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どうしようもない

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『第2の街シドネス』

33.意思≠影=自分

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  しばらく経ち、ダイルから鞘を受け取った。
  前回と同じデザインの【生物の悪戯鞘】だった。なんでも「統一した方がカッコいい」やら何やらとダイルが豪語していたが、気にする必要もあるまい。

  最近はスキル進化ラッシュの為、かなりスキルポイントがキツイ。たぶんそう設計されているんだろうが…。《闇魔法》もダイルの鞘を待っている間にレベルカンストしてしまったから進化しなくては…ホントにポイント出費がかさむなぁ……

 腰の後ろにクロスを描くように鞘を二つ取り付けながら、スキル構成ウィンドウを開く。そこには、


プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
 《ダガー・二刀流》Lv5(↑4UP)《武術》Lv19
《闇魔法》LvMAX(↑8UP)(進化可能)《熟練盗賊》Lv21
《上級隠蔽》Lv4(↑3UP)《空間機動》Lv25
《万能眼》Lv29《鍛冶》Lv30《採掘》Lv17《遊泳》Lv50

控えスキル
《釣り》Lv39《調薬》Lv30

スキルポイント:86


「ホントにラッシュだな……」

  最近、目にし過ぎているせいでもうあまり見たくない(進化可能)と言う文字が浮かび上がっている。またスキルポイントを消費するのか…

 そんな事をネガティブに考えながら、進化一覧を表示させる。


 【《闇魔法》進化・派生一覧】
  ―通常進化―
 《上級闇魔法》
  ―特殊進化―(通常進化の強化版)
   Nothing
 ―条件進化―(条件達成時のみ表示)
  《影魔法》
  詳細:《上級隠蔽》を代償とし、《闇魔法》と統合させる。


 「……わーお」

  条件進化に随分とギャンブラーなスキルが出てきた。どうやら《上級隠蔽》を合成させることにより、違うスキルへと生まれ変わらせることが可能なようだ。

  これはかなり迷うな……《上級闇魔法》と《影魔法》か……完全に面白そうなのは《影魔法》なんだよなぁ…いや、そもそも俺自身が楽しめればそれでいいからなぁ…だが、《上級隠蔽》が無くなるのは……

 そんな具合で、しばらく悩んだ末に選んだのは―――、

 「進化っと……楽しく行こう」

  《影魔法》である。
  《上級隠蔽》が無くなってしまうのは酷く心苦しいが、致し方ない出費と言う事で許してもらいたい。

 「とりま……」

  ふらふらと歩き出した。


  * * * * * * * * * * * * *


  ピィィィィィィィ!

  砂浜に甲高い笛の根が響く。
  その音は不快な音ではなく、逆に心地よささえ感じてしまう程の不思議な音だった。

  そんな音に反応してか海原から一匹の子鯨が姿を現した。子鯨は嬉しそうにこちらを向くと、擦り寄って来る。

 「よう、ルー。『孤島』…だっけ?連れてってくれないか」

  甘えてくるルーに向かって俺はそう言った。




 「もうすぐ着くか?」

 「――――♪」

  ルーの上で焼いていた蟹の甲羅から香ばしい匂いが漂ってきたのを感じながら問うと、返事が返ってきた。どうやらもう着くらしい。甲羅の中の蟹味噌等を急いで食べて準備をする。うまっ…

