遥か闇なる世界 ~世界の絶望に立ち向かう黒神子の少女と、真の勇者になる事を夢見る心優しい青年の物語

藤田作磨

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第二章 黒神子・妖精喰いのヨーミコワ編

2-30.新たな仲間

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              2ー30.新たな仲間


 日が落ち、沈みゆく太陽に似た惑星と変わるかのように反対の方角からは星空と共に黄色い光を放つまるで月に似た惑星が夜空へと輝く。

 星々の光を浴びながら木の上で佇む蛾の妖精のルナは悲しい笑顔を夜空に向けるとただ一人星を眺める。だがそんなルナの後ろから行き成り男の声が響く。

 その音も気配もない、いきなりの接近にビックリした蛾の妖精のルナは直ぐさま後ろを振り返るが、そこにいたのは里に帰ったはずの狼魔族のゴンタだった。

 ゴンタは一人木の上で黄昏れるルナの隣の木の枝に座ると夜空を見つめながら話しかける。

「よう、こんな寂しい所でなに一人で黄昏れてんだよ。なんか考え事か。お前の爺ちゃんとやらがかなり心配していたぞ」

「なんだ、ゴンタか、びっくりさせないでよ。でもなんでここにいるのよ。もう自分の里に帰ったんじゃなかったの?」

「そのつもりだったけどな、少し気がかりな事があったからお前と話をしに来たんだよ」

「私と……一体なんの話かしら?」

「ルナ、俺の代わりにこの世界を見て来てはくれないか。お前はきっとラエルロットと共に旅に行かないといけないような気がするんだ」

「なんで私がラエルロットと旅をしないといけないのよ。私にはラエルロットと旅をしなけねばならない理由はなに一つとして無いし、そもそもラエルロットは他の妖精とパートナーを組んだ方がずっといいわ。それに最初から私は行く気はないしね!」

「いや、そもそもラエルロットが黒神子レスフィナの眷属でいる限りは彼のパートナーになってくれる妖精は恐らくは一人もいないだろうし、それは人間の冒険者達に忌み嫌われている蛾の妖精も一緒だよな、なら迷う必要はないだろ。お前らは出会うべくして出会った……そう運命の神様が決めた最強のパートナーだろ。そうこれは他の誰でもない、ルナ……お前しかラエルロットの妖精は務まらないんだよ。そしてお前のその力は、戦乱渦巻くこの崩壊しつつある世界には必ず必要になる力だ。何か世界を揺るがすとてつもないことに挑もうとしているラエルロットとレスフィナの姐さんの大きな手助けになりえる力だ。そうだぜ、ルナ、お前は俺とは違ってこの世界には絶対に必要な存在になるはずだ。そしてその絶対に必要な邪妖精の力は正しい正義の心で力を振るうラエルロットの為に使うんだ。あいつなら必ずお前を暖かく迎えてくれるだろうし、非人道的な行いは絶対にしないはずだ。大体あいつはそう言うのとは程遠い、甘ちゃんの正義馬鹿だからな。なら絶対に後悔はさせないはずだ。そのお人好しをお前がしっかりと監視して、助言し導いてやればこの先ラエルロットが生き残る確率もグーんと上がるんじゃないのか。そういう意味でもお前の参加は必要だろ」

「確かに……そうだけど……」

「それにお前だって本当はあいつらと一緒に旅もしたいし、その人柄も認めているんじゃないのか。だからこそそんな寂しい思いを、後ろ髪を引かれる未練を断ち切る為にそんな素っ気ない態度を取っているんだろ。本当はあいつらと一緒に旅をしたいことは分かっているんだ。なぜならお前に、広い世界を見に行こうと誘ってくれた初めての仲間だからだ。だからお前は死ぬほど嬉しかったんだろ。そんなのは分かっているんだよ。だからお前の爺ちゃんは行ってこいと、その目で世界を見てこいと言ってくれたはずだ。それがお前の為になるとあの長老は分かっているからだ。その運命の勇者がお前の前に現れたのなら、それはもう行くしかないだろ。あのラエルロットは必ず近い将来本物の勇者になれる器を持つ男だ。ならその黒い鎧を纏う勇者のパートナーに慣れるのは、同じく黒い邪妖精の衣を身に纏う事のできるお前しかいないだろ。これはまさに運命の出会いだと俺は思うけどな」

