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てぃーぶれーく
030-ユピテルの日常
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<聖王都プラテナ 北街の宿屋>
オイラの名前はユピテル。
生まれ故郷であるエルフの村に別れを告げ、たくさんの人間達が住む都プラテナに再びやって来て数日が経った。
この街にはしばらく滞在するとは聞いているけど、その理由は「カナタにーちゃんが書き溜めた日誌をなぞって行動するため」らしい。
どうやら、オイラを助けてくれたカナタにーちゃんとエレナねーちゃんは二年後の未来から時を越えて戻ってきたんだそうで、なぞって旅をしているのはエレナねーちゃんたっての希望とのこと。
だけど、にーちゃんが書き残していた「別の未来」では、オイラは先のイフリートの一件で死んでしまっていたんだ。
今でも正直信じられないけれど、その事を考えると何だか背筋がゾワゾワして落ち着かないし、レネットねーちゃんが死んだオイラの復讐の為に辛い思いをするなんて、悲しすぎるから想像もしたくないよ。
だけど、今オイラはちゃんと生きてて新たな生活も始まった!
これからどうなるのか楽しみでもあり、不安でもある。
そんな状況だったけれど……
「第一回チキチキ! 二人をラブラブな関係にしちゃおう大作戦ー! パフパフ~ッ!」
『はぁ?』
突然サツキちゃんが訳の分からない事を言い出してしまい、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「あの二人が互いに意識して照れたりするのを見て、尊さにキュンキュンするのも良いけど、やっぱりそろそろ進展してもらわないとねっ!」
『……どういう事?』
未だに状況が飲み込めないオイラが率直な疑問を口にすると、サツキちゃんはヤレヤレと呆れ顔で両手をヒラヒラと振りつつ、オイラの肩をバシバシ叩いてきた。
これ地味に痛いからイヤなんだけど。
「いや、おにーちゃんとエレナさんの事だよ。そもそも、私は二人をくっつける為に一緒に旅してるんだから」
『初耳だよっ!?』
確かに前々から『どうしてサツキちゃんは一緒に旅してるんだろう?』とは思っていたけれど、まさかそんな理由だったなんて……。
「時々、旅先からおかーさんに手紙を送ってたんだけど、さすがに二人の関係に進捗がなさ過ぎてそろそろ書く事に困っててね。まあ、前回の手紙には、あたしに惚れてる男のコが現れて困っちゃうナ~って書いたけど」
『ちょっと! それ誰の事っ!?』
「まあそれはどうでも良いとして、ユピテルくんも何かアイデア考えてくれない?」
オイラが抗議するも、あっさりとスルーされてしまった。
アイデアと言われても突拍子もなさ過ぎて困ってしまう。
『でも二人をくっつけるったって、一体何をするつもりだい? オイラの見たところ、カナタにーちゃんは押しが弱いうえに鈍そうだし、エレナねーちゃんから思い切って告白しても「え? なんだって?」とか言って、耳が遠くなる怪現象が起こりそうな気がするんだ』
「そうそう、それだよそれっ! だからあたし達がグイグイ押さなきゃ話にならないんだよっ!!」
サツキちゃんはテーブルをバンっと叩くと、鼻息荒く迫ってきた。
『か、顔が近いって! でも、当の二人はどこ行ったの?』
「おにーちゃんが、さすがにそろそろ路銀を稼いでおきたい~って言って、エレナさんと一緒に街の外に行っちゃった」
『えー、オイラだってタダ飯食らいになるの嫌だし、狩りの手伝いくらいするのに……』
皆といつまで一緒に居られるかは分からないけど、その間ずっとお荷物で居続けるなんて、まっぴらゴメンだ。
しかし、サツキちゃんは苦笑しながら首を横に振った。
「あの二人の狩りに立ち会うのはさすがに無理だと思うよ~」
『無理??? オイラ、弓の腕はそんなに悪くないんだけど……』
残念ながらオイラの魔法はからきしダメだけど、弓の名手と言われたレネットねーちゃんの弟として、恥ずかしくない程度の腕はある。
だけど、サツキちゃんの表情を見たところ、そういう話では無いみたいだ。
「見た方が早そうだし、ちょっと物陰から覗いてみよっ!」
『わっ、わっ、ちょっと!?』
サツキちゃんは有無を言わさずオイラの手を握ると、街の外に向かって駆け出して行った。
◇◇
「というわけで、街の外にやってきました!」
『うーん、盗み見なんてして、バレて怒られないかなぁ』
