるよう願いを込めて

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