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溶解
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「ちょ、静花さん…っ!あっ、ダメですって。そんなこと…!!」
「いいの。気にしないで。東海林くんにはお世話になりっぱなしなんだから。私にできることなんてこんなことくらいだし。全部任せて。ね?」
高嶺くんと瑞希から逃げ出して早一週間。
少しずつ東海林くんとの共同生活に慣れ始めていた。
半分は東海林くんへの迷惑料、半分は自分の気を紛らわせるために、東海林くんが仕事に行っている間に炊事洗濯全般だけでは飽き足らず、玄関の電球交換をしていたら、東海林くんが帰宅してしまった。
え?
何かセリフ、紛らわしかったですか?
「…で、どうですか?そろそろ二人と話する覚悟、できました?」
私の乗っている丸イスが倒れないよう支えてくれながら、東海林くんが尋ねた。
「うん…まあ…、でも、あとちょっと…かな」
「そう、ですか。まだ一週間ですもんね。俺はいつまでいてもらっても構いませんから。静花さんの飯、美味いし」
ごめんね東海林くん。
本当は大迷惑だよね。
私だってこのままじゃダメだって分かってる。
でも、どうしても決心がつかない。
と、思っていたら私のではないスマホの通知音が鳴った。
東海林くんは上着のポケットから取り出して内容を確認すると、スッと立ち上がった。
「…静花さん、すみません。そんな悠長なこと言ってられないかもしれません」
手渡されたスマホの画面には、楽しそうに食事をしている瑞希の写真。
写り込んでいる内装から、瑞希の行きつけのフレンチレストラン。
近くにラブホではないお気に入りの高級ホテルがあるという理由で、落としたい相手がいるときは上手におねだりして、そのお店に誘導するのだ。
「え。もしかして、瑞希、今度こそ結婚相手見つけちゃった?仲直りする前にLove Birds解散?東海林くんも私も無職になっちゃう??」
「そうじゃなくて!もう一枚の写真見てください!!」
いわれるままに画面をタップした私は言葉を失った。
瑞希と一緒に食事を楽しんでいる男性は、高嶺くんだった。
どういうこと?
何で二人が一緒に??
しかも瑞希の必勝コースで???
そんなの、答えはたった一つ。
私がこんなところでウジウジシているうちに、意気投合しちゃったんだ。
無理もない。
二人とも私とは違う、光属性の頂点キャラ。
地味でダサくて暗くて嘘つきな私といるより百倍楽しいに決まってる。
スマホを持ったままキッチンの隅っこでネガティブ思考を暴走させ、灰になって消えかけた私の襟首を、東海林くんが掴んだ。
「行きますよ」
「い、行くってどこに?」
振り返れば、東海林くんはさっき脱いだばかりのジャケットに身を包んで、既に身支度を整えている。
「店、分かりますよね?乗り込みましょう。今ならまだ間に合います」
「いいの。気にしないで。東海林くんにはお世話になりっぱなしなんだから。私にできることなんてこんなことくらいだし。全部任せて。ね?」
高嶺くんと瑞希から逃げ出して早一週間。
少しずつ東海林くんとの共同生活に慣れ始めていた。
半分は東海林くんへの迷惑料、半分は自分の気を紛らわせるために、東海林くんが仕事に行っている間に炊事洗濯全般だけでは飽き足らず、玄関の電球交換をしていたら、東海林くんが帰宅してしまった。
え?
何かセリフ、紛らわしかったですか?
「…で、どうですか?そろそろ二人と話する覚悟、できました?」
私の乗っている丸イスが倒れないよう支えてくれながら、東海林くんが尋ねた。
「うん…まあ…、でも、あとちょっと…かな」
「そう、ですか。まだ一週間ですもんね。俺はいつまでいてもらっても構いませんから。静花さんの飯、美味いし」
ごめんね東海林くん。
本当は大迷惑だよね。
私だってこのままじゃダメだって分かってる。
でも、どうしても決心がつかない。
と、思っていたら私のではないスマホの通知音が鳴った。
東海林くんは上着のポケットから取り出して内容を確認すると、スッと立ち上がった。
「…静花さん、すみません。そんな悠長なこと言ってられないかもしれません」
手渡されたスマホの画面には、楽しそうに食事をしている瑞希の写真。
写り込んでいる内装から、瑞希の行きつけのフレンチレストラン。
近くにラブホではないお気に入りの高級ホテルがあるという理由で、落としたい相手がいるときは上手におねだりして、そのお店に誘導するのだ。
「え。もしかして、瑞希、今度こそ結婚相手見つけちゃった?仲直りする前にLove Birds解散?東海林くんも私も無職になっちゃう??」
「そうじゃなくて!もう一枚の写真見てください!!」
いわれるままに画面をタップした私は言葉を失った。
瑞希と一緒に食事を楽しんでいる男性は、高嶺くんだった。
どういうこと?
何で二人が一緒に??
しかも瑞希の必勝コースで???
そんなの、答えはたった一つ。
私がこんなところでウジウジシているうちに、意気投合しちゃったんだ。
無理もない。
二人とも私とは違う、光属性の頂点キャラ。
地味でダサくて暗くて嘘つきな私といるより百倍楽しいに決まってる。
スマホを持ったままキッチンの隅っこでネガティブ思考を暴走させ、灰になって消えかけた私の襟首を、東海林くんが掴んだ。
「行きますよ」
「い、行くってどこに?」
振り返れば、東海林くんはさっき脱いだばかりのジャケットに身を包んで、既に身支度を整えている。
「店、分かりますよね?乗り込みましょう。今ならまだ間に合います」
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