35 / 49
本編
妹(フェアイト)あってこその兄(フェナカイト)である
しおりを挟む
帰ってきてダリオルがものすごく心配していた
「だ、大丈夫か?フェアイトは?」
フェアは…
言おうと思ってもそれを脳が拒む
現実を受け止めなくてはいけないのに
ずっと俯いていると
「……そうか」
ポンっと頭に手を置く
「しっかり休め、しばらく帰ってこなくてもお前なら大丈夫だ。お前は昔より成長したよ」
それ以上言わずに立ち去った
あえて深く言わないのがダリオルの優しさだろう
また泣きそうだ
目の奥が熱くなるがぎゅっと強く目を瞑る
ーーー
外に出ていつもの店に入る
そしてハートを渡す
「これを…ピアスにか?こんなに純度の高いのは初めて見たなあ、嬢ちゃん………今回は無料にしてやる。ピアッサー持ってくる」
渡されたピアッサー
自分で耳に穴を開けるのが怖かったがこの痛みとピアスがフェアがいたことを忘れさせないだろう
目を閉じぐっと力を入れる
ガチャコン
初めて耳に穴を開けた
少しヒリヒリするが大丈夫、成功だ
金のリングに着いたピンクの宝石がキラキラと室内の光にあたり反射する
「ありがとう」
「お安い御用よ」
___
さて…これからどうしようかな
ただ散歩もするのもありだけど…
自分より背の低い女の子がぴょんぴょん跳ねるように走っていった
「フェア…」
先程つけたイヤリングを撫でる
目を閉じればフェアの笑顔と消えていくあの日の光景が今ここで起きているのではないかと思うくらい生々しく思い出す
やっぱり帰ろう
熱くなった目の奥を冷ますように目を開く
ゆっくりと重たい足取りだった
___
ぼふっとベッドにダイブする
一応学校に入っているがみんな話しかけては来ない
逆に哀れんでいるようだった
休日とはいえ嬉しくもない
何せやることがないから
ダリオルも話しかけてはくれるが依頼を渡したり、クエストに行こうともしない
ダリオルも悲しいのだろう、理由は知らなくとも
ボーッと天井を眺めていると
「元気だしたらどうです?」
ヌッと夜叉が出てきた
「クヨクヨしていたって何も変わりませんよ。あなたにはあのキメラわ倒すくらいの実力があるのですから。元気を出して外に出たらいいと思いますよ。勇気を出すことも成長への1歩です」
半分くらい聞き流す
はぁ…使い魔のくせに、この感情は…
使い魔?
「なぁ…夜叉。フェアの使い魔…えっと…?」
「フェンリル…ですか?」
「そうそうそう、それ。こっちに居るなんてことは…ない…よな…」
いるわけがない
使い魔は主人が生きていなければ、ここには居られない
そもそも呼び出しがかからないからこちらに来る必要がない
使い魔にも例外はいるがフェンリルは来ないだろう
というか、命の契約だった場合、フェンリルは死んでいるだろう
「フェンリル……フェンリル…。居ました。というか__」
バンッッッ!!!!!!!!!!
「フェナカイト殿!!!!!!!!」
「ちょうど来ましたね」
フェンリルが来る…まさか?
「主が居ないのです!探してみても見つからなく…命の契約をしているものですから、コチラからも場所はわかるはずなのですが…」
フェアの場所は分からない、けれど生きている
ここにフェンリルがいるのだ、必ず生きている
「どこら辺まで探したの?」
「全域です。この世界の……ですが1箇所だけ探せない、魔力がなく探そうにも探せない場所がありました」
__もしかしてそこに?
「モーント様なら知っているのでは?」
確かに、夜叉の言う通りだ
僕達よりも前に生きていたのだ、知っている可能性が高い
「モーント!」
「わらわを呼んだかの?」
空いたままのドアから顔を出す
前よりも体が小さい、この場所に配慮してくれたのだろう
けれども毛はモコモコと増えている
「話は聞いておったぞ…そこの場所だが言ってはならぬ」
「なんで?でもそこにフェアがいる可能性が高いんでしょ?なら行くよ」
フェアが生きている可能性が1パーセントもあるならば必ずそこへ行く
フェアは、フェアは大切な家族だ
「それでもダメじゃ。ご主人が行くとこの世界にも何かしらの影響があると見る。それに、そこの場所は魔力もないのじゃ」
普通は魔法を出す時体内にある魔力だけでなく、外の魔力も使う。だから魔法は弱体化する
けれどもそれだけなのだ
僕には魔力がそれなりにある
何かあっても対応はできるはずだ
「とにかく、魔力がない所に行ってはならないのじゃ」
「とにかくフェアが生きてるなら行く!」
「ダメじゃ!」
鋭い眼差しが僕の思考に刺さる
否定されるということを受け止めたくない
必ずでは無いけれども、1パーセントでもいい、それ以下でもいい。0パーセント出ないのならばそれにかける
とにかくフェアに会える可能性があるのならば
「…それはフェアに会わせたくないから?」
「違う」
「別の理由?」
「そうじゃ」
「フェアはそこにいる?」
「可能性はあるの…だが行ってはならぬ」
嫌だ。フェア…僕は、僕…は、フェアがいなかったらダメなんだ。初めてできた妹なんだ。家族なんだよ…
「主のため(です)、俺(わたくし)も行く(行きましょう)。だから頼む(頼みます)」
「お願いします…お願いします…フェアに、フェアにっ、会いたい…」
はぁ…と重たいため息が静かになったこの部屋に吸い込まれていく
「しょうがないのぉ…わらわも行くとするか、本当は行かせたくないのじゃがなぁ」