「お、あれか?ルー」

 「――――♪――♪」

  そう言ってすぐ近くに突然見えてきたのは、島だった。いや、『孤島』と言う名前らしいから孤島と言った方が良いか。

  そんな事を考えていると、到着した様でルーの陽気な声が俺の鼓膜に届く。ジャンプをしてルーの背中から降りる。ルーが残念そうな声を出したので撫でまくっておいた。

 「また帰る時は笛吹くから」と、そう言うとルーは「分かった」とでもいう様に海へと潜って、その姿を海の奥底へと消していった。

 「孤島……ね」

  静まり返る孤島に独りぼっち。
  なんとなく映画とかでありそうな設定だが、多分売れないだろうな。それに―――、

 「こんなに敵がいるんじゃ、主人公もやられるに決まってる」

  目の前の森から出てきた数十匹のモンスターを視界に映しながらそう呟いた。

 「スキルの練習台になってもらうぞ」

  2本のダガーを逆手持ちで構え、目の前のモンスターと対峙する。出来る限り近づかれる前に処理しなくては。

 「〈影縫い〉」

  俺がそう発した瞬間、ノアと言う存在の影が地面を駆け出す。つまり、影が伸びたのだ。その影は一瞬で猿型のモンスターの近くまで到達、そして影がぬるりと地上に少しだけ具現化し、猿の脚に触れた。刹那―――――

 猿は影にのみ込まれ、しばらくもがいて死んだ。

 「想定外の強さだな…戻ってこい」

 『自分の元に帰還』するように思考すると、影は地面を這ってシュルシュルと巻き尺の様に俺の影に戻った。その影はまるで意思でもあるかのようだ。更に言うとなぜかその影には俺の頭部の影付近に紅い色をした丸が二つある。まるで《万能眼》の”深紅”を使った時の俺の様な…そんな感じだ。

  そんな事を気にしている場合じゃないか。

  目の前に向き直ると、モンスター達が怯えたようにこちらを見ていた。まあ、当たり前か。謎の方法でお仲間が一人、突如として死んだんだ。迂闊に近づけるわけがない。まあ、それなら。

 「こっちから近づくまでなんだけどね」

  〈瞬発Ⅲ〉を発動し、一気に近づく。そして、そのままの勢いを保ち―――、

 「〈フィフススラッシュ〉!」

  アーツを放つ。残念ながら、両手に武器を持っているからと言って10回攻撃にはならない。そこは残念だが、プレイヤースキルで補うしかない。

  5連の刃がモンスター達を襲う。白色の軌跡を残しながら、傷を造り出す。

  ボカン!

  モンスターにつけた傷の一つが爆発を起こした。その爆発を喰らったモンスターはまるで内側から破裂したようなエフェクトを残し、粒子となった。多分だが、【邪魂を纏いし『闇夜』+3】の特殊効果「爆発抉り」の結果だろう。

  中々に強力だ。確率は低いようだが、俺が使うのはスピード系武器なので少しは確率底上げが可能だろう。

  《武術》なども使いたかったが、残念なことに《武術》の現在使えるアーツは〈武術の基本〉という基本能力値を底上げするパッシブスキルだ。仕方ないので〈ストレートⅢ〉を放っておく。

 「がッ――――――⁉」

  アーツ使用直後に右方向から火魔法が飛んできた。横っ腹にモロで受けた。
  流石に魔法のスピードには〈危険信号〉も反応できないこともあるか…流石に頼り過ぎていた面もあるしな…反省点だ。

  しかし…やはりきついな…《短剣》と言う種類の武器を持っている時点で回避率が1.5倍避けにくくなっている時点で相手に大きなアドバンテージを与えてしまっている。酷く不利な状況だな。

  クールタイムが終わった〈影縫い〉を発動して、敵を惨殺しながら思考を繰り返す。影がターゲットを殺してコチラに戻って来る。地面を這って、意思を持って。

  そんな時、戻ってきている影に槍が刺さった。きっとモンスターの槍だろう。槍は影が移動中の地面にズブリと勢いよく刺さったのだ。次の瞬間―――、

 「―――ぁぐッ⁉」

  不意打ちの痛みが俺を襲った。「どうして」そんな言葉が俺の脳味噌をグチャグチャに掻き回しながら徘徊する。

  影、有能、想定外、ダメージ、刺さる、自分、繋がっている、地面、這う…

 様々なピースが頭に出現しては、合わないピースとして消えていく。そして、やっと当てはまったパズルの完成図は―――、

 「ありえない強さだと思ったら…そう言う事か……!なるほど…笑えるな」

  口元から零れる笑みを必死に隠して、言葉を紡ぐ。

 「影もダメージ判定があるという訳だ」

  そりゃそうだ。そうじゃなかったら逃げ続けても勝てる。逃げている間に影を出して一人ずつ殺していけば良いんだ。そりゃ、強い。

 「……ははッ……」

  ああ、駄目だ。笑っちゃ。楽しすぎる。でも駄目だ駄目だ。笑っちゃだめだな。

  HPは……10%切ってるな……どうやら影にもクリティカル判定やらウィークポイントがあるらしい。影の頭を攻撃したら俺の頭の攻撃したことに、影の心臓を貫いたら俺の心臓を貫いたことに。とんでもないギャンブルスキルだな。

