59 / 173
9ー5
しおりを挟む
「わっ。何アレ~?もしかして椎名くん、浮気??」
背後から突然湧いて出た真由先輩に、ほんの一瞬体が宙に浮いた。
「や、やめてくださいよ、真由先輩!!びっくりするじゃないですか!!」
ごめんねと謝りながらも、真由先輩の顔は妙にイキイキしている。
「でも、そんなに驚いちゃったのって、夫の浮気現場目撃しちゃった妻の心境だったからなんじゃないの??社長は全然驚いてなかったし」
「そ、そんなことありません!!」
実際、晴臣の表情は駆け寄って来た女子社員の嬉しそうな顔とは対象的だった…と思う。
「えー?そうかなぁ??椎名くんってカッコいいけど、愛想良い方じゃないよね?その割にあのコとは親しげに話してるように見えますよね、社長?」
「言われてみればそうかもしれないけど、彼が一番心を許してるのは間違いなく蓮見さんでしょ。面白がって変なこというんじゃないよ、織田村」
「…はい、すみません」
今度こそしおらしく謝る真由先輩を横目に、前方にいる晴臣の様子を覗うと、こちらには一瞥もくれずに、話を続けながらエレベーターに乗り込んでいった。
ドアが閉まったのと同時に、上手く表現できない感情がモヤモヤと胸に立ち込めたのは、久々に会ったのに、余計なことを言われたから。
決して、晴臣とあのコとのことが気になってるからじゃない。
パンパンと指摘された頬を両手で包んで確かめていると、遼平が真由先輩に尋ねた。
「ところで織田村、週末の飛行機のチケット取れたの?」
「はい、社長の分ももう手配してあります」
え?
今、週末って言った?
「飛行機のチケットってもしかして、今回の撮影の…?」
「あれ?言ってなかったっけ?じゃあ、今言っとくね。今回の撮影、泊まりだから。準備よろしくね」
ポンッと私の肩を叩きながら、チラと遼平くんに視線を走らせる真由先輩に、今回の撮影のもう一つの目的に気付く。
遼平くんと別れ、販促部まで戻ってきたところで、真由先輩の腕を部屋の隅まで引っ張り込んだ。
「ちょっと、真由先輩!何考えてるんですか!?」
「えー?何のこと??」
典型的なぶりっ子ポーズでしらばっくれる姿を見て確信する。
「すっとぼけないでください!わざわざ泊まりの撮影だなんて、何か企んでるに決まってるでしょ!?」
「そんなことないわよ。今回はクリスマスコフレ用のポスターだから、Classic Palaceとは違った、カラフルなステンドグラスを使った施設を探したら、たまたま遠方だっただけよ。ほら!」
早口でまくし立てながら見せてきたスマホの画面には、確かに壁全体にステンドクラスが貼られている、美しい建物が映し出されていた。
これは、本当に見事だ。
モデルはともかく、すごく雰囲気あるポスターになりそう。
早とちりだった!?