「だ、大丈夫か?フェアイトは?」
フェアは…
言おうと思ってもそれを脳が拒む
現実を受け止めなくてはいけないのに
ずっと俯いていると
「……そうか」
ポンっと頭に手を置く
「しっかり休め、しばらく帰ってこなくてもお前なら大丈夫だ。お前は昔より成長したよ」
それ以上言わずに立ち去った
あえて深く言わないのがダリオルの優しさだろう
また泣きそうだ
目の奥が熱くなるがぎゅっと強く目を瞑る
ーーー
外に出ていつもの店に入る
そしてハートを渡す
「これを…ピアスにか?こんなに純度の高いのは初めて見たなあ、嬢ちゃん………今回は無料にしてやる。ピアッサー持ってくる」
渡されたピアッサー
自分で耳に穴を開けるのが怖かったがこの痛みとピアスがフェアがいたことを忘れさせないだろう
目を閉じぐっと力を入れる
ガチャコン
初めて耳に穴を開けた
少しヒリヒリするが大丈夫、成功だ
金のリングに着いたピンクの宝石がキラキラと室内の光にあたり反射する
「ありがとう」
「お安い御用よ」
___
さて…これからどうしようかな
ただ散歩もするのもありだけど…
自分より背の低い女の子がぴょんぴょん跳ねるように走っていった
「フェア…」
先程つけたイヤリングを撫でる
目を閉じればフェアの笑顔と消えていくあの日の光景が今ここで起きているのではないかと思うくらい生々しく思い出す
やっぱり帰ろう
熱くなった目の奥を冷ますように目を開く
ゆっくりと重たい足取りだった
___
ぼふっとベッドにダイブする
一応学校に入っているがみんな話しかけては来ない
逆に哀れんでいるようだった
休日とはいえ嬉しくもない
何せやることがないから
ダリオルも話しかけてはくれるが依頼を渡したり、クエストに行こうともしない
ダリオルも悲しいのだろう、理由は知らなくとも
ボーッと天井を眺めていると
「元気だしたらどうです?」
ヌッと夜叉が出てきた
「クヨクヨしていたって何も変わりませんよ。あなたにはあのキメラわ倒すくらいの実力があるのですから。元気を出して外に出たらいいと思いますよ。勇気を出すことも成長への1歩です」
半分くらい聞き流す
はぁ…使い魔のくせに、この感情は…
使い魔?
「なぁ…夜叉。フェアの使い魔…えっと…?」
「フェンリル…ですか?」
「そうそうそう、それ。こっちに居るなんてことは…ない…よな…」
いるわけがない
使い魔は主人が生きていなければ、ここには居られない
そもそも呼び出しがかからないからこちらに来る必要がない
使い魔にも例外はいるがフェンリルは来ないだろう
というか、命の契約だった場合、フェンリルは死んでいるだろう
「フェンリル……フェンリル…。居ました。というか__」
バンッッッ!!!!!!!!!!
「フェナカイト殿!!!!!!!!」
「ちょうど来ましたね」
フェンリルが来る…まさか?
「主が居ないのです!探してみても見つからなく…命の契約をしているものですから、コチラからも場所はわかるはずなのですが…」
フェアの場所は分からない、けれど生きている
ここにフェンリルがいるのだ、必ず生きている
「どこら辺まで探したの?」
「全域です。この世界の……ですが1箇所だけ探せない、魔力がなく探そうにも探せない場所がありました」
__もしかしてそこに?
「モーント様なら知っているのでは?」
確かに、夜叉の言う通りだ
僕達よりも前に生きていたのだ、知っている可能性が高い
「モーント!」
「わらわを呼んだかの?」
空いたままのドアから顔を出す
前よりも体が小さい、この場所に配慮してくれたのだろう
けれども毛はモコモコと増えている
「話は聞いておったぞ…そこの場所だが言ってはならぬ」
「なんで?でもそこにフェアがいる可能性が高いんでしょ?なら行くよ」
フェアが生きている可能性が1パーセントもあるならば必ずそこへ行く
フェアは、フェアは大切な家族だ
「それでもダメじゃ。ご主人が行くとこの世界にも何かしらの影響があると見る。それに、そこの場所は魔力もないのじゃ」
普通は魔法を出す時体内にある魔力だけでなく、外の魔力も使う。だから魔法は弱体化する
けれどもそれだけなのだ
僕には魔力がそれなりにある
何かあっても対応はできるはずだ
「とにかく、魔力がない所に行ってはならないのじゃ」
「とにかくフェアが生きてるなら行く!」
「ダメじゃ!」
鋭い眼差しが僕の思考に刺さる
否定されるということを受け止めたくない
必ずでは無いけれども、1パーセントでもいい、それ以下でもいい。0パーセント出ないのならばそれにかける
とにかくフェアに会える可能性があるのならば
「…それはフェアに会わせたくないから?」
「違う」
「別の理由?」
「そうじゃ」
「フェアはそこにいる?」
「可能性はあるの…だが行ってはならぬ」
嫌だ。フェア…僕は、僕…は、フェアがいなかったらダメなんだ。初めてできた妹なんだ。家族なんだよ…
「主のため(です)、俺(わたくし)も行く(行きましょう)。だから頼む(頼みます)」
「お願いします…お願いします…フェアに、フェアにっ、会いたい…」
はぁ…と重たいため息が静かになったこの部屋に吸い込まれていく
「しょうがないのぉ…わらわも行くとするか、本当は行かせたくないのじゃがなぁ」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる