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第十章 灼熱の大地と永遠雪のセツナ
140-エレナ大勝利!
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【聖王歴128年 赤の月 35日】
<ヤズマト南西 ジェダイト領・山岳地帯>
『私の大勝利ですーーーーーーーっ!!!』
「!?!?!?」
ヤズマト国を南西に向けて出発して二日後。
再びジェダイト国の国境を越えたあたりで、いきなりエレナが両手を挙げながら大声を上げた。
『ホント気が気じゃなかったですけど、これでようやく一安心ですよ……』
「さっきから一体、エレナは何を言ってるんだ???」
するとエレナは少しだけ返答に迷いながらも、来た道を振り返って指差しながらとんでもない真実を口にした。
『シディアさんって、ホントはシディア王女だったんです』
…………はい?
「えっと、それは一体どういう意味で???」
『カナタさんより三つ年下の女の子ですよ、あの人』
「ちょっ、ちょっと待って! それじゃ、シディア王子は性別を詐称してたってこと!?」
『まあ、理由までは分かりませんけどね。あっ、ちなみにプリーストのセシリィさんは男性でした』
「ファッ!?!?!?」
エレナの目は相手の能力や名前、性別といった事柄を見通すことが出来るので、いま言っていることは間違いなく事実であろう。
本来女性であるはずのシディア王子……いや、シディア王女が男のふりをしているのは色々と事情があるのだろうけれど、俺がかつて見た世界で勇者パーティにすら明かされなかったわけで。
しかも生贄として雪山に送り込まれた聖職者のセシリィまで性別を偽っていたとなると、少なからず両者に何らかの関係があるのは間違いない。
……ひょっとしなくたって、国家機密に相当する重大事実である可能性が大だ。
「だけど、なんでエレナは今まで黙ってたんだ? 前のときはコッソリ教えてくれてたじゃないか」
俺の言う「前」とは、フロスト王国での一件のこと。
あの時は勇者ウラヌスの正体が普通の剣士で、幼なじみのクルルこそが真の勇者だった~……って話だったのだけど、もちろんエレナは一発で正体を見破っていたし、それを俺にコッソリ教えてくれていた。
『……だって、こんなの絶対に脅威になりそうですもん』
そう言いながらエレナは俺のカバンに手を突っ込んで紙束を取り出すと、俺の書き記した「かつて見たヤズマト国」での出来事のとある一文を指差した。
――シディア王子はずっと俺の横にくっついたままである。
――これが女の子なら良いのになあ。
「ヴッ!」
あまりにド直球すぎる我が欲求の表現っぷりに、思わず頬に汗が伝う。
さすがに不可抗力だという事を察してくれているのか、エレナはそんな俺の姿を見て苦笑しつつも、今回の状況を思い返して溜め息を吐いた。
『あの人、なにかにつけてカナタさんの手を握ろうとしたり、くっつこうとしたり……。そんな状況で、実はあのひとって女の子なんですよ~……なんて言ったら、カナタさん絶対意識しちゃうに決まってますもん』
「うぅ……」
エレナの言う通り、めちゃくちゃ意識してしまう自分の姿が目に浮かぶ。
いや、別に心移りするだとかそういう話ではないんだけども、シディア王女に対してやたらエレナが辛辣だなぁとは思っていたけれど、まさかそんな理由だったとは……。
「雪山を登る時にエレナが王女のお世話係を買って出た理由も、つまりは王女が俺に近づくのを阻止するためだった、と」
『ですですっ!』
と、そんな会話をしている最中、ユピテルがはてと首を傾げた。
『いつものパターンだと、ここでエレナねーちゃんにメッチャ怒られたカナタにーちゃんが、困りながら謝ってるイメージあるんだけど、今回はそうならないんだね? なんかエレナねーちゃん、すっごい余裕ある感じがするよ』
「お前は一体、俺達にどういう印象を持ってるんだ……」
まあ、あながち間違っては無いんだけどさ。
するとエレナは、嬉しそうに笑いながら俺の手を握って微笑んだ。
『あはは。だって、これから一生ずっと一緒って言って頂けましたから』
「!」
空での戦いの後、エレナと交わした約束。
それはつまり……具体的に言わなくたって、そういう意味になるんだけど――
「お前らはニヤニヤすんなッ!!」
「『ニヤニヤ』」
サツキだけでなくユピテルまでそっくりな笑みを浮かべながらこっちを眺めてくるもんだから、たまったもんじゃない。
「ったく、お前らだって人のこと言えないだろうに」
サツキの奴がユピテルを連れてエルフの村に突撃した話を一通り聞かせてもらったけど、恐ろしいことに村長を脅して謝罪させたうえ、その際にフルルがぶっ放した魔法があまりにもド派手過ぎたせいで、聖王都からライナス殿下率いる連合軍がすっ飛んできたらしい。
しかも、聖王都とエルフ村は不干渉を前提とした敵対関係にあったので、その決まり事まですっ飛ばした今回の対応によって、その後の関係者達に降りかかるゴタゴタを考えると、無関係である自分ですら胃が痛くなりそうだ。
「あたし的には、プリシアちゃんのおにーちゃんが軍隊を引き連れて来たのはさすがにビックリだったな~」
『オイラ的には、サツキちゃんの行動も言動も全部ビックリだから、特になんとも思わなかったかな……』
「ホント、うちの妹がいつもゴメンな……。だけど、ライナス殿下が駆けつけた理由が、魔王四天王が襲来したと勘違いしたってのは、なかなかタイミング的に不思議な因縁を感じるよ」
俺はそう言いながらエレナが取り出した紙束をめくると、次の目的地で起こる出来事を指差した。
【魔王四天王永遠雪のセツナが放った強烈な吹雪によって、灼熱の大地は極寒の大地へと変貌していた】
<ヤズマト南西 ジェダイト領・山岳地帯>
『私の大勝利ですーーーーーーーっ!!!』
「!?!?!?」
ヤズマト国を南西に向けて出発して二日後。
再びジェダイト国の国境を越えたあたりで、いきなりエレナが両手を挙げながら大声を上げた。
『ホント気が気じゃなかったですけど、これでようやく一安心ですよ……』
「さっきから一体、エレナは何を言ってるんだ???」
するとエレナは少しだけ返答に迷いながらも、来た道を振り返って指差しながらとんでもない真実を口にした。
『シディアさんって、ホントはシディア王女だったんです』
…………はい?
「えっと、それは一体どういう意味で???」
『カナタさんより三つ年下の女の子ですよ、あの人』
「ちょっ、ちょっと待って! それじゃ、シディア王子は性別を詐称してたってこと!?」
『まあ、理由までは分かりませんけどね。あっ、ちなみにプリーストのセシリィさんは男性でした』
「ファッ!?!?!?」
エレナの目は相手の能力や名前、性別といった事柄を見通すことが出来るので、いま言っていることは間違いなく事実であろう。
本来女性であるはずのシディア王子……いや、シディア王女が男のふりをしているのは色々と事情があるのだろうけれど、俺がかつて見た世界で勇者パーティにすら明かされなかったわけで。
しかも生贄として雪山に送り込まれた聖職者のセシリィまで性別を偽っていたとなると、少なからず両者に何らかの関係があるのは間違いない。
……ひょっとしなくたって、国家機密に相当する重大事実である可能性が大だ。
「だけど、なんでエレナは今まで黙ってたんだ? 前のときはコッソリ教えてくれてたじゃないか」
俺の言う「前」とは、フロスト王国での一件のこと。
あの時は勇者ウラヌスの正体が普通の剣士で、幼なじみのクルルこそが真の勇者だった~……って話だったのだけど、もちろんエレナは一発で正体を見破っていたし、それを俺にコッソリ教えてくれていた。
『……だって、こんなの絶対に脅威になりそうですもん』
そう言いながらエレナは俺のカバンに手を突っ込んで紙束を取り出すと、俺の書き記した「かつて見たヤズマト国」での出来事のとある一文を指差した。
――シディア王子はずっと俺の横にくっついたままである。
――これが女の子なら良いのになあ。
「ヴッ!」
あまりにド直球すぎる我が欲求の表現っぷりに、思わず頬に汗が伝う。
さすがに不可抗力だという事を察してくれているのか、エレナはそんな俺の姿を見て苦笑しつつも、今回の状況を思い返して溜め息を吐いた。
『あの人、なにかにつけてカナタさんの手を握ろうとしたり、くっつこうとしたり……。そんな状況で、実はあのひとって女の子なんですよ~……なんて言ったら、カナタさん絶対意識しちゃうに決まってますもん』
「うぅ……」
エレナの言う通り、めちゃくちゃ意識してしまう自分の姿が目に浮かぶ。
いや、別に心移りするだとかそういう話ではないんだけども、シディア王女に対してやたらエレナが辛辣だなぁとは思っていたけれど、まさかそんな理由だったとは……。
「雪山を登る時にエレナが王女のお世話係を買って出た理由も、つまりは王女が俺に近づくのを阻止するためだった、と」
『ですですっ!』
と、そんな会話をしている最中、ユピテルがはてと首を傾げた。
『いつものパターンだと、ここでエレナねーちゃんにメッチャ怒られたカナタにーちゃんが、困りながら謝ってるイメージあるんだけど、今回はそうならないんだね? なんかエレナねーちゃん、すっごい余裕ある感じがするよ』
「お前は一体、俺達にどういう印象を持ってるんだ……」
まあ、あながち間違っては無いんだけどさ。
するとエレナは、嬉しそうに笑いながら俺の手を握って微笑んだ。
『あはは。だって、これから一生ずっと一緒って言って頂けましたから』
「!」
空での戦いの後、エレナと交わした約束。
それはつまり……具体的に言わなくたって、そういう意味になるんだけど――
「お前らはニヤニヤすんなッ!!」
「『ニヤニヤ』」
サツキだけでなくユピテルまでそっくりな笑みを浮かべながらこっちを眺めてくるもんだから、たまったもんじゃない。
「ったく、お前らだって人のこと言えないだろうに」
サツキの奴がユピテルを連れてエルフの村に突撃した話を一通り聞かせてもらったけど、恐ろしいことに村長を脅して謝罪させたうえ、その際にフルルがぶっ放した魔法があまりにもド派手過ぎたせいで、聖王都からライナス殿下率いる連合軍がすっ飛んできたらしい。
しかも、聖王都とエルフ村は不干渉を前提とした敵対関係にあったので、その決まり事まですっ飛ばした今回の対応によって、その後の関係者達に降りかかるゴタゴタを考えると、無関係である自分ですら胃が痛くなりそうだ。
「あたし的には、プリシアちゃんのおにーちゃんが軍隊を引き連れて来たのはさすがにビックリだったな~」
『オイラ的には、サツキちゃんの行動も言動も全部ビックリだから、特になんとも思わなかったかな……』
「ホント、うちの妹がいつもゴメンな……。だけど、ライナス殿下が駆けつけた理由が、魔王四天王が襲来したと勘違いしたってのは、なかなかタイミング的に不思議な因縁を感じるよ」
俺はそう言いながらエレナが取り出した紙束をめくると、次の目的地で起こる出来事を指差した。
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