と、居心地の悪さを感じていていると、
「けどまあ…椎名くんがあんな調子だし、何か企むのも悪くないかも~、なんてさっき思っちゃったけどね」
ほくそ笑む真由先輩に、直前に感じた罪悪感が吹っ飛ぶ。
勢いに任せて食後に過ぎった例の件もぶつけてみた。
「ほら!さっきのはやっぱりそういう顔だったんじゃないですか!…あ、そうだ!まさかアレも真由先輩の仕業じゃないですよね!?」
「アレ?何のことよ?」
「私のSNSにアップされまくってる遼平くんと私の写真!!」
背後から突然湧いて出た真由先輩に、ほんの一瞬体が宙に浮いた。
「や、やめてくださいよ、真由先輩!!びっくりするじゃないですか!!」
ごめんねと謝りながらも、真由先輩の顔は妙にイキイキしている。
「でも、そんなに驚いちゃったのって、夫の浮気現場目撃しちゃった妻の心境だったからなんじゃないの??社長は全然驚いてなかったし」
「そ、そんなことありません!!」
実際、晴臣の表情は駆け寄って来た女子社員の嬉しそうな顔とは対象的だった…と思う。
「えー?そうかなぁ??椎名くんってカッコいいけど、愛想良い方じゃないよね?その割にあのコとは親しげに話してるように見えますよね、社長?」
「言われてみればそうかもしれないけど、彼が一番心を許してるのは間違いなく蓮見さんでしょ。面白がって変なこというんじゃないよ、織田村」
「…はい、すみません」
今度こそしおらしく謝る真由先輩を横目に、前方にいる晴臣の様子を覗うと、こちらには一瞥もくれずに、話を続けながらエレベーターに乗り込んでいった。
ドアが閉まったのと同時に、上手く表現できない感情がモヤモヤと胸に立ち込めたのは、久々に会ったのに、余計なことを言われたから。
決して、晴臣とあのコとのことが気になってるからじゃない。
パンパンと指摘された頬を両手で包んで確かめていると、遼平が真由先輩に尋ねた。
「ところで織田村、週末の飛行機のチケット取れたの?」
「はい、社長の分ももう手配してあります」
え?
今、週末って言った?
「飛行機のチケットってもしかして、今回の撮影の…?」
「あれ?言ってなかったっけ?じゃあ、今言っとくね。今回の撮影、泊まりだから。準備よろしくね」
ポンッと私の肩を叩きながら、チラと遼平くんに視線を走らせる真由先輩に、今回の撮影のもう一つの目的に気付く。
遼平くんと別れ、販促部まで戻ってきたところで、真由先輩の腕を部屋の隅まで引っ張り込んだ。
「ちょっと、真由先輩!何考えてるんですか!?」
「えー?何のこと??」
典型的なぶりっ子ポーズでしらばっくれる姿を見て確信する。
「すっとぼけないでください!わざわざ泊まりの撮影だなんて、何か企んでるに決まってるでしょ!?」
「そんなことないわよ。今回はクリスマスコフレ用のポスターだから、Classic Palaceとは違った、カラフルなステンドグラスを使った施設を探したら、たまたま遠方だっただけよ。ほら!」
早口でまくし立てながら見せてきたスマホの画面には、確かに壁全体にステンドクラスが貼られている、美しい建物が映し出されていた。
これは、本当に見事だ。
モデルはともかく、すごく雰囲気あるポスターになりそう。
早とちりだった!?
と、居心地の悪さを感じていていると、
「けどまあ…椎名くんがあんな調子だし、何か企むのも悪くないかも~、なんてさっき思っちゃったけどね」
ほくそ笑む真由先輩に、直前に感じた罪悪感が吹っ飛ぶ。
勢いに任せて食後に過ぎった例の件もぶつけてみた。
「ほら!さっきのはやっぱりそういう顔だったんじゃないですか!…あ、そうだ!まさかアレも真由先輩の仕業じゃないですよね!?」
「アレ?何のことよ?」
「私のSNSにアップされまくってる遼平くんと私の写真!!」
1
あなたにおすすめの小説
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
冷酷な王の過剰な純愛
魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、
離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。
マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。
そこへ王都から使者がやってくる。
使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。
王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。
マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。
・エブリスタでも掲載中です
・18禁シーンについては「※」をつけます
・作家になろう、エブリスタで連載しております
婚約者に裏切られたその日、出逢った人は。
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
……一夜限りの思い出、のはずだった。
婚約者と思っていた相手に裏切られた朝海。
傷心状態で京都の町をさまよっていた時、ひょんな事から身なりの良いイケメン・聡志と知り合った。
靴をダメにしたお詫び、と言われて服までプレゼントされ、挙句に今日一日付き合ってほしいと言われる。
乞われるままに聡志と行動を共にした朝海は、流れで彼と一夜を過ごしてしまう。
大阪に戻った朝海は数か月後、もう会うことはないと思っていた聡志と、仕事で再会する──
【表紙作成:canva】
番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。
そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。
お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。
愛の花シリーズ第3弾です。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる