ネガティブな太陽

タマクロー

文字の大きさ
2 / 5
~はじまりはじまり~

昼休み

しおりを挟む
午前中は業務の流れを説明をしてすぐに終わってしまった。
12時になり昼休み、ミツキは入社したばかりの池谷を気にかけた。

ミツキ「あ、池谷さん。お昼はどうします?」

池谷「えっと、職場の方に合わせようかと思います」

ミツキ「そっか!うちの会社既婚者が多いせいかお弁当ばかりだから、よかったら一緒に外食でもいい?」

池谷「はい、是非」

ミツキは前の会社で入社した最初は必ず上司に御馳走してもらった記憶があったため、奢ることにした。

ミツキ「ん~~ソバ屋か定食屋、どっちがいい?」

池谷「では、定食屋さんにします」

二人はミツキ御用達の定食屋に入った。


「いらっしゃいませーーー!」大きな掛け声と共に空腹を誘うような匂いが漂ってくる。

ミツキ「おばちゃん、二人で」

おばちゃん「はいよ、あれ今日は二人なんだね!」

ミツキ「はは、今日から入った子なんだ」

池谷「こんにちは」

おばちゃん「どーも、彼ここの常連なのよ。後輩連れてくるとは偉くなったわね~!」

おばちゃんは顔いっぱいの笑顔で言った。

ミツキ「いや~…はは、あ、今日の日替わり定食なに?」

おばちゃん「今日は竜田揚げ定食だよ!」

ここの竜田揚げはとても美味しく、ミツキは大好物だったため迷わなかった。

ミツキ「あ、俺それで。池谷は?ここにメニューあるけど」

池谷「私も同じもので大丈夫です」

おばちゃん「はいよー!日替わり2入りました~!」

大きな声が店内に響いた。


テーブルに運ばれてあったお茶を飲みながらミツキは言う。

ミツキ「竜田揚げでよかったの?」

池谷「はい、私竜田揚げ大好きなので」

ミツキ「よかった、ここのは美味しくてよく頼むんだ」

池谷「そうなんですね」




微妙な静寂が流れる。

ミツキは空気を読みすぎてしまう癖があり、こういった静かな時間は何か話さなくてはと思ってしまうタイプであった。

ミツキ「あ、、あのさ、前はどんな仕事してたの?」

この言葉を出した時、少し池谷の眉間にシワが寄ったのをミツキは見逃さなかった。

池谷「前職は…営業をしていました」

意外に思った。確かに池谷は一見元気そうで営業職に向いてそうだが、話をする感じではとても営業職をしていたとは思えないからだ。

ミツキ「そーなんだ、俺も実は営業してたんだ。寝る時間とれなくて辞めちゃったけどね」

池谷「そーでしたか。私も同じような理由ですね。自分の時間がなくなっていって、気づいたらなんで自分が今ここにいるのかもよくわからなくなってしまう時があったんです」

ミツキ「そっか…お互い大変だったね」

ミツキは地雷を踏んでしまったかと思った。池谷はおそらく前職であまりいい思いをしていなかったに違いない。転職をしてきたのだってきっとそれが理由だろう。

入社初日にまずいことをしたかと思った。

池谷「えぇ、だからもう仕事と感情を切り離す事にしたんで…


おばちゃん「日替わりの竜田揚げ定食お待ちどうさま!!!!」


ミツキ「え…?」

おばちゃんの声にかき消されたその言葉を、再度聞き返せないまま、昼休みは終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...