「運命の出会い……ラエルロットと私が……」

「それとも本当にあいつらとは一緒に旅はしたくはないと言う事か。確かにあいつらの旅は物凄く困難で危険極まりない旅になるのは明白だからお前に無理には勧められないがな。だがだ、そんなラエルロットとレスフィナの姐さんがこんな事を言っていたぞ。自分達が敢えて迫害覚悟で着ている黒は決意の色なのだと。どんな悪意をも素直に受け入れ、その悪に挑み正し、そして共に解決して行く覚悟の色なのだと。だからレスフィナの姐さんもラエルロットもどんなに忌み嫌われようとその黒を隠すつもりはないのだそうだ。本当に勇気のいる事だし凄い事だよな。なぜなら自分達は危険極まりない謎の存在だと回りの人達に技と宣伝して歩いているような物だからだ。こんな愚かな行いは誰にも真似はできないと言う事だ。それだけあいつらの覚悟は凄いと言う事なんだよ。そんな危険極まりない彼らと旅をすると言う事は、また新たな迫害の日々が更に強まると言う事になる。だから無理には進められないのだが、さてどうする。やっぱり彼らと旅に行くのは躊躇するかね?」

 まるで心の内を煽るかのような言い方をする狼魔族のゴンタに、蛾の妖精のルナは下を向きながら暗い表情でボソリと呟く。

「行きたい……本当は行きたいに決まっているじゃない。私達蛾の妖精達はラエルロットとレスフィナにその命を救われたんだからあの人達のためにこの命を捧げることは惜しくもなんともないわ。それだけの恩と借りをあの二人には貰っているんだから彼らの助けになってやりたいのは寧ろ私の方よ。でも……黒神子ヨーミコワがいなくなったとはいえ他の心ない亜人族達や人間や危険生物とかがまだまだこの近くには沢山いるわ。だから蛾の妖精達が別の隠れ里にみんな無事に移動をする事ができて、その地で生活もそれなりに安定するまでは私が蛾の妖精達を守ってやらないといけないの!」

「なるほど、ルナが旅に出れない本当の理由が聞けてよかったよ。わかった、なら俺がお前の代わりに蛾の妖精達を守ってやるよ。それでいいだろ」

「へぇ?」

 ゴンタのいきなりの提案に蛾の妖精のルナは、びっくりした声を上げると言葉に詰まる。それだけ普通ではあり得ないことを……想定されてはいない事を言われたからだ。

 蛾の妖精のルナは差し出された提案に耳を傾けるとその言葉の真意を聞く。

「それは一体どう言う事よ?」

「どう言うことも何も、言葉の通りだよ。暇な時にでも時々蛾の妖精達の様子を見に行って俺が蛾の妖精達の生活を守ってやると行ってんだよ。あいつらは何かと俺のこれからの生産活動に利用できそうだからな、その利害の一致で俺は彼らを守ることに決めたんだよ。作物への花粉の受粉や、蜂蜜を集めたり、危険生物の活動の動向を空の上からの偵察にも使えるからな。そのついでだ」

「ゴンタ、あんた……」

「これで心おおきなくラエルロット達の旅に動向ができるだろ。お前の弟・妹達や長老の事は気にするな。俺が責任を持ってお前の留守を守ってやるから、お前はこの広い世界を見てくるんだ。最近黒神子達や異世界勇者達が激しく活動しているその訳を、遙か闇なる世界の中心を目指そうとしている黒神子レスフィナ姉さんの本当の真意をお前がその目で探ってこい。世界の異変をラエルロットと共に感じてこい。それは多分……邪妖精の女王の末裔だというお前に課せられた使命だと俺は思っているよ。お前はラエルロットと共に行くべきだ!」

