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パンとコーヒー
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「じゃあな。また連絡するから着信拒否とブロック、解除しとけよ」
心なしか名残惜しそうな表情の高嶺くんがドアの向こうに消えてしまった。
同時に、頭を抱えて玄関にうずくまる。
あの高嶺くんがラブホに行ったのに、セッ○スしなかった?
森永さんは、彼女じゃなくて、ただの幼馴染?秘書??どっちも???
私、間接的に好きって言っちゃってた????
何より、付き合うって。
付き合うって何!?!?!?!?
急にドアが開いて、『ドッキリでした』とか言わないよね?
怖くなって、ドアに鍵とドアガードを掛ける。
ダメだ。
頭も心も全く追いつかない。
「…寝よう」
のろのろと立ち上がり、軽めにシャワーを浴びて布団に入ったものの、頭の中が高嶺くんでいっぱいで、全然眠れなかった。
*
「…で?アレからどうなったんですか?」
翌日寝不足のまま出社した途端、待ち構えていた東海林くんに捕まった。
「昨日は急にごめんね。どうしたもこうしたもないよ。ちょっと話して、すぐ解散したよ」
東海林くんのことなんてすっかり忘れていた割に、我ながら自然に答えられたと感心したのに。
「へー?二人でラブホに入っていったのに?」
思い切り取り乱して、東海林くんの口を両手で塞いでしまった。
「かっ、帰りなさいって言ったのに、尾けてたの!?」
私とは対象的に、東海林くんは落ち着いた様子で自分の口を塞いでいた私の掌を自分の掌に包んで優しく外し、そのまま嗜めるようにポンポンと撫ででから放した。
くっ…!
さすがLove Birdsの男性講師のエース。
流れるような仕草に、普通の女子だったら骨抜きにされているところだ。
「だって、静花さんに何かあったら社長が怖いんで。まあ、秒で連れ込まれてたんで、結局助けられませんでしたけど」
実はこの高嶺くんに負けないくらい長身で、スッとした目鼻立ちの東海林くんも、瑞希に変身させられる前は私と同じ、モブ系男子で。
瑞希には絶対的な忠誠を誓っていたりするのでしっかり念を押しておく。
「本当にちょっと話した後すぐ出たんだよ?お願いだから社長に余計なこと言わないでね!!」
「まあ、俺は言わないですけど、もう手遅れかもしれませんね」
憎らしいほど落ち着いた口調で、恐ろしいことを言ってくる。
「え?どういうこと!?まさかもう社長に報告しちゃったとか!?」
「俺はしてませんって。…でも、来てますよ?」
「来てるって…まさか!」
「そう、昨夜の。高嶺とかいう出禁の人」
言われてみれば出社してから瑞希を見ていない。
社長なのに、いつも誰より早く出勤しているのに。
代わりに目についたのは、応接室にかけられた『使用中』のプレート。
高速でノックをし、「失礼します!!!」と、ドアを開け放つと、瑞希と高嶺くんが同時にこちらを見た。
慌てて飛び込んだのはいいけれど。
状況がさっぱりわからない。
そして漂う微妙な空気。
もしかして、高嶺くん、瑞希に昔のこと洗いざらい話しちゃった!!?
「…見損なったわ、静花」
『見損なった』!!?
…ってことはやっぱり!!
私の高校時代の不純異性交遊について高嶺くんから色々聞いちゃった!!?
「…あ、あの、瑞希。あれは、その…」
「言い訳なんて聞きたくない」
これまで数回しか聞いたことのない厳しい口調に、カクカクと膝が震える。
もう、ダメだ。
瑞希に嫌われてしまった。
そう思って息を止めて涙を堪えていたら─
「高嶺様に恋人がいるなんて勘違いして出禁にしたうえに、誤解が解けてもまだ着信拒否解除してないなんて。…あんたそれでもLove Birdsの副社長なの!?」
こちらを向いている瑞希から見えない位置で、高嶺くんがあっかんべーをして見せた。
心なしか名残惜しそうな表情の高嶺くんがドアの向こうに消えてしまった。
同時に、頭を抱えて玄関にうずくまる。
あの高嶺くんがラブホに行ったのに、セッ○スしなかった?
