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頑なな花(高嶺Side)

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気まずさの中にも少し期待してしまうのは、高校の頃にも同じようなことがよくあったから。

女子に囲まれた俺を遠巻きに見る静花の目は、酷く不安げで、悲しげで。
だからと言って、決して何か言ってくるわけではない。
静花の、思ったことを飲み込んでしまう口より、よほど多弁な瞳を見るのが、密かに好きだった。

でも─

ちらりと静花の方を見れば、期待通りの反応とは程遠く。
もう、俺の方など見てはいなかった。

それどころか、静花しか見えてなくて気づかなかったが、静花の隣には見知らぬ男が立っていて、談笑しながら俺の横を通り過ぎて行った。

Love Birdsの客?
それとも…?

10年も会えなくて。
それも、あんな何も言わず突然消えられて、不安がないわけがない。

俺なりに理由を探して、必死で変えた。
見た目も、進路も。

それでも再会後、俺を俺と認識した途端、静花の目は確かに俺を好きだと云っていたから。
静花が俺の前から消えた理由なんてどうでもいいと思えるくらい、浮かれていた。

ちゃんと話をしなきゃいけなかったのに。

「音無」

まだ周りに連れが居るのも忘れて声を掛けたが、静花は振り向かない。
『急用なんで、これで』と断ってから、どんどん遠ざかっていく静花を追いかける。

多分、次の会合で根掘り葉掘り聞かれること間違いなしだが、今の俺にはそんなことどうでも良かった。

静花・・!」

名前で呼びかけて、やっと足が止まった。

「静花さん、知り合い?」

近寄ろうとする俺から庇うように、一緒にいた男が俺と静花の間に立ちはだかった。

この間追い払った男とは違う。
野暮ったさなんて微塵もない。
つまり、Love Birdsの客ではない。

なのに、こんな時間にこんな所飲み屋街を二人で歩いてるってことは、つまり。

前代未聞の事態に頭がついていかない。

外見や進路は変えられた。
でも、変えられなかった本質的な部分─

短気、我儘、喧嘩っ早い

─は、こういう時に出てくる。

「何、お前?」

気付いたときには、相手の胸ぐらを掴んでいた。
相手に怯む様子はない。
それどころか。

「あんたこそ静花さんの何?」

聞き返された俺は、何も答えられない。

今の俺は、静花の何なんだ?
いや、今だけじゃない。
あの頃も。
俺と静花の関係を表す言葉をいくら探しても見つけられずにいると、

「…って、ああ、この間出禁になった静花さんのか」

目の前の男に言い当てられ、腸が煮えくり返った。

「いますよねー、勘違いしちゃうヤツ」

あからさまに見下され、これ以上は我慢できないと親指を握り込み、拳を固くしたとき。

「やめて」

それまで黙りこくっていた静花が、俺の手を抑えた。
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