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溶解

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流れるようにチェックインを済ませ、部屋の扉を閉め終わると、人生初のスイートルームに感動する間もなくベッドにダイブさせられた。

私の体をキツく抱きしめながら高嶺くんが囁く。

「なあ…さっきのアレ、もう一回言えよ」

「あ、アレ?」

「静花がさっき言ってくれたアレだよ、アレ」

ああ、アレか。
高嶺くん、すごく気に入ってたもんね。

ちょっと恥ずかしいけど。
仕方ない。
意を決して軽く咳払いをし、

「な、慣れたらナカだけでも…」

言いかけるとすかさずツッコミが入った。

「バッカ!そっちじゃなくて。『大好き』の方!!」

ああ、そっちか。
気を取り直してもう一回。

「だ……っ」

急に言葉が続かない。

「なんであっちは言えてこっちが言えないんだよ!?」


だって、言ったら始まってしまう。
きっと、二度と、後戻りできなくなる。

その前に、一つだけ確認しないといけないことがある。

でも、何て聞けばいいの?

体を石のように強張らせていると、高嶺くんがあやすように頭を撫でた。

「うちの両親のことなら違うから。静花の母さんのせいじゃない」

高嶺くんの言葉が、呪文のように私の心と身体を解きほぐしていく。

「詳しいことは後でいくらでも話す。だから、もう抱か聞かせて?」

「…き。高嶺くんが、大好きです」

高嶺くんは、これまで見たことのない優しい顔で微笑み、ちゅ、とキスを落とした。

「俺も好き」

また短いキスをして、甘く囁かれる。

「大好き」

甘さに免疫が全くないせいで不整脈を起こしそう。
おまけにキスは少しずつ深さを増していき、頭もクラクラし始めた。

高嶺くんの舌づかいにただただ翻弄され、溶かされていく。

「静花も言えよ」

完全に惚けきっていたら唇をくっつけたまま強請られた。

「ん…すき、高嶺く…ん、好き」

「『高嶺』じゃなくて『景』、な」

「け、い…景、大好き」

ずっと言いたくて、どうしても言えなかった言葉。

「忘れられなかった」

「うん」

「景以外の人なんて好きになれなかった」

「俺も…ずっと探してた」

10年の時間を埋めるように、何度も何度も思いを伝え合った。
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