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第一章 始まり
第三話
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~ソンタ村~
ガバッ
「ッ!!……あっ今日はお出かけだ!ふふ、楽しみだな~。」
毎日見る夢は見たが、お出かけが楽しみで仕方なかったのかルンルンだ
いつもより早く家から出て、顔を洗いに行く。道中精霊たちが話しかけてきては『今日はお出かけするんだよ!』と言ってまわる。その度に精霊たちはハッとしては慌てた様子で『気を付けてね!』と言い残し去って行った。その様子を不思議に思ったシェリだが、頭はお出かけの事で一杯で深く考えなかった。
いつもの日常、毎日の日課。それが今日で終わりを迎えるとも知らずに。
「シェリ。準備は出来てる?」
準備を終え家で待っているとエントが調度訪ねて来た。
「うん!出来てるよ!今日はよろしくね!」
「……絶対に近づいちゃダメだからね?」
「…?分かってるよ?」
この点に関しては信用のないシェリ。エントは再度確認するが不安で仕方ない。
「…はぁ、じゃぁ行こうか」
「はぁ~い!」
こうして初めてのお遣いならぬ、初めての冒険の一歩が踏みだされたのだった。
~東の森~
「くそッ!どうすればいいのだ……」
小太りの男がブツブツと言いながら右往左往している。男の来ている服は一目見ただけでもいい召し物だとわかるものだった。
「くそッ!くそッ!」
何度も悪態をつきながらやりどころのない苛立ちを自身の爪を噛むことで消化している。
男は一点を見つめた後、まるで確認するかの様に触れ少し離れた所に待たせてあった馬車へと向かった。
「旦那様。」
綺麗なお辞儀をし馬車のドアを開け主人を迎える。
「……屋敷に戻る」
「かしこまりました」
男が馬車に乗込む
「…出せ」
男を乗せた馬車がゆっくりと走り出した。
~東の森入口~
「わぁ……すごく綺麗な森だね!」
「うん!凄く綺麗な森だよ。この森にいる精霊は僕なんかよりも上位の精霊が沢山いるから森自体が澄んでいるんだ。だからすごく綺麗なんだよ!」
エントも上位精霊だがその中でも下のランクになる
「そうなんだ~あいたいなぁ~。エントは東の森に来るのは2回目だからお友達はまだいないよね…」
凄く残念そうにシェリが言う
「ふふん♪それが友達いるんだ~。会いたい?」
ニヤニヤとしながらシェリに自慢する
「ッ!!会いたい!今すぐ会いたい!」
「ふふ、シェリは会いたいって言うと思ったから待ち合わせしてるんだ!行こう!」
「レッツゴー♪」
二人がスキップしながら森に入ろうとした時何かに気づいたシェリが立ち止まる
「ん?こっちに何か来てる?聞いたことが無い音だね。」
首をかしげながら何の音だろうと考え込むシェリにエントは焦り
「シェリ!人間だよ!人間が来る音だ!こっちに来て!早く!!」
エントから引っ張られるままに進もうとしたとき、突如馬車が現れる。
「ッ!!どー!どー!止まれ!」
馬車の前方に乗っていた男がシェリを目視したと同時に慌てて馬の手綱を引いた。急停車したため馬車の中からゴンッと大きな音が聞こえた後、男の罵声が響いた。
「ッ!何事だ!何をやっている貴様!!」
「ッ!申し訳ございません!急に子供が出て来たものですから慌てて馬を止めました!」
「子供だと?貴様は誰に雇われているんだ?子供か!?」
「ッいいえ!そのようなつもりでは…!」
「私をバカにしているのか!?子供なんぞ引いてしまえばよい!私の進む所に現れたのだからな!当然そうするべきであろう!?」
「ッ申し訳ありません!」
「使えない奴め!…セオドール!」
「はい、旦那様」
「子供を連れてこい!」
「承知いたしました」
セオドールは馬車から下りてシェリの元にやってくる
