おひとよしシーフ(Lv99)による過去改変記

Imaha486

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第十二章 偉大なる魔王オーカ様

176-魔王の意志

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【聖王歴129年 白の月 27日 早朝】

<首長トロイの屋敷 別館応接室>

 前日の騒乱の後、俺達はサイハテの街の宿屋にて一泊し、再び首長トロイの屋敷へと訪問していた。
 ちなみに宿泊費は俺が知っている金額と比べて、なんと十分の一以下!
 そもそも魔王の支配下で安全が約束されているゆえに、物価も非常に安定しているらしい。
 グレーターデーモンを命懸けで倒しても、素材の売却で得られる収益から宿代と食費を差し引いてほぼトントン……というメチャクチャなインフレぶりを考えると、まるで天国のよう。
 ……いや、天国と言うわりに空は真っ暗だけどさ。

『よくぞ集まってくれた』

 お誕生日席……もとい、最奥の豪華そうな椅子に座って話し始めたのは、常闇の大地の支配者――魔王オーカ。
 ただ、小柄なのに無理して大人用の椅子に座っているせいで、首から上しか見えてないのがなんとも……うーん。

「イスにクッション何枚か乗せる? オーカちゃんの頭しか見えてないよ」

『ンガッ!?』

 さすがサツキ! 皆が言えないことを平然と言ってのける!!
 ……いや、ホント兄として申し訳ない。
 しかし魔王オーカは特に怒ることなく、近くに積んであったクッションを微妙な顔をしながら椅子の座に三枚重ねにして、気を取り直して再び口を開いた。

『まずは我らの目的を伝えねばなるまい』

「目的……? 世界征服ではないのか」

 カネミツの言葉に、オーカはフンと鼻で笑う。

『お前らの国なんぞ頼まれても要らんわ』

 それなら、どうして世界中の国々を襲ったのか?
 きっと勇者達の脳裏にはそんな疑問がよぎっているはず。
 俺も内心はそれを思いながらも、一つの可能性を口にする。

「グレーターデーモンを召喚させないため……?」

『ッ!?』

 オーカは驚きに目を見開くと、三段重ねのクッションからぴょんと飛び降り、俺の胸ぐらを掴んだ!

『貴様、どこまで知っていr――うひゃあっ!?』

 俺に問いかけようとした瞬間、オーカはまるで子猫のように襟を掴んで宙づり状態に。
 そして、オーカを持ち上げているのは……なんとエレナだった!

『カナタさんに乱暴しちゃダメです』

『わ、わかったから、降ろして……お願いだから……』

『もうやっちゃダメですからね?』

『う、うむ……』

 エレナはそう言うと、再びオーカを自席へヒョイと戻した。
 相手が魔王とはいえ一国の王に対して無礼すぎる行動ではあったものの、あまりに凄まじい殺気を放つエレナの姿に、魔王四天王クラウディアどころか、オーカ本人もたじたじだ。
 というか、小柄とはいえ女の子ひとりを片手で持ち上げるって……ひええ。

『気を取り直そう……。そこの男の言うように、グレーターデーモンの撃退も重要ではあるが、一番の目的は、我が祖先から代々伝わる言い伝えじゃな』

「言い伝え?」

『うむ』

 オーカは大きなテーブルの上に紙束と古ぼけた首飾りを置くと、紙束の表紙をめくった。

『これが書かれたのは、今からおよそ百年ほど前。我が祖先が世界へ向けて宣戦布告する直前に書いた手記じゃの』

「なんだと!?」

 旧代の魔王が、世界を相手に宣戦布告した理由が書かれた手記!?
 とんでもない遺物を前に、勇者カネミツだけでなくプリシア姫までも絶句。

「何と書かれているのですか!」

 魔王軍と幾度となく戦ってきたプラテナ国の王女たるプリシアにとって、百年以上に渡る戦いの理由が書かれているとあれば極めて重要な話だ。
 無論、オーカもその質問の意味を理解しており、彼女は少し緊張した様子でプリシアの問いに答えた。

『我が祖先には未来をる力があった』

「未来を……視る?」

『言葉のとおり、この先に起こる事象を知り得る力じゃ。災害、疫病、あらゆる災いを先に知る力によって多くの民を救い、その力ゆえに我が一族が民を導く長となるのは自然の流れであった』

「……」

『そんなある時、我が領土に魔物の大群が襲ってきた。無論、未来を視る力で事前に察知し、民を避難させておったようじゃがな』

 彼女の言う『未来を視る力』という言葉が、何か記憶の片隅に引っかかる。
 うーん……もう少しで何かを思い出せそうなのだけど。

『ところが、魔物に襲われて家々が焼き払われるはずだったのにそうはならなかった……。未来がそうなっていたにも関わらず、突然、素性も知れぬ魔女が現れて魔物達を蹴散らしてしまった。それも一人でな』

「魔女……」

『いきなりの状況に唖然と立ち尽くす我が祖先の首元に、魔女が身につけていた首飾りをかけた途端、遥か未来の出来事が一気に頭に流れ込んできた。そして、魔女は我が祖先に向けてこう言ったと書かれておる。……未来は変えられる、と』

「!」

 まるで、今までの冒険のことを見透かされているようで、背中がゾクリとする。

「その魔女は誰なのですか?」

『残念ながら書かれておらん。素性を明かさなかったのか、そもそも祖先が書くことを拒んだのか、そこまでは分からんな』

 オーカはテーブルの上に無造作に転がした首飾りを手に取ると、人差し指にかけてくるくると回した。

『この首飾りこそが手記に書かれていた現物で、一族に伝わる家宝じゃ。とんでもないシロモノでな。身につけた途端、魔力が比べものにならぬほど強くなるぞ』

「扱いが雑ッ!!」

 思わずツッコミを入れてしまった俺を見て、オーカはニヤリと笑いながら、首飾りをテーブルの上にポイと置いた。

『ほれほれ、盗っ人らしく奪えば良かろう?』

「……そんなカッコ悪い真似できねーよ」

『くくく、お人好しじゃのう』

 この憎たらしさ、まるでサツキが二人いるみたいだ!

『さて、話を戻そうかの。遥か遠い未来を視て、我が祖先は決心したという。そして……末裔である我も意志を継いでおる』

 オーカは真っ直ぐに前を見据えて、真実を口にした。

『我らの目的はただ一つ。世界の崩壊を未然に阻止することじゃ!』
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