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花に刺さった棘(高嶺Side)
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こういう時に限って示談の話が難航する。
約束の時間に行ったにも関わらず、散々待たされた。
おまけに丸で俺が金のために好き好んで弁護人やってるかのごとく、他の万引き犯のことについてまでネチネチネチネチ。
やっとのことで示談書をむしり取ってスーパーを後にすると、すっかり日が暮れていた。
合間に何度も静花に連絡をとろうとしたが、電話の折返しも、メールの返信も、一切ない。
いつも即レスなのに、絶対おかしい。
Love Birdsか静花の家に直行するか?
いや。
ここからだと事務所が一番近い。
一旦戻って来望から話を聞くことにした。
「お帰りなさいませ」
一人残業中なのに、心なしか上機嫌に見える来望に、「お疲れ」も言わずに尋ねる。
「俺のデスクの上にあった弁当箱どこやった?」
来望の顔がほんの一瞬固まった。
「何それ。知らないわよ」
「町田さんが、お前が持ち出すの見たって言ってたけど?」
「知らないって言ってるでしょ?見間違いじゃない?私よりあんな新人のコの言葉を信じるの?それとも何?証拠でもあるっていうの?」
ああ、これ完全に黒だ。
人間、疚しいことがあるとき絶対聞くんだよな。
『証拠は?』って。
「今はない。けど、これから集める」
ポケットからスマホを取り出し、録音中であることを示す画面を見せると来望がたじろいだ。
「証言で足りなければ事務所の防犯カメラの映像をセキュリティ会社に提出させる」
そこまで言って、やっと来望が口を割った。
「お、音無さんに返しに行っただけよ!!これで満足?」
「…そんなことお前に頼んだ覚えなんてないけど」
これ以上ないほど冷たく言い放つと、来望はついに泣き出した。
「景は…あんな女のどこがいいって言うのよ?あんな、昔からどこでも、誰とでも寝るような…!」
ちょっと待て。
何で来望が静花の噂のことを…?
それに、こいつ、さっき静花のことを『音無さん』と言った?
単に三角静花に弁当箱を突き返して、牽制しに行っただけじゃないのか?
「どういうことだ!?お前、あいつに…あそこで何した?何言った?」
伊藤社長にだけは俺との過去を知られたくないと言っていた静花の顔が脳裏に蘇り、つい来望の肩を強く掴んでしまった。
何か言おうとしては唇を震わせるばかりの来望に苛立ちが募る。
「さっさと吐けよ!!」
「…だって…悔しかったんだもん!!私のほうがずっと景と一緒にいたのに…ずっと傍で支えてきたのに…!」
「お前の気持ちなんて聞いてないし、これからも聞く気はない!!」
完全にシャットアウトしてやると、プライドを傷つけられた来望の顔が、悲しみから怒りに塗り替えられて行くのが分かった。
「それに…静花がビッチだなんて根も葉もない噂…俺が知る限り女子にまでは広まってなかったはずだ。なのに、女のお前がソレを知っているってことは、静花がビッチだって噂を流したのもお前なのか!?」
「そうよ。だって本当のことでしょ?ビッチの娘はビッチに決まってる!!あの女の母親のせいで景のお母さん出ていったんじゃない!!現にあの子、景とだって学校でいかがわしいことしてたじゃない!!」
約束の時間に行ったにも関わらず、散々待たされた。
おまけに丸で俺が金のために好き好んで弁護人やってるかのごとく、他の万引き犯のことについてまでネチネチネチネチ。
やっとのことで示談書をむしり取ってスーパーを後にすると、すっかり日が暮れていた。
合間に何度も静花に連絡をとろうとしたが、電話の折返しも、メールの返信も、一切ない。
いつも即レスなのに、絶対おかしい。
Love Birdsか静花の家に直行するか?
いや。
ここからだと事務所が一番近い。
一旦戻って来望から話を聞くことにした。
「お帰りなさいませ」
一人残業中なのに、心なしか上機嫌に見える来望に、「お疲れ」も言わずに尋ねる。
「俺のデスクの上にあった弁当箱どこやった?」
来望の顔がほんの一瞬固まった。
「何それ。知らないわよ」
「町田さんが、お前が持ち出すの見たって言ってたけど?」
「知らないって言ってるでしょ?見間違いじゃない?私よりあんな新人のコの言葉を信じるの?それとも何?証拠でもあるっていうの?」
ああ、これ完全に黒だ。
人間、疚しいことがあるとき絶対聞くんだよな。
『証拠は?』って。
「今はない。けど、これから集める」
ポケットからスマホを取り出し、録音中であることを示す画面を見せると来望がたじろいだ。
「証言で足りなければ事務所の防犯カメラの映像をセキュリティ会社に提出させる」
そこまで言って、やっと来望が口を割った。
「お、音無さんに返しに行っただけよ!!これで満足?」
「…そんなことお前に頼んだ覚えなんてないけど」
これ以上ないほど冷たく言い放つと、来望はついに泣き出した。
「景は…あんな女のどこがいいって言うのよ?あんな、昔からどこでも、誰とでも寝るような…!」
ちょっと待て。
何で来望が静花の噂のことを…?
それに、こいつ、さっき静花のことを『音無さん』と言った?
単に三角静花に弁当箱を突き返して、牽制しに行っただけじゃないのか?
「どういうことだ!?お前、あいつに…あそこで何した?何言った?」
伊藤社長にだけは俺との過去を知られたくないと言っていた静花の顔が脳裏に蘇り、つい来望の肩を強く掴んでしまった。
何か言おうとしては唇を震わせるばかりの来望に苛立ちが募る。
「さっさと吐けよ!!」
「…だって…悔しかったんだもん!!私のほうがずっと景と一緒にいたのに…ずっと傍で支えてきたのに…!」
「お前の気持ちなんて聞いてないし、これからも聞く気はない!!」
完全にシャットアウトしてやると、プライドを傷つけられた来望の顔が、悲しみから怒りに塗り替えられて行くのが分かった。
「それに…静花がビッチだなんて根も葉もない噂…俺が知る限り女子にまでは広まってなかったはずだ。なのに、女のお前がソレを知っているってことは、静花がビッチだって噂を流したのもお前なのか!?」
「そうよ。だって本当のことでしょ?ビッチの娘はビッチに決まってる!!あの女の母親のせいで景のお母さん出ていったんじゃない!!現にあの子、景とだって学校でいかがわしいことしてたじゃない!!」
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