精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第四章 二人の愛し子

第二十七話

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「シェリ」

呼ばれて振り向くと、ラシードが立っていた

「何か、悩み事か?」

不思議そうにするラシードに、曖昧に微笑む

「たいした事じゃないんだ」

「そうか…」

シェリが何に悩んでいるか想像できるが、ラシードにはどうする事も出来ない。今はまだアニタの裏にいる人物の調査がはっきりしないのだ

確実に潰さなければ、今回のような事が再び起こってしまう。それだけは避けなければならない

「人って…人って不思議な生き物だね」

「…不思議、か。シェリから見ればそうなるのかもしれないな…」

「ラシードは違うの?」

「人は…傲慢な生き物だと、私は思う。もちろんそうでない人間もいるが、傲慢な人間が多い」

「…そうか、そうなんだね」

シェリは生まれてから精霊と共に生きてきた。そしてラシードに出会った

ラシードと出会って、人は暖かいのだと初めて思えた。だけど、アニタに出会って色んな複雑な感情がある事を知った

人は…人間は不思議な生き物なのだろうとシェリは改めて思う

そして思うのだ、自分は人間だといっていいのだろうかと

赤ん坊の頃からの事も鮮明に覚えている自分は、周りと比べてその事だけでも異質なのだと理解していた

果たして自分は人間なのか。最近のシェリはその事で頭が一杯なのだ

もし、自分が人間でないとしたら、ラシードの側にいていいのだろうか。自分よりも、アニタが側にいる方がいいのではないだろうか

人間よりも精霊に近い存在だとしたら、シェリとラシードは共にはいられないのだ。今すぐにでは無いにしろ、いずれ別れる事になる

漠然とその事だけは理解していた。いくら好意を持っていたとしても、離れなければならない運命ならば、今の内に離れた方がいいのではないか

考えれば考えるほど、そう思えてならないのだ

出会うべきではなかった。着いてくるべきではなかったのだと

「シェリ…?」

ラシードが心配そうにシェリを見つめていた

「何でもないよ、大丈夫」

シェリはラシードに微笑みを返す。暗い思いを隠すように
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