精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第六章 精霊の愛し子

第三十五話

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『…やはり。しかし何故だ?愛し子にそんな力など無いはずだ』

アティアスの言葉に、ディノスは嬉しそうに言う

『それはね、シェリの魂が稀有だからだよ』

『それだけでは説明がつかないと分かっているだろう?』

『ふふ、全く。変わらないねアティアスは。恐らく、本来のシェリの魂の器として生まれたこの体に、別の魂も入って生まれてしまったのだよ。そして、魂が融合しようとしている』

『やはり…』

『そしてその魂は「人」ではない物。本来、魂の概念が無く永遠に生きる者が、悪戯に生み出した物。故に、人の体では制御が難しいのだ』

ディノスの言葉に、ある光景が蘇る

『…やはり、あの方が関わっているのか…?』

最悪の考えだった。出来ればそうであって欲しくない、最悪な答えだ

『まず、間違いないだろうね。しかしねぇ、それだけでは無いと、私は考えているよ』

『どう言う事だ』

『シェリの魂には、私達でも解らない複雑な事が絡み合っている、と言うことさ』

ディノスの言葉に、アティアスは難しい表情で考え込む

『いずれ分かる事だ。今はシェリが壊れてしまわない様に、しっかりと守る事が大切だ。私は関与できない、口惜しい事にね。だから、君たちに託すしかない。分かっているね?』

『分かっている。他の精霊王も目覚め、シェリの元へやって来るだろうからな。私だけでは難しいが、他の者もいるなら、何とかなるだろうし、何とかするさ』

アティアスは何処か悔しそうに、そう吐き捨てた

『うむ。精霊王が目覚めれば、竜の子らも目覚めるだろう。シェリの守りに十分だと思うぞ』

ヴァルが補足するように言った。2人の言葉に満足したディアスは、次元の裂け目に入って行く

『期待しているよ。それでは』

そう言って、ディアスは時の次元へと帰って行ってしまった

ディアスが帰った事で、止まっていた時が動き出す

『まったく…変わらず憎たらしい奴だ』

『まぁ、偏屈な奴だからな。しかし、誰よりも神に近く公平な奴でもある。此度はディアスが出て来てくれて助けられた』

『……認めたくないが、他の精霊王が束になっても、あいつにはかなわないからな』

悔しそうに呟くアティアス。守りたい気持ちはあっても、どうにも出来ない事もある

生まれ持った能力や力は、変える事は出来ない。それぞれ役目があり授けられたものだから。大きすぎる力の代償として、全てとの関わりを禁じられているディアス

それは孤独との戦いでもあるだろう。彼が本気を出せば、そんな制約など守らずともいい。それだけの力を持った彼は、制約を忠実に守り続けている

ディアスがいるからこそ、生命は時を刻み歩む事が出来るのだ

『我々は我々に出来る事をするだけだ』

今度は必ず守って見せる。そう心に誓いを立てるのだった
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感想 8

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みんなの感想(8件)

マリア
2023.06.23 マリア

とても面白くて一気に読んでしまいました!もう更新はされないのでしょうか?
楽しみに待っています!

解除
mie
2021.05.29 mie

初めてコメントします。
面白くて一気に読みました。
続きが気になって仕方ありません!
更新を首を長くしてお待ちしています。

解除
yumi
2020.04.05 yumi

続きが気になる!!
更新頑張ってください!!!!

解除

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