いずれ最強の少女 ~白き髪と紅の瞳~

カイゼリン

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本編

妹(フェアイト)あってこその兄(フェナカイト)である ②

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フェアはキメラ
そしてフェナカイトもキメラ
一体のキメラを分裂させ体をなじませてから戻そうとしていたのだ


「ここで1つ自己紹介でもしようか?神を改め、ロイ=ブルースだ」

ロイ=ブルース…手紙の主だ


「僕はキメラを応用して神へとなったんだ、まぁ神父には足りなかったようだけど」


神を信仰していた神父ではなく、キメラを作り出すこいつが神へとなってしまった
まぁ神父が神になってもどっち道の結果だったのかもしれない

「もう少しで君は、君達は元に戻るんだ。さぁ、フェア。僕と共に歩もう。昔みたいにさ。覚えていなくても僕が思い出させてあげるよ」


ドクンドクンと耳が、いや、イヤリングが脈を打つ
体が熱くなる。瞼が重たくなる。少しずつだが神が近づいてくるのが分かるものの、これから起こる残酷な未来が近づいてくるのは分からなかった


「この、ご主人はわらわのじゃ!」

モーントが止めに入る

「邪魔をしたないでくれ。長年生きていた君ならお利口にしてくれると思っていたんだけど?」

飛びかかった瞬間体が空中で硬直する
モーントが必死に抵抗するが動かない
後ろの2人も硬直している

「やめるのじゃ!禁忌じゃぞ!?お主はこの世界を、どうするつもりじゃ!元に戻したいのなら禁忌を起こすでない!それを行ったらどうなるのか分かっておろう?」

右手をフェナカイトの額にかざす
フワフワと体が軽くなっていくのと同時にもっともっと熱く熱く焦がし尽くすような熱を感じる
脈打つイヤリングはだんだんと弱まっていく


体が光に包まれる
体が軽くなりすぎて浮いているのではと思ってしまう
睡魔に身を任せてしまおうかとさえ思うほどに心地よい


「どうして…どうしてこんなことをするのじゃ…」

「こんな世界。僕は望まなかった…。こんなはずではなかった…欲望の塊みたいな世界はいらない。血にまみれた世界はいらない」

神は下を向き暗い顔をする
瞼をゆっくりと閉ざす
その瞼の向こうには何が映っているのか
前の世界か、それとも今か、愛する人か、自分の姿か
閉ざした瞼から暖かなものががこぼれでる

「だが、昔も今も自らの欲望に呑まれたものはいたじゃろ?」

自らの欲望を抑えれず手を伸ばし、闇に落ちていくものは表向きでは見られなかったかもしれない
けれどゼロではなかった
犯罪に手を染め、逃げ続け罪を罪として認識せずまた罪を犯す
軽い気持ちで行い、もう戻れなくなった
そんな者もいるだろう


「なんで、なんでみんな幸せにならないんだ…僕は幸せを望むのに、自らの手で幸せの逆に進んでしまう者もいる」


自分が楽しいから相手を傷つけていいのだろうか
その一言で傷つけるより、喜ばせる一言ら言えないのだろうか
私利私欲で動くのではなく、相手のためを思う気持ちはないのだろうか


「みんな、優しい心はあるはずなのに…なんで間違えるんだ」


「ー それが人間だから」

ふっと聞こえた言葉に皆目を丸くする

「間違いを犯してひとつ学ぶ。学んだことを活かして成長しようとして、失敗したり間違う。人間は間違えたくなくても間違えてしまうことがある」

誰から発せられる言葉なのか

「でも、その間違いで成長するから。成長するから100年近くも生きる」

モーントや神、全員がふわふわと光る方を見る

「もっと長生きする者もいる。けれども人間は成長を重ねて60年80年しか生きる人が多かったのに今では100年近くも生きる。日々学び、成長しているから」

光が薄くなり体の形が見えてくる

「いつかは死んでしまう。けれど死んでしまった人間からも学び成長し続ける。だから死者を復活させることはない。出来たとしてもそこで人間としての成長は無くなるか、もしくは成長が遅くなるだろう」

ゆっくりと地面に足がつく

「だから、間違うこともあっても、人間は色々なことを学ぶから。優しい心を忘れた訳では無いよ」

光が消え、

「ー 人間は成長するから」

そこにはフェナカイトとフェナカイトに抱えられたフェアイトが立っていた

「ご主人!!」
「な、!?」

よく見ると白い髪なのだが、赤と金のメッシュが入っている
赤い目は美しく宝石のようだ

「まぁ僕は人ならざるもの…だけどね」

苦笑いをすると神は目を鋭くする

「僕は、僕は、せめてフェアイトだけでも幸せにしてあげるんだ」

握りこぶしを作る
先程の優しそうな顔は一転し今にでも殺しにかかりそうだ


「どうして君を巻き添えにしたか教えてやるよ」


前に暴走していたフェアイトと合い、フェアイトは逃げることも殺すこともなかったので利用することにした
そしてフェナカイトは元は人間だったがある事件で死んだ
運命を変更させて事件を起こさせた
完全体とならず暴走したフェアイトに合体させることで抑えようとした

けれども体が拒絶反応を起こし、フェアイトが人間らしくなった姿(今の姿)と化け物の部分の二つに分かれた
その代わり、魂は結びついた
体は朽ち果てたので神が変わりに前に死んだ氷の暗殺者(ラリマー)の体を使った
魂を天使化させ余すことなく利用した
そのせいか行方不明扱いらしい

