精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第四章 二人の愛し子

第二十八話

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(なんだか最近、とても気が重い…色々な事が一気に起きたせいかな…?)

ここ数週間、シェリは気だるい体を無理に動かし勉学や訓練を行っていた

今日も体に無理をさせ、講義や訓練をこなした後だった。フラフラとする体で、自室まで戻っていた所だ

(後…少し…)

自室までもう少しの距離まで来たとき、シェリは激しい頭痛に襲われた

息も出来ない程の痛みに襲われ、シェリはその場に倒れてしまう。周囲に人の気配などなく、誰もシェリに気づく事はない

(い、たい!痛い!だ、誰か…)

薄れ行く意識のなかシェリは自分を呼ぶ声が聞こえた気がした

『見つけて…私を助けて』



――――



(ここは …僕は一体)

シェリは何もない真っ暗な部屋にポツンと佇んでいた。辛うじて自分の指先が見えるか見えないか程に暗く、先に進むのを躊躇させる

『愛し子…』

(この声は…)

突如、暗闇に響いたか細い声は、シェリが意識を無くす直前に聞いた声だった

『どうか私を見つけて…助けて…』

その声は、力なく注意して聞いていないと聞き取れない程に弱々しかった

(君は誰?何処にいるの?)

『いやだ!いやだ!』

シェリが言った瞬間、声は激しく拒絶を始める

(どうしたの!?君は、)

『痛い!痛い!痛い!』

悲痛に叫ぶ声に、シェリの言葉は届かない

(っ!くっ…あた、まがっ割れそうに痛い!)

『いやだ!痛いよ!苦しい!!』

シェリは声の尋常ではない叫びに焦りを感じる。今この時も、声の主は痛みと苦しみにとらわれ続けている。早く、一刻でも早く助け出さなければ。シェリはその思いで頭が一杯だった

(き、みは、何処にっいるの!?)

『いやだ!いやだ!いやだ!痛いのはもう嫌だ!』

(お、願い!おし、えて!たす、けにいくから!)

必死に言葉をかけるシェリ

『…うそつき』

その言葉を最後にシェリの意識が落ちる



――――


「…リ!…シェリ!」

ボーッとする意識の中、ラシードの声が聞こえた

「シェリ!」

うっすらと重たい目を開けると、目一杯にラシードの心配そうな顔が映る

「ど、したの…?」

掠れた声でシェリは、ラシードに聞いた。何故そんな顔をして自分を見ているのかと

「それは俺の台詞だ!…何故あんな場所で倒れていたんだ?何があったんだ?」

「倒れ、ていたの…?」

「覚えていないのか?」

シェリは言われた事を考えた。そして、突如頭痛に襲われ意識をなくした事を思い出す

「頭痛が、して…それで…っ!」

あの暗闇での事を話そうとした瞬間、また頭痛がし始める

「シェリ!どうしたんだ!痛むのか!?」

「っ!あ、っ痛、い!」

痛みは激しさを増し、シェリは再び意識を落とす

「気を失った様ですね」

「一体何が…」

「…だが、きっとシェリにとっていい事では無いのは確かだな」
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