悪役令嬢の罠にかかって、ただの穴だと思い込んで告白もできず逃げ出したのに、元ヤンから弁護士に変身した彼に溺愛されてます

恩田璃星

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頑なな花(高嶺Side)

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決まった。
これで静花の涙も止まる。

そう思ったのに。
静花の瞳からは、更に大きな涙の粒が溢れ落ちた。

「そんなの…信じられないよ」

「なっ…!俺が嘘吐いてるとでも言うのかよ!?」

ゆっくりと首を振りながら、静花は俯いた。

「そうじゃないけど…仮に高嶺くんにとって、森永さんは本当にただの幼馴染で秘書だとしても、森永さんの方は違うかもしれないし」

「ないない!来望に限って」

「…そう、かな?仕事とはいえただの幼馴染のために地元でもない土地にまで付いて来るなんて、特別な気持ちがないと無理だと思うけど」

「絶対ないって!あいつ俺の素っ裸見ても眉一つ動かさな…」

まずい。
必死過ぎて口が滑った。

「って別にそういうことしようとしたワケじゃなくてだな…」

「それに」

慌ててフォローしようとする俺を、静花が、小さな声ではあるが、強い口調で遮った。

「それに私、10年ぶりに会った高嶺くんの言うことを鵜呑みにできるほど、高嶺くんのこと知らないから」

自虐的に微笑む静花に、ぐうの音も出ないのは、心当たりがありすぎるから。

確かにあの頃の俺は、静花の顔を見ればヤりたくなり、行為の後は、余計なことをベラベラ喋らない静花といる時間が心地良くて。
デートらしいデートの一つもしたことがなかった。

だから俺も、静花のことは分からないことだらけだ。

ただ一つ、俺を好きだということ以外は。

沈黙を肯定と捉えたのか、気付けば静花は無言のまま再び俺の横をすり抜け、出口に向かって歩き出した。

ああ、ダメだ。
このまま行かせたら、本当に終わる。

このタイミングでって、縋れば静花は留まってくれるかもしれない。
でも、そんなのは俺じゃない。
静花の好きな俺じゃない(多分)。

脳みそをフル稼働させて、導き出した台詞。

「分かった」

「え…?」

「お前がそこまで言うなら、付き合ってやる」

静花は一瞬フリーズした後、ゆっくりとこちらを振り返った。

「高嶺くん…私の話、聞いてた?」

「ちゃんと聞いてたからこそ付き合ってやるって言ってるんだ」

目を白黒させている静花に、教えてやらなければ。

「気付いてないのか?自分がさっきから遠回しに俺のこと好きって言ってるの」

指摘した途端、静花の顔が燃え上がった。
ほら、ビンゴ。

「ち、ちがっ、わ、わたっ、私なんかが、そんなこと…!」

俺としては開き直ってはっきりってくれても一向に構わないんだが。
静花に「私なんか」と言わせてるのは、ほとんど俺のせいなんだろうと思うと、胸にじわりと罪悪感がこみ上げた。

「ちゃんと信じられるようにしてやるから、覚悟しとけよ」

言いながら精算機で支払いを済ませ、まだ戸惑っている状態の静花を家まで送り届けた。
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