フェナカイトは氷の暗殺者の体を使うのだが、フェアに結びついた魂の3分の1を移したため完全ではなかった
そのため眠り着き、魂が成長したら外に送り出した

フェアイトは感情を作るために先に外に送り出した

そして完全体となったフェアイトとフェナカイトが合う
感情が成長していき、合体、もとい復元が可能となったのだ


「そして今、運命が狂い完全なフェアイトになるはずだったのだが変わってしまった。僕は、「でもフェアの事を思ったんだろ」」

「っ!」

目を大きく開いた
その目からは大粒の涙が溢れでる

「ただ、フェアイトがそばにいないことが愛おしい笑顔が見れないことが寂しかったんだ。ずっと一緒にいると思ってたのに、神様は僕を幸せにしてくれなかった。フェアイトを幸せにしてやらなかった。若くして死ぬだなんて、酷すぎる。だから、だから僕が神様になったんだ。この手でフェアイトを幸せにしてやろうと…」


涙は止まることを知らないかのように目を閉じても1つまた1つと地面にシミを作る


「神様になっても君は君を幸せにしてあげなかった神様と同じだよ」


崩れ落ちるように泣いている神の前にしゃがむ


「1人を幸せにするために何人もの人を犠牲にした。君を幸せにしなかったように、フェアが若くして死んでしまったように、君の手で多くの人を殺したんだ、幸せを潰したんだ。………けれどもね、運命はひとつじゃないと思うよ、いい運命があれば悪い運命があると思う、その運命の中で幸せを掴むんだ。掴めなくても命ある限りチャンスはある、フェアはここにいるだろ、君の中にも。作ろうとしなくていい、忘れない限り存在するんだ」

「だが、僕のフェアイトはここにいても世界ここにはいない」

ゆっくりと顔を上げると神はフェアの方を見る


フェアイトあの子は君の妹であって、僕の恋人ではない」

そう言うと神は立ち上がる


「僕は、神失格だ。人としても…本当にすまなかった」

「謝るのは僕じゃないけどね。僕はどのみち死ぬ運命なら得してるし。過去の過ちは戻せない。水の入ったコップは倒れてしまったらその水は戻せない。流れてしまった水の分以上に頑張れるかどうかだよ」

「そう…だね」


神もたくさん思うことがあるのだろう
けれども


「ずっと悔やんでいても前には進めないんだからさ、進みなよ。考えることよりも行動しなくちゃ始まらない」


振り返り口を神はゆっくりと開ける


「君はなんでそんなに強いんだい…」

「強いも弱いもないよ。あるとするなら前に進める勇気があるかどうかだ。僕も勇気はないけれど、前に進む以外には方法はないから。あったとしても僕は単純なことしか出来ないし」

「はは!フェアイトを助けるために危険でも突っ込んでくるもんな」


ニコニコと笑うその姿を始めてみてこちらもニコニコしてしまう
さっきまで冷たく、冷えきっていたのに暖かい顔だ


「この世界をもっと楽しんでもらう為にも頑張るかな。昔みたいに医療やら何やら発達してないけど君みたいな存在を信じているよ」

「あいにく人間でなく的な立ち位置になりつつあるけど」

「ま、まぁ人を食べる…なんて予想してないから。妖怪として覚醒するとは…」

今回の件で覚醒したが人としての力ではなく妖怪になってしまった
まぁモーントも妖怪みたいな感じだし、僕は…最初の行動から間違えたよな

「君のせいではないよ。この世界を楽しむ時間が増えただけだし」

「本当に前向きだな…さて戻るとするか。フェアイトを…「ロイくん!」フェアイト…?」


会話をしている間に記憶が…戻った?

いつも僕に抱きついてくるように神にフェアが飛びつく
力強く抱きしめる2人
んー…これ僕が覚醒しなかったら2人とも幸せend?

ま、まぁ僕だって生きたいし
死んだけど今生きてるんだもん!


「フェアイト!」

しっかりと離さないようにまわす腕
優しく人形を抱えるかのようにまわす腕
どちらも細いが思いのある腕

「ごめんな…本当に。このままでいたいけれど、ごめん」

「大丈夫…確かにロイくんのしたことは悪いことかもしれない。でも、また会えるよね?」

フェアが神と僕を交互に見る

「でも…」
「会えるんじゃないか?神…ロイが良かったらだけど。だって会うために頑張ったんだろ。そのくらいいいじゃんか」

「…いいのか?」

「兄さん!ロイくん!」

グッと僕に抱きついてくる
3人でハグだなんて…それに僕との記憶もあるのか

「「フェア(イト)は可愛いな」」

「2人とも…!ふふっ」


3人で馬鹿みたいに笑う
こんな未来、誰が予想しただろう。少なくとも僕は予想してなかった


「…名残惜しいけど僕はもどるよ」

「また会いに来てくれ」
「ロイくんも頑張ってね」

「じゃあね」

一言だけ残し姿を消した
まさか、僕は覚醒し、フェアは記憶を取り戻し、神は世界を変えることをやめる
こんな運命になるなんてな

「兄さん…」
「ん?」

ぐっと裾を掴まれる
フェアってこんなに弱々しい感じだったっけ?

「記憶が戻ったけど、今までと同じように接してくれる?見捨て「るわけあるか?」…ない!」

頭を撫でてやると嬉しそうに目を細める
本当に可愛い妹だな!

だろ?ずっと兄妹いっしょだよ」

「…兄さん!」

「まぁ、僕は性別が違うから兄?になるけど」

グイグイと頭を押し付けてくるから思いっきり撫でてやる
また一緒に笑えると思うと思いがこみあげてくる

「あぁーもう疲れたな。早く帰って寝るか?」
「うん!今日は兄さんと寝ていい?」
「もちろん…なんていうかこれロイがみたらなんて言うだろうな」
「確かに…でも兄さんもロイくんも2人とも好きだから!」

笑顔で心が満たされる、疲れが吹き飛びそうだ


そんなことを思っていると祝福をするかのように柔らかな風が頬を撫でて行った



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