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第三章 動き出す歯車
第二十二話
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光が段々と治まり地割れがやむ
「…はぁ…はぁ…いったい何が起こったのだ…」
「…殿下!無事でしたか…」
息を乱しながらユアンが駆け寄ってくる
「ユアン…私は問題ない。他の皆はどうだ?」
「皆、無事です」
ホッと息をつき、ラシードはシェリを探すように視線を彷徨わせた。ふと目に入ったのは尻餅をついたまま怯えた様に震えているアニタが居た
「…何を見ているんだ…」
ラシードは視線の先を辿った。目に入ったのは穏やかに微笑むシェリと一人の逞しい体つきの美丈夫だった
「…あれはっ!」
ユアンが驚愕に目を見開く。まさか、『魔具』が精霊の犠牲なしに壊れるなど思っていなかったのだ。
「…ゴルヴァ、無事でしたか…」
セオドールは安心したように微笑む。
「あれが…ゴルヴァか……っいってぇぇぇ!」
ジェラルドの呟きを聞き逃さなかったユアンが間髪入れずにジェラルドの頭を叩いた
「ゴルヴァ様、です!この馬鹿!何呼び捨て何て恐ろしい事をしているのですかあなたは!?」
ユアンの必死の形相に引きながらもジェラルドはヴァルから聞いた話を思い出しハッとする。まだ話したこともない精霊…しかも上位以上の精霊だ。どんな性格をしているか分かったものではない
微かに震えだす正直な体を叱咤し己を奮い立たせまっすぐとシェリの傍らに佇む精霊を見る
ジェラルドの叫び声に気づいたのか、精霊は既にジェラルドを見ていた。
「っ!」
シェリと共にジェラルドの元にやってくる精霊の表情は無だった。怒っているのか、それとも何とも思っていないのかすら分からない。
とうとう傍までやってきた精霊にジェラルドはもちろん、ラシードとユアンも体がこわばり緊張していた
「…ジェラルド、叫んでたけどどうかしたの?」
シェリが不思議そうに聞いてくる。ジェラルドは、まさか精霊を呼び捨てにしたことを怒られたからだ、何て事は口が裂けても言えない。ましてや、精霊が目の前に居るのに言えるわけがない
「…いっいや、大丈夫だ!」
「…そう?…あっ、精霊を縛っていた鎖は消すことができたんだ!」
シェリは嬉しそうに報告してくる。
「…シェリ、彼を救って下さりありがとうございます」
セオドールがシェリの頭を撫でながら言った。そして、精霊ゴルヴァに視線を移す
「ゴルヴァ、あなたともあろう方が何故このような事になったのです?」
ゴルヴァは少し考え口を開く
「…愛し子を探している時、下位の精霊が捕獲されていると報告を受けた。私は、すぐに居場所を突き止め精霊たちを解放するためにその場所に向かった。着いた場所は古い倉庫の様な所で、中央に檻に入れられた精霊がいた。周りに人間の気配はなかったから、私は檻に近づいた…そこまでしか覚えていない」
「…なるほど、そう言う事ですか。それならばあなたがあのような状態だったのも頷けます。しかし、人間とはなんと愚かなのでしょうか…」
静かに、しかしその声には怒りが含まれている。セオドールの声音にビクビクするジェラルドは精霊は怖い存在なのだと改めて認識するのであった
「…はぁ…はぁ…いったい何が起こったのだ…」
「…殿下!無事でしたか…」
息を乱しながらユアンが駆け寄ってくる
「ユアン…私は問題ない。他の皆はどうだ?」
「皆、無事です」
ホッと息をつき、ラシードはシェリを探すように視線を彷徨わせた。ふと目に入ったのは尻餅をついたまま怯えた様に震えているアニタが居た
「…何を見ているんだ…」
ラシードは視線の先を辿った。目に入ったのは穏やかに微笑むシェリと一人の逞しい体つきの美丈夫だった
「…あれはっ!」
ユアンが驚愕に目を見開く。まさか、『魔具』が精霊の犠牲なしに壊れるなど思っていなかったのだ。
「…ゴルヴァ、無事でしたか…」
セオドールは安心したように微笑む。
「あれが…ゴルヴァか……っいってぇぇぇ!」
ジェラルドの呟きを聞き逃さなかったユアンが間髪入れずにジェラルドの頭を叩いた
「ゴルヴァ様、です!この馬鹿!何呼び捨て何て恐ろしい事をしているのですかあなたは!?」
ユアンの必死の形相に引きながらもジェラルドはヴァルから聞いた話を思い出しハッとする。まだ話したこともない精霊…しかも上位以上の精霊だ。どんな性格をしているか分かったものではない
微かに震えだす正直な体を叱咤し己を奮い立たせまっすぐとシェリの傍らに佇む精霊を見る
ジェラルドの叫び声に気づいたのか、精霊は既にジェラルドを見ていた。
「っ!」
シェリと共にジェラルドの元にやってくる精霊の表情は無だった。怒っているのか、それとも何とも思っていないのかすら分からない。
とうとう傍までやってきた精霊にジェラルドはもちろん、ラシードとユアンも体がこわばり緊張していた
「…ジェラルド、叫んでたけどどうかしたの?」
シェリが不思議そうに聞いてくる。ジェラルドは、まさか精霊を呼び捨てにしたことを怒られたからだ、何て事は口が裂けても言えない。ましてや、精霊が目の前に居るのに言えるわけがない
「…いっいや、大丈夫だ!」
「…そう?…あっ、精霊を縛っていた鎖は消すことができたんだ!」
シェリは嬉しそうに報告してくる。
「…シェリ、彼を救って下さりありがとうございます」
セオドールがシェリの頭を撫でながら言った。そして、精霊ゴルヴァに視線を移す
「ゴルヴァ、あなたともあろう方が何故このような事になったのです?」
ゴルヴァは少し考え口を開く
「…愛し子を探している時、下位の精霊が捕獲されていると報告を受けた。私は、すぐに居場所を突き止め精霊たちを解放するためにその場所に向かった。着いた場所は古い倉庫の様な所で、中央に檻に入れられた精霊がいた。周りに人間の気配はなかったから、私は檻に近づいた…そこまでしか覚えていない」
「…なるほど、そう言う事ですか。それならばあなたがあのような状態だったのも頷けます。しかし、人間とはなんと愚かなのでしょうか…」
静かに、しかしその声には怒りが含まれている。セオドールの声音にビクビクするジェラルドは精霊は怖い存在なのだと改めて認識するのであった
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