上 下
23 / 97
頑なな花(高嶺Side)

しおりを挟む
「ショージくん、悪いけど先に帰って」

「大丈夫ですよ。こう見えてケンカ強いんで。静花さんのことは俺が守ります。」

こいつ……俺の前で静花を口説きやがった。
しかもセリフ、某アニメキャラか!

心の中のツッコミは軽いが、怒りは最高潮。
拳を振り上げようとしたら静花が今度は腕にしがみついた。

「高嶺くん、お願いだから落ち着いて!」

「『高嶺くん』って…ただの客じゃないんですか?」

俺は苗字呼びなのに、こいつが名前呼びなのも癇に障る。

「うるさい。お前には関係ない」

「へー。なんかワケアリっぽいですね。一つ貸しってことで」

「もう、分かった。分かったから行って!」

ショージとかいう男が見えなくなるまで待ってから、静花は俺から離れた。

「じゃあ…私も、これで」

「は?」

あの男は何だ?
俺がLove Birds出禁になってるってどういうことだ?
あれほど帰るなって言ったのに、何で勝手に帰った?
10年前、何でなにも言わずに突然俺の前から消えた?

聞きたいことは山ほどあるのに、静花は何事もなかったかのように俺から離れていこうとする。

怒り。
不安。
焦燥。

「ふざけんな、来い」

感情の制御のきかないまま、静花の手を掴んで歩き出してしまった。

そのまま、飲食店街の外れにある適当なラブホに静花を引きずり込む。
部屋のドアを閉めた途端─

「イヤッ」

無抵抗だった静花が突然俺を突き飛ばした。

あの頃は、拒否らしい拒否なんてされたことなんて一度もなかったのに。
鈍器で頭を殴られたような衝撃が走る。

さっきの男のせいか?
更に頭に血が上る。

嫌だ。
そんなこと許せない。

静花が俺を好きだということは、抱けば分かる。

俺が求めれば、静花のソコはいつでも溶けるように潤って、包み込んでくれる。
そして、控え目な性格の静花が、「景、景」と俺の名前を呼びながら、しがみついてくるはず。

一秒でも早く、確かめたい。

必死にドアを開けようとしていた静花を後ろから抱きかかえて、ベッドに押し倒す。

「やめてってば、高嶺くん!!」

再びの抵抗に、頭から血が吹き出しそうだが。
問答無用でロングスカートの中に手を突っ込み、下着をひっ掴む。

同時に言いようのない違和感がこみ上げ、スカートを捲くり上げ確認する。

…白のコットン…じゃない。

三度みたび頭を殴られ、やっと冷静さを取り戻した。

静花は、もうあの頃の静花じゃない。
でも、俺もあの頃の俺じゃない。

話を、しなければ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78,186pt お気に入り:2,056

異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21,022pt お気に入り:725

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:60,187pt お気に入り:3,667

極悪チャイルドマーケット殲滅戦!四人四様の催眠術のかかり方!

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:695pt お気に入り:35

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:212pt お気に入り:22

重婚なんてお断り! 絶対に双子の王子を見分けてみせます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:43

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,671pt お気に入り:3,501

処理中です...