ネガティブな太陽

タマクロー

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日向と木陰

遭遇

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テレレレレレッ!テレレレレレッ!

ミツキ「うう~ん…」

アラーム音が鳴った。

いつも通り携帯から7時に鳴り、ミツキを起こした。

昔から寝起きはとてもいい、かといってすっきりしているわけではなく翌日何か予定がある時は過緊張状態なのかすぐ起きてしまう。

ミツキ「はぁ…だる…本当行きたくない…帰りたい…」

家に居るのに帰りたくなるという気持ちがミツキの心を蝕んでいた。

だるい体を瞬時に起こし、お茶を入れて無理矢理パンを流し込んでいく。

ミツキは朝必ずパンで、理由は流し込めるからである。本当は朝毎日胃が緊張しているような状態でモノを食べたくないのだが、

さすがに途中で空腹を感じる為、パンにしている。

ミツキは自分がよくわからない不安に襲われている事を理解したのは小学生の頃だった。

元々物心ついた頃から不安症気味であったが、小学生の頃に自分がいない間に家で家族がいなくなっているのではないかという想像が止まらず

学校にいけなかった時期もあった。登校中何度も吐き気に襲われた。

成長と共に良くなっていったが、社会人になってもまだ出勤という行為がとても苦手である。

ミツキ「あぁ…出るか」

ミツキはかなり早めに家を出る。理由は家にいるとどんどん不安が押し寄せてきてとても耐えられない。

外に出てしまえば多少仕事モードになるので気持ちを律する事ができた。

起きてから10分程度で家を出て、会社の近くにある公園のベンチでボーっとしながら音楽を聴くのが日課だった。

ミツキ「いってきます~」

誰もいない部屋をミツキは後にした。

最寄り駅へ向かう。

道のりは大体10分程度。

この日はとてもいい天気で朝から気持ちのいい快晴だった。

ミツキ「いつも通り、この時間は人がまだそんなに多くなくていいやぁ~」

歩いているとコンビニが見えてきた。

そういえば…

昨日コンビニで見た池谷の姿を思い出した。

他人の空似のような気がしてきた。

ミツキ「まぁまさかなぁ」


駅についてホームで電車を待っていると

あれ?

という声が後ろから聞こえた。

池谷「あの、もしかしてミツキさんですか」

ミツキ「え…あれやっぱり」

池谷「え?やっぱりとは…ミツキさん同じ駅に住んでたんですね」

ミツキ「あぁ!いや昨日コンビニで似た人みてさ」

池谷「えっっ!そうでしたか…」

ミツキ「おぉ!そうなんだよ。人違いかと思ったけどやっぱり本人だったんだね!」

池谷「はい、実家がこっちなのでそちらに住んでます」

ミツキ「そうだったんだ!」

池谷「ところで、ミツキさん出勤早いですね」

ミツキ「そういう池谷さんこそ早いね、どうしたの?」

池谷「はい、早めに出勤して近くにあった公園で気分転換してから行こうかと」

ミツキはマジか…と思った。おそらく同じ公園に向かうであろうと思った。

ミツキ「それって昨日行った定食屋さんの近く?」

池谷「はい、そうです。あの時見つけて」

ミツキ「実は俺いつも朝あそこでのんびりしてから出社してるんだ、まさに同じ理由で」

池谷「そうでしたか、では一緒に行きましょう」

ミツキ「え?あぁっおぉ!?」

池谷「どうしました?」

ミツキはきょどってしまった。

最初嫌がられるかと思っていた。

仮に自分が朝同じ仕事場の人間と同じ場所にいては気分も転換されない。

だから正直驚いた。

ミツキ「あぁ…池谷さんがいいなら!!」

池谷「はい。あ、あと呼び捨てでいいですよ。池谷で。一応ミツキさんの方が先輩ですし」

ミツキ「おぉ!わかった!ありがとう池谷!」

池谷「あ、あと」

ミツキ「ん?」

池谷「その無理して明るく振る舞ってる感じも禁止です」

ミツキは呆然とした。

今までこんなことを言われたのは初めてだった。

小さい頃から周りの空気を読んで生きてきたので自然に振る舞う方法というのは身に着けているつもりだった。

ミツキ「あ、あぁ。ありがとう」

1番線電車が参りますーーーー。

轟音と共にホームに電車が入ってきた。

それから社内で会社の最寄り駅まで着く間、人混みもあり終始二人は無言だった。

ミツキは池谷を時々ちらっと見た。

綺麗な黒い髪、健康的な褐色の肌。チラチラと横から見えるシュッと通った鼻筋と小さな鼻。

目は大きくその先にはいつもと変わらない景色を眺めている。

ミツキはドキドキしていた。

それがさっき言われた言葉に対してなのか

それとも彼女の横顔に対してなのかは今はまだわからなかった。
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