森永さんは、彼女じゃなくて、ただの幼馴染?秘書??どっちも???
私、間接的に好きって言っちゃってた????
何より、付き合うって。
付き合うって何!?!?!?!?
急にドアが開いて、『ドッキリでした』とか言わないよね?
怖くなって、ドアに鍵とドアガードを掛ける。
ダメだ。
頭も心も全く追いつかない。
「…寝よう」
のろのろと立ち上がり、軽めにシャワーを浴びて布団に入ったものの、頭の中が高嶺くんでいっぱいで、全然眠れなかった。
*
「…で?アレからどうなったんですか?」
翌日寝不足のまま出社した途端、待ち構えていた東海林くんに捕まった。
「昨日は急にごめんね。どうしたもこうしたもないよ。ちょっと話して、すぐ解散したよ」
東海林くんのことなんてすっかり忘れていた割に、我ながら自然に答えられたと感心したのに。
「へー?二人でラブホに入っていったのに?」
思い切り取り乱して、東海林くんの口を両手で塞いでしまった。
「かっ、帰りなさいって言ったのに、尾けてたの!?」
私とは対象的に、東海林くんは落ち着いた様子で自分の口を塞いでいた私の掌を自分の掌に包んで優しく外し、そのまま嗜めるようにポンポンと撫ででから放した。
くっ…!
さすがLove Birdsの男性講師のエース。
流れるような仕草に、普通の女子だったら骨抜きにされているところだ。
「だって、静花さんに何かあったら社長が怖いんで。まあ、秒で連れ込まれてたんで、結局助けられませんでしたけど」
実はこの高嶺くんに負けないくらい長身で、スッとした目鼻立ちの東海林くんも、瑞希に変身させられる前は私と同じ、モブ系男子で。
瑞希には絶対的な忠誠を誓っていたりするのでしっかり念を押しておく。
「本当にちょっと話した後すぐ出たんだよ?お願いだから社長に余計なこと言わないでね!!」
「まあ、俺は言わないですけど、もう手遅れかもしれませんね」
憎らしいほど落ち着いた口調で、恐ろしいことを言ってくる。
「え?どういうこと!?まさかもう社長に報告しちゃったとか!?」
「俺はしてませんって。…でも、来てますよ?」
「来てるって…まさか!」
「そう、昨夜の。高嶺とかいう出禁の人」
言われてみれば出社してから瑞希を見ていない。
社長なのに、いつも誰より早く出勤しているのに。
代わりに目についたのは、応接室にかけられた『使用中』のプレート。
高速でノックをし、「失礼します!!!」と、ドアを開け放つと、瑞希と高嶺くんが同時にこちらを見た。
慌てて飛び込んだのはいいけれど。
状況がさっぱりわからない。
そして漂う微妙な空気。
もしかして、高嶺くん、瑞希に昔のこと洗いざらい話しちゃった!!?
「…見損なったわ、静花」
『見損なった』!!?
…ってことはやっぱり!!
私の高校時代の不純異性交遊について高嶺くんから色々聞いちゃった!!?
「…あ、あの、瑞希。あれは、その…」
「言い訳なんて聞きたくない」
これまで数回しか聞いたことのない厳しい口調に、カクカクと膝が震える。
もう、ダメだ。
瑞希に嫌われてしまった。
そう思って息を止めて涙を堪えていたら─
「高嶺様に恋人がいるなんて勘違いして出禁にしたうえに、誤解が解けてもまだ着信拒否解除してないなんて。…あんたそれでもLove Birdsの副社長なの!?」
こちらを向いている瑞希から見えない位置で、高嶺くんがあっかんべーをして見せた。
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