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プロポーズ
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え?
なんで??
どういうこと???
全く状況を理解できないでいると、「行くぞ」と短く言った高嶺くんが、私の手を掴んで一番奥の席に向かって歩き出した。
高嶺くんのお母さんは、席に着くとすぐにスマホを取り出し、ずっと画面を見つめている。
そして、高嶺くんが真正面に立つと、やっと顔を上げた。
やっぱり気づかなかっただけ?
いや、違う。
そう思ったのは、高嶺くんのお母さんが酷く怪訝そうな顔をしていたから。
まるで目の前の息子が見ず知らずの赤の他人であると言わんばかりに。
そんなお母さんに、高嶺くんが更にワケの分からないことを言い出す。
「タクヤさんなら来ませんよ」
は?
タクヤさんって誰??
「……あなた、一体?」
お母さんはお母さんでやっぱり高嶺くんに気付いてないしで、本当にもう何がなんだか。
ただ、二人のやりとりを黙って見守るしかできない。
「さすがだな。実の息子の顔が分からないだけじゃなく、声を聞いてもまだ思い出せないんて」
「実の息子…?ってことは、あなた…まさか、景なの?」
「そのまさかだよ。俺だってまさか実の母親に結婚報告するために、マッチングサイト使ってアンタ好みの男になりすます羽目になるなんて思いもしなかったけどな」
ってことはつまり。
今ここに高嶺くんのお母さんがいるのは、私と高嶺くんの結婚報告を聞くためじゃなくて、マッチングサイトで出会ったタクヤさんとの待ち合わせのためで。
そのタクヤさんっていう人は架空の人物で、高嶺くんがなりすましていたってこと?
「きっ、気持ち悪いわね!あんたに連絡先なんて教えてないのに、どうやって私のこと探し当てたのよ!?どうせ犯罪まがいのことしたんでしょ!?昔から素行悪かったものね」
ランチタイムを前にお客さんの増え始めた店内を気にしているのか、声のトーンは抑え目なものの、その口調は高嶺くんに負けずと刺々しい。
聞いているこっちの胸がヒリヒリする。
「お生憎様。幸い頭の出来は誰かさんに似なかったお陰で、俺、弁護士やってるんだ。戸籍を辿れば母親の住所調べるなんて朝飯前なんだよ」
「べ、弁護士…アンタが…?」
呟いた高嶺くんのお母さんの空気が少し和らいだ。
「そ、それなら普通に連絡くれればいいじゃない。何もお嫁さんになるコの前で私に恥かかすような真似しなくったって、ねえ?」
同意を求めながらも初めてこちらに向けられた視線は、明らかに私を値踏みしていた。
私はこの目をイヤというほど知っている。
こういう目をした人は必ず私を下に見て、自分の都合のいいように利用しようとするんだ。
蛇に睨まれたカエルのように声も出せないで固まっていると、高嶺くんが庇うように私の前に立ちはだかった。
なんで??
どういうこと???
全く状況を理解できないでいると、「行くぞ」と短く言った高嶺くんが、私の手を掴んで一番奥の席に向かって歩き出した。
高嶺くんのお母さんは、席に着くとすぐにスマホを取り出し、ずっと画面を見つめている。
そして、高嶺くんが真正面に立つと、やっと顔を上げた。
やっぱり気づかなかっただけ?
いや、違う。
そう思ったのは、高嶺くんのお母さんが酷く怪訝そうな顔をしていたから。
まるで目の前の息子が見ず知らずの赤の他人であると言わんばかりに。
そんなお母さんに、高嶺くんが更にワケの分からないことを言い出す。
「タクヤさんなら来ませんよ」
は?
タクヤさんって誰??
「……あなた、一体?」
お母さんはお母さんでやっぱり高嶺くんに気付いてないしで、本当にもう何がなんだか。
ただ、二人のやりとりを黙って見守るしかできない。
「さすがだな。実の息子の顔が分からないだけじゃなく、声を聞いてもまだ思い出せないんて」
「実の息子…?ってことは、あなた…まさか、景なの?」
「そのまさかだよ。俺だってまさか実の母親に結婚報告するために、マッチングサイト使ってアンタ好みの男になりすます羽目になるなんて思いもしなかったけどな」
ってことはつまり。
今ここに高嶺くんのお母さんがいるのは、私と高嶺くんの結婚報告を聞くためじゃなくて、マッチングサイトで出会ったタクヤさんとの待ち合わせのためで。
そのタクヤさんっていう人は架空の人物で、高嶺くんがなりすましていたってこと?
「きっ、気持ち悪いわね!あんたに連絡先なんて教えてないのに、どうやって私のこと探し当てたのよ!?どうせ犯罪まがいのことしたんでしょ!?昔から素行悪かったものね」
ランチタイムを前にお客さんの増え始めた店内を気にしているのか、声のトーンは抑え目なものの、その口調は高嶺くんに負けずと刺々しい。
聞いているこっちの胸がヒリヒリする。
「お生憎様。幸い頭の出来は誰かさんに似なかったお陰で、俺、弁護士やってるんだ。戸籍を辿れば母親の住所調べるなんて朝飯前なんだよ」
「べ、弁護士…アンタが…?」
呟いた高嶺くんのお母さんの空気が少し和らいだ。
「そ、それなら普通に連絡くれればいいじゃない。何もお嫁さんになるコの前で私に恥かかすような真似しなくったって、ねえ?」
同意を求めながらも初めてこちらに向けられた視線は、明らかに私を値踏みしていた。
私はこの目をイヤというほど知っている。
こういう目をした人は必ず私を下に見て、自分の都合のいいように利用しようとするんだ。
蛇に睨まれたカエルのように声も出せないで固まっていると、高嶺くんが庇うように私の前に立ちはだかった。
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