3 / 36
第一章 始まり
第二話
しおりを挟む
~ブルタニア帝国 城内~
バンッ
「ラシード殿下はおいでか!」
ノックもせず勢いよくドアを開け入って来た男は酷く憤慨した様子
「帝国騎士団長ともあろうお方が。礼儀もお忘れになりましたか?」
冷静な対応ではあるが言葉には嫌味がありありと見て取れる。
「うっ……きゅっ急を要するのだ!……えーい!!ユアン!ラシードの奴は何処にいる!」
イライラとした様子で怒りを隠しもせず問いかける。
「はぁ……ジェラルド。いくら幼馴染とはいえ、今は国務中ですよ。ちゃんとして下さい。お互い下に示さねばならない立場なのですから。」
ため息交じりに答える。
「構うもんか!あの野郎……一言いってやらんと気が済まん!」
さすが騎士団長である。怒っている姿には迫力があり、見る人が見れば恐れで近づけない。
「いったい何事ですか?私も暇ではないのです。話は手短に、聞いて差し上げます。」
言葉は丁寧だが優しさがまったくない。いや、これがユアンにある優しさの全てなのだ。
「おまっ…まぁいい。あったさ!あったとも!!後宮の女どもがラシードに媚び売ってた所に出くわしちまって、俺はラシードに気づかれないようにその場を去ろうとしたんだ!だけどあの野郎は目ざとく俺に気づいて…あいつはこれ幸いとばかりに女どもを言いくるめてしまいには俺に押してけてさっさと何処かに行きやがった!!おかげで散々な目にあったんだよ俺は!!」
最後の方は涙声だ。騎士団長も形無しである。
「それはそれは大変な目にあったんですね。」
素晴らしい棒読みだ。これ以上なく素晴らしい棒読みである。
「俺は…グズッ…散々な目にあったんだ!分かるだろう!?」
すでに泣いている。騎士団長なのに泣いている。幼馴染だからだろうか気が緩んだのだろう。
「はぁ……まぁ、そんな事ぐらいで大騒ぎするなと言いたい所ですが。えぇ、分かりますとも。痛いほど分かります……ラシード殿下はいつもそうです。幼い頃から共に育ってきましたが…まったく変わっていません。来てないかと先ほど尋ねましたね?えぇ、来ていません。昨日も、一昨日も来ていやがりませんとも。私はちゃんと言いましたよ?一国の皇子で、次期帝王となられるのですから、ちゃんとしなさいと。ラシード殿下は……殿下と呼んでよいのか定かではありませんが、そうですね……ラシードの野郎は`ユアンがいるから俺は安心できてるんだ‘と胸を張って言っていましたよ。あの野郎は……ふざけやがってますね。私がいるから安心できるだと?絞めるか…一度絞めた方いいか…」
敬語が段々と取れ最後の方はブツブツと言い出すユアンにジェラルドは顔が引きつるのを感じる。
「お互い苦労するな……」
「「はぁ……」」
息の合ったため息も昔から変わらず健在である。
二人が昔を振り返りため息を何度もついていた時
ガチャッ
「おっ。二人そろって何やってるんだ?」
ドアの方からのんきな声が聞こえる。
途端に二人はピシリと固まり、ギギギギと音がしそうなほどゆっくりと声の方を振り返る。
「何やってるんだ?…じゃねーっ!!この野郎!」
ジェラルドの怒号が飛ぶ。
「何やってるのかですって?あなたとゆう人は。」
静かに怒りをぶつけるユアン
「ははははっ。流石だな。息が合ってるぞ。」
二人の怒号など気にも留めず笑い飛ばす。彼がこのブルタニア帝国第一皇子のラシードその人である。
「「…はぁ」」
ラシードにこれ以上言っても効果はないと分かっている二人はため息をつくほかない。それは、ラシードがただ単に国務を放り出し遊びほうけている訳ではない事を知ってるがゆえだ。
「で、どうでしたか?確証は得られたのですか?」
幼馴染から側近の顔になったユアンが問う。
「あぁ。ただ証拠がない。」
ラシードから先ほどまでの穏やかな表情が消える。
「確証はあるが証拠がない…か」
「あぁ…あの狸どもを一層するには証拠が確実に必要となってくる。確証を得た所で何もならないと言うことだ……だが、証拠ならある。」
ラシードがニヤリとする
「証拠があるのですか?」
「あぁ…だが、証拠を得るためには少々城を離れなければならない」
「はぁ…分かりました。その間は私が……」
「いや、今回はユアンとジェラルドにも同行してもらわねばならない」
ユアンの言葉を遮りラシードは続ける。
「俺は度々同行することはあったが、ユアンも同行とは……」
「私が同行してもさして出来る事はないと思うのですが…」
二人が困惑したようにラシードを伺う。
「いや…今回は、ユアンにしかできぬ事がある。まさに適任だ。」
口の端を上げ妖しげに笑うラシードに二人は困惑するばかりだった。
バンッ
「ラシード殿下はおいでか!」