二人で木陰に隠れてはいるものの、カナタにーちゃんは隠れてる敵の気配を感じ取る直感が凄いし、エレナねーちゃんに至っては任意の相手の能力を読み取る能力を持っているので、コチラに目を向けられたら一発アウトだ。
なのに、何故かサツキちゃんは自信満々に胸を張りながら宣言した。
「バレなきゃオッケー! バレたって、相手が諦めるまで逃げ切ればバッチオッケー!!」
ダメだこの子、早く何とかしないと。
あまりの超理論に呆れ顔で脱力していると、向こうで二人が動くのが見えた。
そしてアイアンゴーレムが二人に襲いかかっ……て来ると同時に、一瞬でバラバラになって戦闘が終わった。
『なんでっ!?』
「おにーちゃんが陰縫いでアイアンゴーレムの動きを止めて、エレナさんがウォーターボールで砕いたんだね」
ちなみにアイアンゴーレムの名前の由来は、金属を多く含んだ鉱石で素体を形成しているからである。
だからこそエルフ達はコイツを倒す為に、鉱石よりも堅いミスリルの矢を使っているわけで、それをウォーターボール一発で砕くとか意味が分からない。
とか何とか思っている矢先に、今度はカナタにーちゃんが腰に差しているダガーを抜き、まるで大根を切るかのようにアイアンゴーレムをサクサクと裁断し始めた。
『何あれ……』
「モンスターを倒した事を証明する為に、アイアンゴーレムの核を切り出してるんだよ」
『いや、それは分かるんだけどさ……』
アイアンゴーレムのコアは鏃の素材としてとても有用なので、オイラ達エルフ族も討伐後にこれを解体している。
でも、それは大人達がたくさん集まって巨大なウォーハンマーで叩いて砕くのが普通だ。
それをいとも容易くダガーで切ってしまうとか、常識はずれにも程がある。
あまりに現実離れしすぎな光景に唖然としていると、サツキちゃんが笑いながらオイラの肩をぽんぽんと叩いた。
「何だかんだ言っても、おにーちゃんって魔王を倒す一歩手前まで行ったらしいからね。あの二人っていつもあんなだから実感わかないけど、私達が思っている以上にスゴいんだよ」
確かに、オイラは全然覚えていないのだけど、カナタにーちゃんとエレナねーちゃんはたった二人でイフリートを再び封印してしまったもんな。
『だったら、カナタにーちゃんとエレナねーちゃんが二人で魔王を倒しちまった方が早いんじゃないかなぁ』
「あはは、あたしもそれ言ったことあるある! でも、おにーちゃんが言うには、魔王を倒すには勇者にしか装備できない伝説の剣が必要で、その為には勇者カネミツが自分で神様に会いに行くくらい強くならないとダメなんだって」
『なるほどなー』
そういえば、聞いた話によるとカナタにーちゃんは勇者カネミツと一緒に魔王退治の旅をしていたのを、理不尽な理由で追い出されたらしい。
今の勇者はそれを知らないとはいえ、そんな相手と組んで戦うのはあまり気分の良いものではないだろうし、そこまでしてオイラを助けてくれたと思うと、とても頭が上がらない。
いつかこの恩を返せると良いのだけど……。
「あっ! おにーちゃん達が撤収を始めちゃったよ! 私達も急いで街に戻らなきゃ! ごーごー!!」
『わわっ、ま、待ってくれよぅーっ! っていうか二人をラブラブな関係にしちゃおう大作戦はどうしたのさ!!』
「それは第二回へ続く!!」
『えええええーーーーーーっ!?』
・
・
……とまあ、そんなこんなで新しい日常が始まり、やたら騒がしい仲間に振り回される日々が幕を開けたのである。
実は彼女とは生涯を共にする事になるのだけど、この頃のオイラはそんな事を知る由も無かったのであった。
オイラの名前はユピテル。
生まれ故郷であるエルフの村に別れを告げ、たくさんの人間達が住む都プラテナに再びやって来て数日が経った。
この街にはしばらく滞在するとは聞いているけど、その理由は「カナタにーちゃんが書き溜めた日誌をなぞって行動するため」らしい。
どうやら、オイラを助けてくれたカナタにーちゃんとエレナねーちゃんは二年後の未来から時を越えて戻ってきたんだそうで、なぞって旅をしているのはエレナねーちゃんたっての希望とのこと。
だけど、にーちゃんが書き残していた「別の未来」では、オイラは先のイフリートの一件で死んでしまっていたんだ。
今でも正直信じられないけれど、その事を考えると何だか背筋がゾワゾワして落ち着かないし、レネットねーちゃんが死んだオイラの復讐の為に辛い思いをするなんて、悲しすぎるから想像もしたくないよ。
だけど、今オイラはちゃんと生きてて新たな生活も始まった!
これからどうなるのか楽しみでもあり、不安でもある。
そんな状況だったけれど……
「第一回チキチキ! 二人をラブラブな関係にしちゃおう大作戦ー! パフパフ~ッ!」
『はぁ?』
突然サツキちゃんが訳の分からない事を言い出してしまい、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「あの二人が互いに意識して照れたりするのを見て、尊さにキュンキュンするのも良いけど、やっぱりそろそろ進展してもらわないとねっ!」
『……どういう事?』
未だに状況が飲み込めないオイラが率直な疑問を口にすると、サツキちゃんはヤレヤレと呆れ顔で両手をヒラヒラと振りつつ、オイラの肩をバシバシ叩いてきた。
これ地味に痛いからイヤなんだけど。
「いや、おにーちゃんとエレナさんの事だよ。そもそも、私は二人をくっつける為に一緒に旅してるんだから」
『初耳だよっ!?』
確かに前々から『どうしてサツキちゃんは一緒に旅してるんだろう?』とは思っていたけれど、まさかそんな理由だったなんて……。
「時々、旅先からおかーさんに手紙を送ってたんだけど、さすがに二人の関係に進捗がなさ過ぎてそろそろ書く事に困っててね。まあ、前回の手紙には、あたしに惚れてる男のコが現れて困っちゃうナ~って書いたけど」
『ちょっと! それ誰の事っ!?』
「まあそれはどうでも良いとして、ユピテルくんも何かアイデア考えてくれない?」
オイラが抗議するも、あっさりとスルーされてしまった。
アイデアと言われても突拍子もなさ過ぎて困ってしまう。
『でも二人をくっつけるったって、一体何をするつもりだい? オイラの見たところ、カナタにーちゃんは押しが弱いうえに鈍そうだし、エレナねーちゃんから思い切って告白しても「え? なんだって?」とか言って、耳が遠くなる怪現象が起こりそうな気がするんだ』
「そうそう、それだよそれっ! だからあたし達がグイグイ押さなきゃ話にならないんだよっ!!」
サツキちゃんはテーブルをバンっと叩くと、鼻息荒く迫ってきた。
『か、顔が近いって! でも、当の二人はどこ行ったの?』
「おにーちゃんが、さすがにそろそろ路銀を稼いでおきたい~って言って、エレナさんと一緒に街の外に行っちゃった」
『えー、オイラだってタダ飯食らいになるの嫌だし、狩りの手伝いくらいするのに……』
皆といつまで一緒に居られるかは分からないけど、その間ずっとお荷物で居続けるなんて、まっぴらゴメンだ。
しかし、サツキちゃんは苦笑しながら首を横に振った。
「あの二人の狩りに立ち会うのはさすがに無理だと思うよ~」
『無理??? オイラ、弓の腕はそんなに悪くないんだけど……』
残念ながらオイラの魔法はからきしダメだけど、弓の名手と言われたレネットねーちゃんの弟として、恥ずかしくない程度の腕はある。
だけど、サツキちゃんの表情を見たところ、そういう話では無いみたいだ。
「見た方が早そうだし、ちょっと物陰から覗いてみよっ!」
『わっ、わっ、ちょっと!?』
サツキちゃんは有無を言わさずオイラの手を握ると、街の外に向かって駆け出して行った。
◇◇
「というわけで、街の外にやってきました!」
『うーん、盗み見なんてして、バレて怒られないかなぁ』
二人で木陰に隠れてはいるものの、カナタにーちゃんは隠れてる敵の気配を感じ取る直感が凄いし、エレナねーちゃんに至っては任意の相手の能力を読み取る能力を持っているので、コチラに目を向けられたら一発アウトだ。
なのに、何故かサツキちゃんは自信満々に胸を張りながら宣言した。
「バレなきゃオッケー! バレたって、相手が諦めるまで逃げ切ればバッチオッケー!!」
ダメだこの子、早く何とかしないと。
あまりの超理論に呆れ顔で脱力していると、向こうで二人が動くのが見えた。
そしてアイアンゴーレムが二人に襲いかかっ……て来ると同時に、一瞬でバラバラになって戦闘が終わった。
『なんでっ!?』
「おにーちゃんが陰縫いでアイアンゴーレムの動きを止めて、エレナさんがウォーターボールで砕いたんだね」
ちなみにアイアンゴーレムの名前の由来は、金属を多く含んだ鉱石で素体を形成しているからである。
だからこそエルフ達はコイツを倒す為に、鉱石よりも堅いミスリルの矢を使っているわけで、それをウォーターボール一発で砕くとか意味が分からない。
とか何とか思っている矢先に、今度はカナタにーちゃんが腰に差しているダガーを抜き、まるで大根を切るかのようにアイアンゴーレムをサクサクと裁断し始めた。
『何あれ……』
「モンスターを倒した事を証明する為に、アイアンゴーレムの核を切り出してるんだよ」
『いや、それは分かるんだけどさ……』
アイアンゴーレムのコアは鏃の素材としてとても有用なので、オイラ達エルフ族も討伐後にこれを解体している。
でも、それは大人達がたくさん集まって巨大なウォーハンマーで叩いて砕くのが普通だ。
それをいとも容易くダガーで切ってしまうとか、常識はずれにも程がある。
あまりに現実離れしすぎな光景に唖然としていると、サツキちゃんが笑いながらオイラの肩をぽんぽんと叩いた。
「何だかんだ言っても、おにーちゃんって魔王を倒す一歩手前まで行ったらしいからね。あの二人っていつもあんなだから実感わかないけど、私達が思っている以上にスゴいんだよ」
確かに、オイラは全然覚えていないのだけど、カナタにーちゃんとエレナねーちゃんはたった二人でイフリートを再び封印してしまったもんな。
『だったら、カナタにーちゃんとエレナねーちゃんが二人で魔王を倒しちまった方が早いんじゃないかなぁ』
「あはは、あたしもそれ言ったことあるある! でも、おにーちゃんが言うには、魔王を倒すには勇者にしか装備できない伝説の剣が必要で、その為には勇者カネミツが自分で神様に会いに行くくらい強くならないとダメなんだって」
『なるほどなー』
そういえば、聞いた話によるとカナタにーちゃんは勇者カネミツと一緒に魔王退治の旅をしていたのを、理不尽な理由で追い出されたらしい。
今の勇者はそれを知らないとはいえ、そんな相手と組んで戦うのはあまり気分の良いものではないだろうし、そこまでしてオイラを助けてくれたと思うと、とても頭が上がらない。
いつかこの恩を返せると良いのだけど……。
「あっ! おにーちゃん達が撤収を始めちゃったよ! 私達も急いで街に戻らなきゃ! ごーごー!!」
『わわっ、ま、待ってくれよぅーっ! っていうか二人をラブラブな関係にしちゃおう大作戦はどうしたのさ!!』
「それは第二回へ続く!!」
『えええええーーーーーーっ!?』
・
・
……とまあ、そんなこんなで新しい日常が始まり、やたら騒がしい仲間に振り回される日々が幕を開けたのである。
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