【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

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13ー1

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晴臣の姿が完全に見えなくなると、私はフロントに電話をかけ、氷など必要なものを準備してもらい、遼平くんの頬を簡単に手当てした。

程なくして旅館を出て、飛行機に乗るまでの間、一緒に来たメンバーとは誰とも会わなかった。

犯人とその動機を早く知りたかった反面、ほっと胸を撫で下ろす。

だって、遼平くんが、ずっと私の手を握っていたから。
SNSにあんな写真まで公開されているし、今更隠すつもりはない。
だけど、色々なことがあり過ぎて、まだとても上手く説明できる自信まではなかった。

轟音を立てて飛行機が飛び立つ。
小窓から遼平くんとの始まりの地であり、晴臣との終わりの地が、あっという間に小さくなっていくのを眺める。
そんな私の手を、遼平くんは隣でずっと握り続けていた。

飛行機を降りると、空港まで車で来ていた遼平くんが自宅まで送ってくれることになった。

「先に一度うちのマンションに寄ってもいいかな?」

特に帰りを急ぐ理由はない。
むしろ家に帰れば父…それもSNSを見たであろう、誰よりも説明が大変な父が待ち構えていると思うと願ったり叶ったりだった。

「うん」と返事をすると、車を発進させた遼平くんの運転は、いつもよりほんの少し荒い気がした。


遼平くんのマンションに着く頃には、日が落ちかけていた。

「ちーちゃんも一緒に来て」

エンジンを止めるなり言われて面食らう。

てっきり自分は車で待っておけばいいと思い込んでいた私の手を急かすように引いて、遼平くんが真っ直ぐ向かった先は書斎だった。

勢いよく窓が開け放たれ、やや籠っていた室内に冷やっとした外の空気が流れ込んで来て、私の頬を撫でた。

そして、次の瞬間ー

遼平くんは、突如永美ちゃんの写真の前に置いてあったエンゲージリングを掴むと、何の躊躇いもなく振りかぶって、窓から投げた。

大粒のダイヤは、夕陽の光を受けて煌きながら放物線を描き、マンション裏を流れる川に音もなく吸い込まれた。

「遼平くん!?何てことを…!?」

悲鳴に近い叫び声を上げると、力いっぱい抱きしめられた。

「…もういいんだ。僕にはちーちゃんがいるから。それを、一刻も早く伝えたかった」

「でも…ここまでする必要…」

「どうしても、僕がしたかったんだ」

年上の遼平くんには不適切かもしれないけれど、いじらしさで胸がいっぱいになる。

「僕を選んでくれてありがとう。…本当に…嬉しかった。絶対、大切にする」

デスクの上にはまだ永美ちゃんの写真が残されていたけれど。
罪悪感に蓋をして、私は自分から唇を重ねた。
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