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社長の大失敗 5
しおりを挟む月日は流れー
郊外の、レトロモダンな結婚式場。
俺はあの日、自制の効かなかった自分自身に、激しく自己嫌悪していた。
今日はいよいよ結婚式。
この日が来て欲しくないと、どれだけ願ったことか。
でも、どれだけ後悔したってもう遅い。
純白のウエディングドレスが恨めしいー。
「汝、真田全は、天澤菫を妻とし、病めるときも健やかなる時もこれを愛し、敬い、慰め、助け、命の限り固く節操を守ると違いますか?」
「誓います」
「汝、天澤菫は、真田全を夫とし、病めるときも健やかなる時もこれを愛し、敬い、慰め、助け、命の限り固く節操を守ると違いますか?」
「…誓います」
「それでは、誓いのキスをー」
あの、熱い夜の後、程なく葵の妊娠が発覚。
真田会長と真田律から半殺しにされながら、真田律と瑠美の結婚式の翌月に、俺たちも結婚した。
そして俺たちの長女、菫は、早産だった結果、真田律達の長男、全と同学年で産まれー
この二人が、惹かれ合わないわけがない。
事あるごとに真田律が全くんを連れてうちに来ていたため、二人が幼い頃から仲が良いのはもちろんこの目で見てきた。
でも、俺の知らないところで、あんなことや、こんなことになっていたらしく、全くんが医学部を卒業したのと同時に結婚してしまったのだ。
何でこうなる事を予想して、我慢できなかったんだ!
あの日の俺!!
「もう…またそんな眉間に皺寄せて…」
披露宴後、気の遠くなるような数の参列者を見送ると、俺の隣で、葵が窘めて来た。
出会ってから四半世紀。
真田家のDNAの力なのか、葵は益々美しさを増している。
でも、いくら可愛い妻から小言を言われからといって、どうしてにこやかでいられるだろうか。
「まさか菫が全くんと結婚するなんてーー」
ロビーのソファで頭を抱える。
ただでさえ、目に入れても痛くないほど可愛いがってきた一人娘の結婚。
更に、菫は葵に、全くんは真田律にそっくりだ。
俺にとっては葵と真田律の結婚式をみせられているようで、ショックが二倍だ。
「アオ、お疲れ。何やって…ってなんだ、タレ目も一緒か」
なんだとはなんだ!
と言いたいが、娘の嫁ぎ先の人間にそんなこと言うわけにもいかず。
むくれたまま口を噤む。
「あ、りっちゃん。今日はお疲れ様。あれ?瑠美さんは?」
「疲れたからって先に帰った。今日は実家に帰って、オニイサマに慰めてもらうんだと。ってことで俺今日時間あるんだ。アオもせっかくドレスアップしてるんだし、上のバーで一杯飲んで帰るか?」
流石にこれは聞き捨てならない。
「…ちょっとりっちゃん。夫の前で人妻ナンパするのやめてくれる?大体、葵はお酒飲めないの知ってるでしょ?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる?」
真田律は、未だにこんな風にして、俺がちゃんと葵を大事にしているかを確認してくる。
そして、きょうだいという絆を得た真田律は、真田家の当主として、本来の姿を取り戻しただけでなく、葵からの信頼も徐々に取り戻した。
今では…特に菫と全くんの結婚が決まってからは、俺が出会った頃の二人のような雰囲気が漂うこともしばしばで…。
「でも、そう言えば、この前本家でちょっとだけ飲ませてもらったときは結構大丈夫だったよね?」
「えっ?それいつの話!?」
「タレ目がインドネシアだかどっかに出張行ってる時だよ」
「何それ!?聞いてないし!!」
「心配するな。何もやましいことなんてない。ただ…」
眉間に一層深く皺の入った俺を見て、真田律がニヤリと笑い、俺の耳元で囁いた。
「お互い子どもも立派に育て上げたし、そろそろ離婚して一緒になろうかって話してただけ」
「なっ!?葵!?」
思わず怒鳴った俺を、葵がキョトンと見上げている。
「…眠ってる葵に向かってな」
このやろーーーーっ!!
「やっぱり絶っっっっ対、俺よりりっちゃんの方が腹黒い!!」
真田律と俺の攻防は、多分一生続く。
THE END
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