「私がラエルロットと……一緒に旅を」

「ふ、勘違いするなよ。俺はいつかこの辺り一帯を豊かな土地にして全ての面で支配をする、権力者を目指す男だぜ。そんな俺の目標が……ライバルが、俺の知らない所で誰にも気づかれないウチに簡単に死なれちゃ困るし、正直そんな事になったら俺のモチベーションも下がるんだよ。あいつとはまたいつか決着をつけると約束しているからな。本当の勇者になって戻ってきたあいつを倒すのはこの俺の悲願でもあるからよ。だからこそお前にあいつらを託すんだよ。それにしっかり者のお前があの二人に同行してくれたら少しはあの二人も挫折をせずに旅に邁進できると思うんだ。何しろレスフィナの姐さんはしっかりしているように見えてどこか抜けてて浮世離れしているし、ラエルロットはその正義のためなら後先を考えない感情型だからな」

「確かに……そうかもね」

「だから行ってこい。後ろめたい過去や自虐的な気持ちは今ここで捨てていけ。お前は後ろを振り返らずに前を向いてこの危険極まりない旅に挑戦するんだ。まだ見ぬ未知なる出会いと新たな冒険が待ち構えているドキドキハラハラするこの緑あふれる世界の謎に真剣に挑んでこい!」

「わかった、そこまで言うのなら私、行ってくるわ。お爺ちゃんには時々手紙を書くからと行って置いてね。そしてゴンタ、本当にありがとう!」

「ああ、行ってこい!」

 お礼を言いながら夜空へと消えて行く蛾の妖精のルナの姿を目で追う狼魔族のゴンタは「やれやれ、世話を掛けさせやがって……まあ、頑張れよ、ルナ!」と言いながら小さく呟くのだった。


                *

 日はすっかり落ち、夜空が見える星々の下でラエルロットとレスフィナの二人は荷馬車の前で焚き火をしながら黒パンを焼く。

 この地方の旅には欠かせない保存食とも言うべき黒パンは長期の保存に適した食べ物であり旅ではよく食べられる主食だが、そのままでは食べられない。余計な水分を飛ばして乾燥させているせいか長期の保存には適しているが、その性質上かなり不味くしかも石のように硬いのだ。
 そんな非常食とも言うべき黒パンの表面に万遍なく水をまぶして焚火の火で蒸すラエルロットは硬い黒パンのキジを柔らかくする為に火の調整に注意を払い、レスフィナの方は鍋に入れた粉末状のコーンスープをかき混ぜると食べられそうな野草や残りのクズ野菜を一緒に煮込む。

 因みに犬人族のシャクティは荷馬車の荷台の中で荷物の整理中だ。
 紛失している品々はないかという確認や荷物の整理に忙しいのだ。

 そんな荷物の整理に忙しいシャクティは全ての荷物の確認後はウマによく似た生き物でもあるウマウマに葉っぱや藁の餌を上げる予定らしいが、もう日がすっかり暮れて夜道の移動は困難なので今夜はここでラエルロット達と共に夜を明かす算段だ。

 本当ならもう既にこのままノシロノ王国を目指しても良いラエルロットとレスフィナだが、シャクティに「行く道は一緒なんだからこのまま荷物の整理と荷馬車の警護を手伝ってくれたら、いい格安の宿を紹介してあげるわ」という言葉を聞き、ラエルロットとレスフィナはその提案を承諾する。
 元々急ぐ旅では無いのでノシロノ王国に着いたら暫くはその区画で宿探しをしないといけないと思っていた事もあり、ラエルロットとレスフィナは迷わずその手伝いを引き受けたのだ。

 そのシャクティの提案で今夜は無理をせずに荷馬車の傍で野宿をしてから朝一番でノシロノ王国に行くとの話を聞き、ラエルロットとレスフィナの二人は食事の準備をしながらシャクティが荷台の中から出て来るのを静かに待つ。

「ノシロノ王国に着いたら先ずは(シャクティの紹介で)格安の宿を借りて拠点を作ってから、俺は第八級冒険者試験の再試験の受付を済ませに行くよ。その後はバイトを探すかな。レスフィナはどうするんだ?」

