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パンとコーヒー
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結局、高嶺くんの出禁処分はなくなり、これまでどおり私は高嶺くんの専属担当という形に戻ったけれど。
もし、高嶺くんが仮に本当に私のことが好きで、私と付き合うためにLove Birdsに登録したのであれば、さっさと退会して、ぼったくられた分を取り返せばいいのに。
高嶺くんは弁護士なんだから尚更だ。
「何?何か言いたそうだな」
瑞希の指示で、ビルのエントランスまで高嶺くんを送る途中のエレベーターで訊かれる。
「え…うん、あの。Love Birds退会しなくていいのかなって思って」
「良いも何も、お前まだ仕事辞めれるほど俺のこと信じられるようになってないだろ?ってことは、俺がLove Birds退会したらお前別の客の相手することになるんだろ?」
え?
これって。
『さっさと仕事辞めて俺の所に来い』
『俺以外の客の相手をさせたくない』
って言ってる??
確かめるように高嶺くんの顔を見上げれば、表情は涼しげなのに、耳だけが真っ赤になっていて。
生まれて初めて感じる胸のくすぐったさに、こちらも釣られて赤くなり。
一階に着くまで二人して無言になってしまった。
「ブロックと着信拒否、ちゃんと解除しとけよ」
エントランスでの別れ際、釘を刺されてしまった。
本当は覚えていたんだけど。
スマホにかじりついてしまいそうだったから。
それに、もし連絡来なかったらと思ったら不安で。
とは言えなくて。
「う、うん。ごめんね、うっかり」
「あと、今日の『レッスン』はうちの事務所、な?」
言われた途端、頭に森永さんの顔が浮かんで引きつる。
それを察した高嶺くんが、すかさず私の両方のほっぺを掴んだ。
「そんな顔しなくても大丈夫だって。前も言っただろ?来望とはそういう関係じゃないって」
高嶺くんがそこまで言うのなら、本当にそうなのかもしれない。
「…分かった」
渋々のOKが気に入らなかったのか、高嶺くんは私が返事をした後もほっぺたの肉を数回グニグニ揉んでから、タクシーで去って行った。
いきなりこんなことになるなんて。
でもまあ、事前に予告されていたら当日まで眠れなかっただろうから、逆に良かったのかもしれない。
そう思うことにしてエレベーターでLove Birdsのあるフロアに戻ると、ドアの向こうで東海林くんが待ち構えていた。
「…大丈夫ですか?」
開口一番尋ねられ、言葉に詰まる。
もしかして、今の、見られてた??
「な、何が?全然元気だよー」
とりあえずすっとぼけてみたものの。
「そんな表情しといて、誤魔化せるとでも思ってるんですか?」
思ってません。
思ってませんけど。
「そ、そんな表情ってどんな表情よ!?」
「不安と期待でわちゃわちゃしてますよ」
図星過ぎて、思わず両手で顔を覆ってしまった。
「本当にあの男何者なんですか?」
何者かと問われれば─
仮にも、一応、暫定、そして恐れ多くも彼氏(心の中でも小声)なんだけど。
「…」
どうしても『彼氏』って声に出して言えない----っ!
「ほっぺ触らせてたし、ただの客じゃないですよね?」
「……」
やっぱり言えない-----っ!!
「社長―っ、静花さんに男の…」
「わ---っ!説明する!ちゃんと説明するから、瑞希にだけは言わないで!!」
必死にヒソヒソ声で絶叫すると、東海林くんは口にメガホンのように当てていた手を降ろしてニッコリと笑った。
「俺、下のゴディ○のメガパフェでイイっすよ」
「…東海林くんと打ち合わせ行ってきます」
すぐにエレベーターに逆戻りする羽目になってしまった。
もし、高嶺くんが仮に本当に私のことが好きで、私と付き合うためにLove Birdsに登録したのであれば、さっさと退会して、ぼったくられた分を取り返せばいいのに。
高嶺くんは弁護士なんだから尚更だ。
「何?何か言いたそうだな」
瑞希の指示で、ビルのエントランスまで高嶺くんを送る途中のエレベーターで訊かれる。
「え…うん、あの。Love Birds退会しなくていいのかなって思って」
「良いも何も、お前まだ仕事辞めれるほど俺のこと信じられるようになってないだろ?ってことは、俺がLove Birds退会したらお前別の客の相手することになるんだろ?」
え?
これって。
『さっさと仕事辞めて俺の所に来い』
『俺以外の客の相手をさせたくない』
って言ってる??
確かめるように高嶺くんの顔を見上げれば、表情は涼しげなのに、耳だけが真っ赤になっていて。
生まれて初めて感じる胸のくすぐったさに、こちらも釣られて赤くなり。
一階に着くまで二人して無言になってしまった。
「ブロックと着信拒否、ちゃんと解除しとけよ」
エントランスでの別れ際、釘を刺されてしまった。
本当は覚えていたんだけど。
スマホにかじりついてしまいそうだったから。
それに、もし連絡来なかったらと思ったら不安で。
とは言えなくて。
「う、うん。ごめんね、うっかり」
「あと、今日の『レッスン』はうちの事務所、な?」
言われた途端、頭に森永さんの顔が浮かんで引きつる。
それを察した高嶺くんが、すかさず私の両方のほっぺを掴んだ。
「そんな顔しなくても大丈夫だって。前も言っただろ?来望とはそういう関係じゃないって」
高嶺くんがそこまで言うのなら、本当にそうなのかもしれない。
「…分かった」
渋々のOKが気に入らなかったのか、高嶺くんは私が返事をした後もほっぺたの肉を数回グニグニ揉んでから、タクシーで去って行った。
いきなりこんなことになるなんて。
でもまあ、事前に予告されていたら当日まで眠れなかっただろうから、逆に良かったのかもしれない。
そう思うことにしてエレベーターでLove Birdsのあるフロアに戻ると、ドアの向こうで東海林くんが待ち構えていた。
「…大丈夫ですか?」
開口一番尋ねられ、言葉に詰まる。
もしかして、今の、見られてた??
「な、何が?全然元気だよー」
とりあえずすっとぼけてみたものの。
「そんな表情しといて、誤魔化せるとでも思ってるんですか?」
思ってません。
思ってませんけど。
「そ、そんな表情ってどんな表情よ!?」
「不安と期待でわちゃわちゃしてますよ」
図星過ぎて、思わず両手で顔を覆ってしまった。
「本当にあの男何者なんですか?」
何者かと問われれば─
仮にも、一応、暫定、そして恐れ多くも彼氏(心の中でも小声)なんだけど。
「…」
どうしても『彼氏』って声に出して言えない----っ!
「ほっぺ触らせてたし、ただの客じゃないですよね?」
「……」
やっぱり言えない-----っ!!
「社長―っ、静花さんに男の…」
「わ---っ!説明する!ちゃんと説明するから、瑞希にだけは言わないで!!」
必死にヒソヒソ声で絶叫すると、東海林くんは口にメガホンのように当てていた手を降ろしてニッコリと笑った。
「俺、下のゴディ○のメガパフェでイイっすよ」
「…東海林くんと打ち合わせ行ってきます」
すぐにエレベーターに逆戻りする羽目になってしまった。
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