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epilogue 1
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晴臣の帰国から約半年。
秋晴れの今日、私と晴臣は結婚式を挙げる。
「はい、一丁上がり。ベールは邪魔になるから、直前に着けようね」
「ありがとうございます、松本さん」
「キレイよ、蓮見ちゃん!三年前より更にキレイ!!」
「真由先輩も、ありがとうございます」
ヘアメイクを誰に頼むか決めるとき、真っ先に松本さんの顔が頭に浮かんだ。
そこで、遼平くんを通してお願いしたら、二つ返事で快諾してもらえて、今に至る。
真由先輩も居るのは、どうしてもいつかの罪滅ぼしをしたいと、休日返上で松本さんのアシスタント役を買って出てくれたからだ。
「そう言えば、知ってる?」
パシャパシャと色々な角度から私の写真を撮りまくりながら、真由先輩が尋ねる。
「何をですか?」
「飛鳥のことよ。噂で聞いたんだけど、結婚詐欺に遭ったらしいわよ。貢ぐだけ貢がされて、逃げられちゃったんだって。ほんと、ざまぁwwwよね」
こんな日に人の不幸を喜ぶのは憚られて、口に出して同調こそしなかったものの、胸が勝手にスカッとしてしまった。
「さてと、そろそろあのふてぶてしい新郎を呼んで来てあげるわね」
そう言って、真由先輩がメイク道具をしまい終わった松本さんと部屋から出て行ったのと入れ替わりにノックの音がした。
「僕だけど、支度終わった?入っていいかな?」
ドアの向こうから響いたのは、遼平くんの声だった。
「どうぞ」と返事をすると、いつものビジネススーツとは少し違う、ディレクターズスーツ姿の遼平くんが部屋に入ってきた。
「ごめんね、突然。どうしても椎名くんより先に可愛い姪っ子の花嫁姿が見たくて。松本と織田村に協力してもらったんだ」
謝りながら、遼平くんの顔がクシャリと歪んでいく。
「本当に…綺麗だ」
セットした髪が乱れないよう、そっと頭を撫でられる。
「初めて会ったとき、君はまだ制服姿の中学生だったのに…もうこんな綺麗な花嫁になって椎名くんのものになるんだね…」
「遼平くんが松本さんに話を通してくれたお陰だよ。ありがとう」
「僕がちーちゃんにしてあげられるのは、これくらいだから。あとは、永美と一緒に、ずっと、ずっと、君の幸せを願ってる」
永美ちゃんはここにいないのに、遼平くんを通して確かにその存在を感じた。
優しい笑顔が寂しそうじゃないと言えば嘘になる。
でも、遼平くんは、失ってからもなお思い続けることで、永美ちゃんを自分の一部にしていっているんだ。
それを目の当たりにして、心底この人が叔父で良かったと思った。
「…ありがとう。遼平くん、永美ちゃん」
言った途端、涙が溢れてしまった。
「ダメだよ、泣いちゃ。僕が松本に叱られる」
亮平くんがポケットからハンカチを出して、涙を拭いてくれていると、ドアの向こうが急に騒がしくなった。
秋晴れの今日、私と晴臣は結婚式を挙げる。
「はい、一丁上がり。ベールは邪魔になるから、直前に着けようね」
「ありがとうございます、松本さん」
「キレイよ、蓮見ちゃん!三年前より更にキレイ!!」
「真由先輩も、ありがとうございます」
ヘアメイクを誰に頼むか決めるとき、真っ先に松本さんの顔が頭に浮かんだ。
そこで、遼平くんを通してお願いしたら、二つ返事で快諾してもらえて、今に至る。
真由先輩も居るのは、どうしてもいつかの罪滅ぼしをしたいと、休日返上で松本さんのアシスタント役を買って出てくれたからだ。
「そう言えば、知ってる?」
パシャパシャと色々な角度から私の写真を撮りまくりながら、真由先輩が尋ねる。
「何をですか?」
「飛鳥のことよ。噂で聞いたんだけど、結婚詐欺に遭ったらしいわよ。貢ぐだけ貢がされて、逃げられちゃったんだって。ほんと、ざまぁwwwよね」
こんな日に人の不幸を喜ぶのは憚られて、口に出して同調こそしなかったものの、胸が勝手にスカッとしてしまった。
「さてと、そろそろあのふてぶてしい新郎を呼んで来てあげるわね」
そう言って、真由先輩がメイク道具をしまい終わった松本さんと部屋から出て行ったのと入れ替わりにノックの音がした。
「僕だけど、支度終わった?入っていいかな?」
ドアの向こうから響いたのは、遼平くんの声だった。
「どうぞ」と返事をすると、いつものビジネススーツとは少し違う、ディレクターズスーツ姿の遼平くんが部屋に入ってきた。
「ごめんね、突然。どうしても椎名くんより先に可愛い姪っ子の花嫁姿が見たくて。松本と織田村に協力してもらったんだ」
謝りながら、遼平くんの顔がクシャリと歪んでいく。
「本当に…綺麗だ」
セットした髪が乱れないよう、そっと頭を撫でられる。
「初めて会ったとき、君はまだ制服姿の中学生だったのに…もうこんな綺麗な花嫁になって椎名くんのものになるんだね…」
「遼平くんが松本さんに話を通してくれたお陰だよ。ありがとう」
「僕がちーちゃんにしてあげられるのは、これくらいだから。あとは、永美と一緒に、ずっと、ずっと、君の幸せを願ってる」
永美ちゃんはここにいないのに、遼平くんを通して確かにその存在を感じた。
優しい笑顔が寂しそうじゃないと言えば嘘になる。
でも、遼平くんは、失ってからもなお思い続けることで、永美ちゃんを自分の一部にしていっているんだ。
それを目の当たりにして、心底この人が叔父で良かったと思った。
「…ありがとう。遼平くん、永美ちゃん」
言った途端、涙が溢れてしまった。
「ダメだよ、泣いちゃ。僕が松本に叱られる」
亮平くんがポケットからハンカチを出して、涙を拭いてくれていると、ドアの向こうが急に騒がしくなった。
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