「私は……ノシロノ王国の中にあると思われる古代の遺物が一体この辺りにはいくつあるのかを密かに調査します。後は自作の薬草を薬屋に売ったり、山に言って貴重な野草や鉱物を採取してそれらを売ったり、魔物の退治の依頼をこなしたり、誰かが設置した呪いを解いたりといろいろです」

「そうか、レスフィナは黒神子と呼ばれているだけあって職業は神子だからな、その神力は本物か」

「私達、遙か闇なる世界の黒神子の力は、女神から貰う力ではないので神力ではなく、特殊な魔力ですが……でもまあ、似たような物です。なんであれ力は力です」

「そ、それとこれはあの黒神子ヨーミコワが言っていた事なんだが、彼女が言うには、俺には冒険者になれない呪いが掛かっているらしいんだが、レスフィナ……お前はその事を知っていたのか?」

 そのラエルロットのいきなりの質問に黒神子レスフィナは数秒ほど黙っていたが、仕方が無いとばかりに静かに話し出す。

「最初にラエルロットさんと出会った時は気付きませんでした。でも何かの強い意志にも似た力が、何かの信号を誰かに送っている事だけは分かりました。その誰かが冒険者八級試験を受けに来たあなたの邪魔をしている物と思われます。それは実地や技能や答案筆記による不正な操作かも知れないですし、何かは私にも分かりません。ですがラエルロットさんが第八級試験の会場に行くと、その報告がダイレクトに誰かに送信されるようです。この呪いはそういう呪いです」

「一体誰が俺の第八級冒険者試験を……いいや、俺が冒険者になるのを拒んでいるんだ。そんな理不尽な話はないだろ!」

「確かにそうなのですが、この呪いは呪いと言われる物では無いと言う事だけは先に行っておきます」

「呪いじゃないんだとしたら一体なんだと言うんだよ?」

「これは間接的にあなたを何かから守るための仕組みのようです。この術式からは呪いのような物は一切無く、ただの強い願掛けのような願いが施されているみたいです」

「願掛けだと、まさかハル婆ちゃんじゃないだろうな」

「いいえ、違います。あなたの祖母ではないです。もっと古い物です。それにこのあなたを守る願いは聖女の力による願掛けですから、ハルお婆さんでは無いと思いますよ」

「そしてその聖女は、俺が冒険者八級試験を受けに来る度にその存在を察知して、陰から手を回して俺が冒険者になるのを今の今まで阻止してきたのか。ちくしょう、でも一体なぜそんな事をされないといけないんだ。こっちはその聖女様とやらとは面識も、何処の誰かも全く知らないんだぞ。本当に勘弁してくれよ、てな話だぜ!」

「ええ、だから余計な事は言わなかったのです。だってあなたに施されている物は……それは呪いではありませんから、あなたの冒険者八級試験の結果を操作しているその聖女を先に見つけないとどうすることも出来ませんからね。そしてその者には恐らく悪意のような物は一切感じませんでしたから、しばらくは様子を見ることにしたのです。その真意が分からなくてはその願掛けを無闇に外すのはためらわれましたからね。でもその事に気付いてしまったのなら教会に行ってその呪いと言う名の願掛けを外して貰うことは、恐らくはできますよ。その願掛けを外せば、あなたが冒険者八級試験を会場に受けに来たとしても、恐らくその聖女はあなたの事には気づかないでしょうからね」

「くそ、一体何処の誰かは知らないが、ノシロノ王国に着いたら真っ先に先ずは教会に行く必要があるようだな。つまりその呪いを付けたままだとその何者かに俺がどこで何をしているのかが向こうには筒抜けだと言う事だな。全く迷惑な話だぜ!」

 そんな話をしていると回りに香ばしい、いい匂いが立ち込める。どうやら黒パンが上手に蒸し上がったようだ。それと同時にコーンスープの方も焦げずにコトコトと湯気を上げている。その状態からもう食べ頃だと悟ったラエルロットとレスフィナは木工の細工でできた食器とスプーンを取り出すと、お玉で暖かなコーンスープを取り分けていく。

「それにしてもシャクティの奴、遅いな。一体何をしているんだ?」

「ちょっと私、行って見てきましょうか」

「いや、大した距離じゃないんだから、ここから聞こえるだろ」

 ここからでも充分に声が届くと思ったのかラエルロットは大きく息を吸い込むと大きな声で荷台の中にいると思われるシャクティに向けて叫ぶ。

「お~い、シャクティ、もう夕ご飯が出来たぞ。早く来ないと無くなっちまうぞ!」

 そうラエルロットが声を掛けたその時、後ろの耳元で誰かが囁く。

「当然私の分はあるんでしょうね!」

 その少女の声にびっくりしたラエルロットとレスフィナが思わず後ろを振り向く。そこにいたのは万遍の笑顔を向けながら宙に浮く蛾の妖精のルナだった。
 蛾の妖精のルナはその華奢な細い腰に両手を添えるとラエルロットにその可愛らしい顔を近づける。

「ラエルロット、私もあなたの旅に動向するわ。だから連れてって頂戴、あなたが目指そうとする、レスフィナとの旅の果てへ。そしてあなた達が向かおうとしている最終目的地でもある、遙か闇なる世界の闇の中心に。私もあなたが果敢にも挑もうとしている勇者道の理想に、険しい頂きに黙ってついて行くから、一緒にこの広い世界を見に行きましょう。私はあなたを絶対に見捨てたりはしないから!」

「ああ、やっぱり来てくれたか。俺は信じていたぞ。なら一緒に行こうぜ。旅は始まったばかりなんだ、まだ見ぬ危険と隣り合わせの冒険が、まだだれも知らない謎と好奇心が、そしてまだ出会ったことの無い様々な新たな出会いがこの先俺達には沢山待っているんだ。そりゃ時には悲しい事や、挫折しそうな時や、苦しい時もあるとは思うが、それらは全て俺達には絶対に必要な尊い経験となるだろう。だからルナ、俺達と行こうぜ。その無限溢れる世界に!」

「そうですわね、ルナさんが来てくれたらいろんな意味で便利ですし、心強い戦力にもなりますから、私も大歓迎しますよ」

「ラエルロット、レスフィナ……これから、よろしくね!」

 そう和やかに言うと蛾の妖精のルナは、何かに吹っ切れたような笑顔で可憐に笑うのだった。

                *

「……。」

 そんな和やかなムードに包まれている三人の輪を荷台の中の隙間から静かに覗く者がいる。自ずと知れた犬人族の神官見習いのシャクティである。

 シャクティはそんな三人を真剣な目で見つめると小さく溜息をつく。

「はあ~、まさか偶然にもあの人の息子さんに出会ってしまうだなんて、これも何かの運命なのでしょうか。しかもその傍らにはあの宿敵とも言うべき黒神子レスフィナを名乗る謎の少女がなぜかいつも隣に控えている。でもそのレスフィナも昔と違ってその見た目も性格も以前とは全く違うようですし、どうやら以前の記憶も全く無いようです。ですが果たしてそのまま彼女の言葉を信じていい物でしょうか?」

 覗いていた荷台の板の隙間から顔を離すとシャクティは更に小言を呟く。

「そしてラエルロットの方は、その最初の旅の目的地はノシロノ王国らしいですが、と言う事は完全に住み慣れた村を出たという事になります。そしてラエルロットが明日に行くノシロノ王国では第八級冒険者試験の再試験が行われる予定のはずですから、その再試験をラエルロットは受けに行くとか言っていましたね。と言う事は私としてはこの展開はあまり好ましい状況では無いと言う事です。この事を知ってしまった以上はやはりあの人に知らせないといけないと言う事なのでしょうか。早くノシロノ王国に戻ってあの方にこの事を知らせないと……私が怒られちゃいますからね。本当に難儀な事です」

 犬人族のシャクティは素早く髪型と眼鏡を手で直すと、まるで何事も無かったかのようにラエルロットとレスフィナ、そして新たな仲間となった蛾の妖精のルナの元へと急ぎ向かうのだった。


                             第二章終わり。
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