ノックもせず勢いよくドアを開け入って来た男は酷く憤慨した様子
「帝国騎士団長ともあろうお方が。礼儀もお忘れになりましたか?」
冷静な対応ではあるが言葉には嫌味がありありと見て取れる。
「うっ……きゅっ急を要するのだ!……えーい!!ユアン!ラシードの奴は何処にいる!」
イライラとした様子で怒りを隠しもせず問いかける。
「はぁ……ジェラルド。いくら幼馴染とはいえ、今は国務中ですよ。ちゃんとして下さい。お互い下に示さねばならない立場なのですから。」
ため息交じりに答える。
「構うもんか!あの野郎……一言いってやらんと気が済まん!」
さすが騎士団長である。怒っている姿には迫力があり、見る人が見れば恐れで近づけない。
「いったい何事ですか?私も暇ではないのです。話は手短に、聞いて差し上げます。」
言葉は丁寧だが優しさがまったくない。いや、これがユアンにある優しさの全てなのだ。
「おまっ…まぁいい。あったさ!あったとも!!後宮の女どもがラシードに媚び売ってた所に出くわしちまって、俺はラシードに気づかれないようにその場を去ろうとしたんだ!だけどあの野郎は目ざとく俺に気づいて…あいつはこれ幸いとばかりに女どもを言いくるめてしまいには俺に押してけてさっさと何処かに行きやがった!!おかげで散々な目にあったんだよ俺は!!」
最後の方は涙声だ。騎士団長も形無しである。
「それはそれは大変な目にあったんですね。」
素晴らしい棒読みだ。これ以上なく素晴らしい棒読みである。
「俺は…グズッ…散々な目にあったんだ!分かるだろう!?」
すでに泣いている。騎士団長なのに泣いている。幼馴染だからだろうか気が緩んだのだろう。
「はぁ……まぁ、そんな事ぐらいで大騒ぎするなと言いたい所ですが。えぇ、分かりますとも。痛いほど分かります……ラシード殿下はいつもそうです。幼い頃から共に育ってきましたが…まったく変わっていません。来てないかと先ほど尋ねましたね?えぇ、来ていません。昨日も、一昨日も来ていやがりませんとも。私はちゃんと言いましたよ?一国の皇子で、次期帝王となられるのですから、ちゃんとしなさいと。ラシード殿下は……殿下と呼んでよいのか定かではありませんが、そうですね……ラシードの野郎は`ユアンがいるから俺は安心できてるんだ‘と胸を張って言っていましたよ。あの野郎は……ふざけやがってますね。私がいるから安心できるだと?絞めるか…一度絞めた方いいか…」
敬語が段々と取れ最後の方はブツブツと言い出すユアンにジェラルドは顔が引きつるのを感じる。
「お互い苦労するな……」
「「はぁ……」」
息の合ったため息も昔から変わらず健在である。
二人が昔を振り返りため息を何度もついていた時
ガチャッ
「おっ。二人そろって何やってるんだ?」
ドアの方からのんきな声が聞こえる。
途端に二人はピシリと固まり、ギギギギと音がしそうなほどゆっくりと声の方を振り返る。
「何やってるんだ?…じゃねーっ!!この野郎!」
ジェラルドの怒号が飛ぶ。
「何やってるのかですって?あなたとゆう人は。」
静かに怒りをぶつけるユアン
「ははははっ。流石だな。息が合ってるぞ。」
二人の怒号など気にも留めず笑い飛ばす。彼がこのブルタニア帝国第一皇子のラシードその人である。
「「…はぁ」」
ラシードにこれ以上言っても効果はないと分かっている二人はため息をつくほかない。それは、ラシードがただ単に国務を放り出し遊びほうけている訳ではない事を知ってるがゆえだ。
「で、どうでしたか?確証は得られたのですか?」
幼馴染から側近の顔になったユアンが問う。
「あぁ。ただ証拠がない。」
ラシードから先ほどまでの穏やかな表情が消える。
「確証はあるが証拠がない…か」
「あぁ…あの狸どもを一層するには証拠が確実に必要となってくる。確証を得た所で何もならないと言うことだ……だが、証拠ならある。」
ラシードがニヤリとする
「証拠があるのですか?」
「あぁ…だが、証拠を得るためには少々城を離れなければならない」
「はぁ…分かりました。その間は私が……」
「いや、今回はユアンとジェラルドにも同行してもらわねばならない」
ユアンの言葉を遮りラシードは続ける。
「俺は度々同行することはあったが、ユアンも同行とは……」
「私が同行してもさして出来る事はないと思うのですが…」
二人が困惑したようにラシードを伺う。
「いや…今回は、ユアンにしかできぬ事がある。まさに適任だ。」
口の端を上げ妖しげに笑うラシードに二人は困惑するばかりだった。
31
あなたにおすすめの小説
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる