おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

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第六章 ゆきの国の妖精ハルルとフルル

051-神々の塔

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【聖王歴128年 黄の月 4日】

 早朝、俺達が神々の塔の前へ行くと、入り口の前に人だかりが出来ていた。
 何かトラブルが起きたのかと少し不安になったものの、実際これといって何かがあったわけではなく、単にドア破りの順番待ちで混雑しているだけのようだ。
 やはり未だ誰も突破できていないようで、ドアは固く閉ざされているままである。

「アンロック!」

 他のパーティのシーフが解錠スキルを発動させたものの、残念ながらレベル不足で弾かれてしまい、肩を落としてトボトボとドアから離れていった。
 その様子を見て、ウラヌスはふむふむと頷いている。

「あのドアに何らかの魔法防壁が付与されているようだな。まあ、結界を展開する為の設備なのだから当然か」

「へえ、今のを見ただけで分かるのか」

 最初からドアの結界の存在を知っていた俺はともかく、初見であるウラヌスが一発で見破ったのは意外だった。
 俺の反応を見て、ウラヌスは少し自慢げに笑いながらこちらへ目を向ける。

「この手のヤツは何度か見た事があるんだ。だが、残念ながら俺とクルルにはコイツを破るすべが無くてな。お前の鍵開けスキルでどうにかならないか?」

「そうだなあ……」

 ウラヌスに対して俺の職業がシーフであるとは伝えていないものの、ここに来る途中に「影縛り」や「投擲とうてき」やらを駆使して戦闘をサポートしていたので、言わずともシーフである事はバレバレであった。

「さて、どうしたもんかな」

 やっと俺の順番が回ってきてドアの前に立ったものの、どうやって破るかが悩ましい。
 と言っても技術的な問題で破れないわけではなく、今の俺ならば「アンロック・ゼンシュ」を使えば容易たやすく破れるだろう。
 だが、このスキルは勇者パーティのメンバーとして最前線で二年近く戦い続けて、常闇とこやみの大地へと向かう直前になってようやく修得した「シーフ職最強の鍵開けスキル」である。
 つまり、それが使えるという事は魔王へ戦いを挑む程のレベルに達している強者であると宣言するに等しいと言える。
 そんなシロモノを人前で使おうものなら周りのシーフ連中が大騒ぎするだろうし、こんなところで悪目立ちをしてしまうと後々でトラブルになる危険性も高い。
 イフリートで入り口ごと吹き飛ばすなんてもってのほかなわけで、今回は少し"現実的"に手加減してみる事にした。

「アンロック……カイ!」

 手元から放たれた魔力がドアに注ぎこまれ……木板の隙間からバンッと蝶番ちょうつがいが砕ける音が聞こえた。
 それからドアを両手で押すと木板がバタンと倒れ、神々の塔への入り口が開放された。

「おおっ、それは上位アンロックスキルか! 俺も使い手を見るのは初めてだが、結界を護る封印すら破れるとは驚いた!!」

 ちなみにアンロック・カイは、通常のアンロックに「魔法攻撃ダメージ」を追加したスキルなので、結界を破ったというよりもドアを魔法で攻撃して壊した感じに近い。
 普通はミミックなどのアイテム擬態モンスター用スキルなのだけど、この周辺にはそういう厄介なモンスターは出現しないので、周りの冒険者達も「どうしてドアが開いたのか」という仕組みまでは理解できていないようだ。
 そんなわけで、感心した様子で俺の肩を叩くウラヌスに軽く照れ笑いを返しつつ、俺達は神々の塔へと足を進めたのであった。


◇◇


 前に来た時はほとんど勇者カネミツひとりで戦っていたので酷く苦戦したのだが、今回はウラヌスのアイスソードに加えて、クルルの援護スキルやエレナの水属性魔のアシストもあって、とてもスムーズに第一・第二・第三階層を突破。
 そして……


<神々の塔 第四階層>


『コールドスプレッドっ!』

『キャーーッ』『ひゃーーっ』『おたすけーーっ』

 エレナの威嚇射撃に驚いた火玉ウィスプの群れは、一目散に逃げ出していく。
 最後の一匹が居なくなり無事に戦闘が終了した事を確認してから、ウラヌスは剣を鞘に収めて安堵の息を吐いた。

「いやはや、君が水属性魔法の使い手で助かった。この塔のモンスターは火属性ばかりでアイスソードが効くのは良いのだが、いかんせん数が多過ぎる」

 彼の言う通り、神々の塔に出現するモンスターは火属性のものが多い。
 だけど、よくよく考えるとこんな雪原のド真ん中の塔に火属性モンスターがいる時点で不自然すぎるわけで……。


 ――結界を護るために外部からの侵入を防ぐ仕組みがあるんすよ。……じゃあ、なんでモンスターが塔の中に居るんだって話っす。


 都を出発する前にハルルがそんな疑問を口にしていたけれど、俺が思うに、神々の塔のモンスター達は最初から侵入者を撃退すべく意図的に配置されているのだろう。
 国王曰く、この塔はかつて戴冠たいかんの儀式にも使われていたらしいし、もしかすると新国王への試練の場として用意されていたのかもしれない。
 と、そんな事を考えながら進んでいた俺の視線の向こうに、次の階層へと繋がる階段が見えた。

「あれを登れば、ついに第五階層か」

 恐らく結界展開用の魔術回路がある最上階は第六階層なので、次が事実上の最終難関だろう。
 もちろん、かつて第三階層で探索を断念した俺にとっては未知の領域であり、そこに何が待ち受けているのかは神のみぞ知る……。

「さあ、気を引き締めなおして行くぞ!」


<神々の塔 第五階層>


 第五階層へと到着した俺達の目に入ったのは、塔の中とは思えないほど広々とした明るい空間だった。
 しかも、辺りを見れば切れ目のない石の床やら謎の光源を用いた天井の明かりなどなど、見るからに「人類には到底不可能なレベルのシロモノ」のオンパレード。
 この塔が神による建造物であるという説も聞いていたけども、それは本当に事実なのかもしれない。

「先程までの迷宮とは打って変わって大広間か。しかも中央を魔力トーチで明るく照らすとは、まるで闘技場のようではないか」

 ウラヌスが周囲を見渡しながら呟いたその時……


【危機感知】
 警戒


「誰だっ!」

 俺は即座にライトニングダガーを鞘から抜き、殺気の主が居る方向へと刃を向けた。

『ほほう。姿を見る前にワシに気づくとは。お主、なかなかやるではないか』

 かんらかんらと笑いながらフロアの奥から現れたのは、ジュエル大陸の遙か東方にあるヤズマト国の兵士の鎧に身を包んだ老人……。
 だが、鎧の周りには青色の火玉ウィスプが浮遊している様子から、この男が人ならざる者である事は明らかであった。

「その姿……ゴーストか!!」

 ウラヌスの問いに対し、老人はニヤリと笑みを浮かべるとギラリと強い光を放つ剣を構えて応えた。

『我が名はユキマル。この先に進みたくば我と剣で勝負せよ!』
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