「ッ!これはこれは……お怪我はありませんか?」
先ほどの事務的な声音と違い優しさがにじみ出ており心から気遣っている言葉だった。
「…ッ、は…い…僕は大丈夫です」
地面に尻餅をついた状態のシェリが答える
「お手をどうぞ」
少し屈み込み手を差し出す
「……あり…がとう…」
ためらいがちにセオドールの手を取る
「ふふ……ではこちらへ」
シェリの可愛い反応に微笑ましく思うセオドールはこれからシェリを男の元に連れて行かなくてはならないことを思い出す。
セオドールに手を引かれるまま馬車まで連れて行かれたシェリ。
「お前が私の邪魔をした子供か!…ッ!!!!これは……」
男はいやらしい笑みを隠しもせずシェリをみる
「こんなに美しい者は見たことが無い……セオドール!子供を馬車へ…屋敷へ連れて帰る!」
「……承知しました」
「えっ…?あの…僕は…」
シェリの言う事は無視され半ば無理やり馬車へと乗せられてしまったシェリ
『シェリ!大丈夫。僕が傍にいるから!』
耳元で声が聞こえる
『大丈夫だよ』
シェリを安心させようとエントが微笑む。シェリはエントが傍にいることで落ち着きを取り戻す事が出来た
「安心してください…あなたに手出しはさせません」
セオドールが小声でシェリに話しかけてきた。
シェリは初めて会ったばかりなのに…と不思議でしかたない
「ふふ、不思議だとお顔に書いてありますよ?」
「あ…ごめんなさい。でも…会ったばかりなのに……優しくしてくれる人は初めてだったから…」
「あやまらないでください。ふふ…可愛らしいお方ですね。御安心を、あの男には指一本触れさせることはありませんから。」
「え…?」
自分の主人をあの男呼ばわりするセオドールに益々戸惑いが隠せない
「私はあなたと共に……我らの愛し子。」
慈愛に満ちた微笑みにシェリは不思議と安堵を覚える。エントを見ると変わらず微笑んでいた。
「愛し子…?」
旅立ちは晴れやかに。訪れたのは困惑と人に対し初めて感じた安堵だった。シェリの運命の歯車がゆっくりと時を刻みはじめる
ガバッ
「ッ!!……あっ今日はお出かけだ!ふふ、楽しみだな~。」
毎日見る夢は見たが、お出かけが楽しみで仕方なかったのかルンルンだ
いつもより早く家から出て、顔を洗いに行く。道中精霊たちが話しかけてきては『今日はお出かけするんだよ!』と言ってまわる。その度に精霊たちはハッとしては慌てた様子で『気を付けてね!』と言い残し去って行った。その様子を不思議に思ったシェリだが、頭はお出かけの事で一杯で深く考えなかった。
いつもの日常、毎日の日課。それが今日で終わりを迎えるとも知らずに。
「シェリ。準備は出来てる?」
準備を終え家で待っているとエントが調度訪ねて来た。
「うん!出来てるよ!今日はよろしくね!」
「……絶対に近づいちゃダメだからね?」
「…?分かってるよ?」
この点に関しては信用のないシェリ。エントは再度確認するが不安で仕方ない。
「…はぁ、じゃぁ行こうか」
「はぁ~い!」
こうして初めてのお遣いならぬ、初めての冒険の一歩が踏みだされたのだった。
~東の森~
「くそッ!どうすればいいのだ……」
小太りの男がブツブツと言いながら右往左往している。男の来ている服は一目見ただけでもいい召し物だとわかるものだった。
「くそッ!くそッ!」
何度も悪態をつきながらやりどころのない苛立ちを自身の爪を噛むことで消化している。
男は一点を見つめた後、まるで確認するかの様に触れ少し離れた所に待たせてあった馬車へと向かった。
「旦那様。」
綺麗なお辞儀をし馬車のドアを開け主人を迎える。
「……屋敷に戻る」
「かしこまりました」
男が馬車に乗込む
「…出せ」
男を乗せた馬車がゆっくりと走り出した。
~東の森入口~
「わぁ……すごく綺麗な森だね!」
「うん!凄く綺麗な森だよ。この森にいる精霊は僕なんかよりも上位の精霊が沢山いるから森自体が澄んでいるんだ。だからすごく綺麗なんだよ!」