 「ああ、面白い」

  ―――――――――だからこそ、燃えるというものだ。

  そういや一つ試したいアーツがあったんだ。
  それの条件はHPが15%以下じゃなくちゃ発動できないっていうやつだったし、こういう相手が強者だったり数が多かったりする、所謂”自分のピンチ”な程効果が上がるアーツだ。今回の状況に丁度いい。

  さて、それじゃ―――――、

 「ガアアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」

  ”全身全霊”で、”命を賭して”、”自分の命”と”一時の快楽”を天秤に乗せて、叫んだ。

  身体が軽い。自分が軽い。心が軽い。命が――――軽い。

  翼でも生えているんじゃないかって錯覚してしまう程だ。まだ夜は来ていない。夜限定のあの動きやすさなんて比べ物にならない。

  自分の身体に紅と蒼のオーラがそれぞれ混ざることなく、お互いの存在を主張し顕現する。

  特殊アーツ、〈弱者の叫び〉が発動した瞬間だった。

  地面を蹴ると、モンスターの目の前まで”一瞬”で移動できた。武器を振ると首が”一瞬”で吹き飛んだ。一瞬、一瞬、一瞬。一瞬で埋め尽くされた世界だ。唯一遅いモノと言ったらモンスターの攻撃くらい。

  ―――頭を刺して1匹、
  ―――頭をグルンと2匹、
  ―――脇腹を綺麗に3匹、
  ―――目玉を刳り抜きつつ4匹、
  ―――背後からクロスに5匹、
  ―――逃げている所に6匹、
  ―――怯えた面の7匹、
  ―――諦めた顔をしてる8匹、
  ―――馬鹿正直に心臓で9匹、
  ―――詠唱中の口の中に10匹、
  ―――仲間を助けてるところで11匹、
  ―――何かを守っていた偽善者で12匹、
  ―――気絶したお前で13匹、
  ―――助けられた直後に14匹、
  ―――涙を流して15匹、
  ―――状況が把握出来てない16匹、
  ―――殿の17匹、
  ―――森に逃げ遅れた18匹、


  ―――絶望した顔で――――――最後。


プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
 《ダガー・二刀流》Lv10(↑5UP)《武術》Lv22(↑3UP)
 《影魔法》Lv6(↑5UP)(New!)《熟練盗賊》Lv23(↑2UP)
 《空間機動》Lv29(↑4UP)《万能眼》Lv33(↑4UP)《鍛冶》Lv30
《調薬》Lv30《採掘》Lv17《遊泳》Lv50

控えスキル
《釣り》Lv39

スキルポイント:57

【二つ名】
 終焉スキラー・終焉兎

 【称号】
 失敗の経験者・因縁を果たす者・真実を知る者・《怠惰》なる大罪人・歩く厄介箱・不屈・GM泣かせ・禁忌の大罪人





 * * * * * * * * * * * * * 

 《影魔法》
 影を操りし魔法。
 伸ばし、縮め、圧縮し、押し殺し、自分を形成する。なんでもござれの万能魔法。闇から影へと。裏を欠け。使用者次第で何にでも化ける。最弱の魔法へ、最強の魔法へ。無限の可能性を体感すべし。

 〈弱者の叫び〉  アクティブ 
HPが15%以下の時、全身全霊で叫ぶことにより、発動する。筋力と敏捷性を爆発的に上げることができる。相手が自分より強者の場合、その実力差と比例するように上昇率は上がっていく。このアーツを使用中に、一撃でも攻撃を受けたら即死。HP総量が20%を超えるとアーツ解除。
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