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新たな不安
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いつもどおり晩ごはんの食材をマンション一階のスーパーで買って、高嶺くんの部屋に戻ると、珍しく高嶺くんが先に帰宅している。
しかも、玄関に仁王立ちで私を待ち構えていた。
「あれ?今日早いね」
「『あれ?』じゃないだろ。俺に何か言うことないか?」
開口一番すごく神妙な顔で尋ねられた。
「高嶺くんに言うこと?」
神妙な顔つきで、大きく頷く。
「…あ!おかえりなさい」
「ただいま…って、そうじゃない!何でこの前誕生日だって言わなかったんだよ?」
あ。
瑞希、今日も忙しかったのに、もう高嶺くんにお説教したんだ。
仕事早い。
「いや、だって…高嶺くん忙しそうだったし。私の誕生日なんてわざわざお祝いしてもらうほどのものでもないというか…」
「…そうだった。お前はそういうヤツなんだった」
今度は頭を抱えて大きなため息をついた。
「そんなことより、折角だから一緒にご飯食べよう?今日はロールキャベツなんだ。すぐ作るから座ってテレビでも見てて」
と、言ったのに、私が大急ぎでロールキャベツを作っている間、高嶺くんは無理して仕事を切り上げて来たのか、書斎に引っ込んでしまった。
私が通うようになるまでほぼ未使用だったオシャレ圧力鍋のおかげで、トロットロのロールキャベツがあっという間に出来上がった。
「高嶺くん、ご飯できたよー」
呼びかけても返事がない。
仕方なく書斎まで行くと、物凄く真剣な表情でタブレットを覗き込んでいる。
「高嶺くん、ご飯…」
「あ。ちょうど良かった。ちょっとこっち来て」
「え?私??」
弁護士の仕事は個人情報だらけなので、できるだけ書斎には立ち入らないようにしているんだけど。
「いいから」
手招きされて、おずおずと高嶺くんの隣に立つと、見せられたのはブライダルジュエリーのサイトだった。
「静花、どういうのが好き?俺はこういうのが似合うんじゃないかと思うんだけど」
見せられたのは私でも知っているブルーボックスのリング。
似合うと言われたものはオーソドックスなデザインのもの。
確かに他のセンターストーンの周りも小さな石で飾られているものに比べれば、地味な私には似合いそうだ。
でも、それよりも。
「お、お値段っっっ!わ、私の年収超えてる!!」
「そこは気にしなくていいから」
そして、何よりも。
「これっ、エ、エ、エ、エンゲージリングだよね…?」
「そうだけど。サプライズも考えたけど、こういうの、好みがあるんだろ?一生モノだし、勝手に買わないほうがいいと思って」
ってことは…。
ってことは……。
「高嶺くん、本当に私と結婚する気なの?」
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