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ずっと、ずっと、この日を夢見ていた。

*****

「初めまして。蓮見はすみ千歳ちとせです。最初は分からないことだらけで、ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、一日も早く会社に貢献できるよう頑張りますので、ご指導のほどよろしくお願いします」

凛とした声で挨拶を終え、薄く微笑んでみせると、先輩社員たちは予想通りの軽いざわめきと、まばらな拍手で私を迎えた。

私が今日から就職した化粧品会社eternoエテルノは、父が代表を務めるLotusロータスの子会社だ。
子会社の社員とはいえ、「蓮見」の名を名乗れば、即、親会社の社長を連想できる程度に、父は会社でも業界でも影響力のある存在だ。
そんな父には内緒で、三次まであったeternoの就職試験を乗り越え、自力で採用に漕ぎ着けたまでは、長年の計画どおり。

だけどー

椎名しいな晴臣はるおみです。よろしくお願いします」

まさか私だけでなく、晴臣までeternoに入社してくるなんて。

つい、険しい顔で睨みつけていると、目が合ってしまった。

自分の席に戻りながら人差し指でトントンと自分の眉間を二度叩き、小馬鹿にしたような顔で「ブスになってるぞ」と合図してくる。
更に顔をしかめて見せると、晴臣は私とは真逆の方向に視線を走らせた。

わざわざ教えてくれなくたって分かっている。
入社式が行われる大ホールに入ったときから、私の全神経はに集中している。

幼い頃から飽きるほど顔を合わせている晴臣なんかの顔を見ていたのは、すぐに舞い上がってしまいそうな気持ちを紛らわせるためだ。

さっきの挨拶だって、落ち着いているふりをしていたけれど、内心は感動で泣き出してしまいそうだった。

―ずっと想い続けてきた、私の叔父であり、eternoの代表取締役である、手塚てづか遼平りょうへいと、姪としてではなく、「蓮見千歳」という一人の人間として同じ空間に立っているー

長年描き続けてきた夢が、やっと叶ったのだからー。
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