精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第四章 二人の愛し子

第二十六話

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アニタの一件から三か月がたった。シェリは変わらず勉学や訓練に励む日々を送っていた。変わった事と言えば、何処に居ても数人の男性を侍らせたアニタがやってくると言う所くらいだ

「こんな所にいたの」

振り向くと、腕を組んだアニタがいた

「僕に何か用でも?」

「生意気だね…役立たずのくせに」

アニタはシェリの元に来ては『役立たず』と言う。だから早く出て行けと。しかし、シェリも負けてはいなかった

「僕は殿下のご厚意でここにいます。あなたに出て行けと言われても出て行きません」

「このっ!!」

悔しそうに顔を歪め、今にも飛び掛からんばかりの勢いだ

「訓練で忙しいのですが、用件はそれだけでしょうか?」

「っ!!」

飄々とした態度のシェリに苛立ちばかりが募って行く

(初めて見た時から、気にくわないとは思っていたけど…殿下も殿下だ!どうしてこんな奴を側においているの!)

あれ以来、確かにアニタは『客人』としてもてなされていた。しかし、裏を返せばそれだけなのである。ラシードの側に常にいるのは目の前にいるシェリ。アニタもバカではない。ラシードのシェリを見る目が『愛おしい』と語っているのは分かっていた

だからこそ歯がゆいのだ。本来シェリのいる場所にいていいのは自分、そしてラシードの愛を受けていいのは自分だとアニタは信じて疑わない

「ふんっ!いつまでもそうしていられると思わない事だね!」

そう言い残しアニタは去って行った。シェリは深い溜息をつく。どうして彼はそんなに愛し子に拘るのだろうか。アニタが来てからと言うもの、シェリは毎日の様に思うのだ

『愛し子』。その言葉だけを聞けば、とても特別な事に思えるのかも知れない。しかし、そこには大きな責任が伴う事をシェリは理解していた。特別な立場には、それ相応の責任が伴うものなのだ

だから、自分が愛し子だと知りその使命の重さに、自分に出来るだろうかとしばらくの間悩んだのだ。悩んで、悩み通したが出た答えは、『悩んだ所で事実は変わらない』だった。そこで悩むのをやめ、自分に出来る事を精一杯やると決めたのだ

けど彼、アニタは『愛し子』に固執しているように思えた

「愛し子になりたい…そう言うなら何故、精霊にあんなひどい事が出来たのだろう」

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