エントも上位精霊だがその中でも下のランクになる
「そうなんだ~あいたいなぁ~。エントは東の森に来るのは2回目だからお友達はまだいないよね…」
凄く残念そうにシェリが言う
「ふふん♪それが友達いるんだ~。会いたい?」
ニヤニヤとしながらシェリに自慢する
「ッ!!会いたい!今すぐ会いたい!」
「ふふ、シェリは会いたいって言うと思ったから待ち合わせしてるんだ!行こう!」
「レッツゴー♪」
二人がスキップしながら森に入ろうとした時何かに気づいたシェリが立ち止まる
「ん?こっちに何か来てる?聞いたことが無い音だね。」
首をかしげながら何の音だろうと考え込むシェリにエントは焦り
「シェリ!人間だよ!人間が来る音だ!こっちに来て!早く!!」
エントから引っ張られるままに進もうとしたとき、突如馬車が現れる。
「ッ!!どー!どー!止まれ!」
馬車の前方に乗っていた男がシェリを目視したと同時に慌てて馬の手綱を引いた。急停車したため馬車の中からゴンッと大きな音が聞こえた後、男の罵声が響いた。
「ッ!何事だ!何をやっている貴様!!」
「ッ!申し訳ございません!急に子供が出て来たものですから慌てて馬を止めました!」
「子供だと?貴様は誰に雇われているんだ?子供か!?」
「ッいいえ!そのようなつもりでは…!」
「私をバカにしているのか!?子供なんぞ引いてしまえばよい!私の進む所に現れたのだからな!当然そうするべきであろう!?」
「ッ申し訳ありません!」
「使えない奴め!…セオドール!」
「はい、旦那様」
「子供を連れてこい!」
「承知いたしました」
セオドールは馬車から下りてシェリの元にやってくる
「ッ!これはこれは……お怪我はありませんか?」
先ほどの事務的な声音と違い優しさがにじみ出ており心から気遣っている言葉だった。
「…ッ、は…い…僕は大丈夫です」
地面に尻餅をついた状態のシェリが答える
「お手をどうぞ」
少し屈み込み手を差し出す
「……あり…がとう…」
ためらいがちにセオドールの手を取る
「ふふ……ではこちらへ」
シェリの可愛い反応に微笑ましく思うセオドールはこれからシェリを男の元に連れて行かなくてはならないことを思い出す。
セオドールに手を引かれるまま馬車まで連れて行かれたシェリ。
「お前が私の邪魔をした子供か!…ッ!!!!これは……」
男はいやらしい笑みを隠しもせずシェリをみる
「こんなに美しい者は見たことが無い……セオドール!子供を馬車へ…屋敷へ連れて帰る!」
「……承知しました」
「えっ…?あの…僕は…」
シェリの言う事は無視され半ば無理やり馬車へと乗せられてしまったシェリ
『シェリ!大丈夫。僕が傍にいるから!』
耳元で声が聞こえる
『大丈夫だよ』
シェリを安心させようとエントが微笑む。シェリはエントが傍にいることで落ち着きを取り戻す事が出来た
「安心してください…あなたに手出しはさせません」
セオドールが小声でシェリに話しかけてきた。
シェリは初めて会ったばかりなのに…と不思議でしかたない
「ふふ、不思議だとお顔に書いてありますよ?」
「あ…ごめんなさい。でも…会ったばかりなのに……優しくしてくれる人は初めてだったから…」
「あやまらないでください。ふふ…可愛らしいお方ですね。御安心を、あの男には指一本触れさせることはありませんから。」
「え…?」
自分の主人をあの男呼ばわりするセオドールに益々戸惑いが隠せない
「私はあなたと共に……我らの愛し子。」
慈愛に満ちた微笑みにシェリは不思議と安堵を覚える。エントを見ると変わらず微笑んでいた。
「愛し子…?」
旅立ちは晴れやかに。訪れたのは困惑と人に対し初めて感じた安堵だった。シェリの運命の歯車がゆっくりと時を刻みはじめる
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