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プロポーズ

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あれから二週間。
その間ずっと、私は高嶺くんに言われた脅し文句について考えていた。

会って後悔するってどういうこと?

やっぱりアレかな。

『うちの景に、お前のような人間は相応しくない』とか言われちゃうのかな。
それとも『好きな額を書きなさい』って小切手を渡されて、別れるよう言われるとか?

想像すればするほど怖くなる。

それでも、少しでも良い印象を持ってもらえるように、ゼ●シィを買って結婚準備マナー特集を読んだり、美容院に行ったり、親ウケのいい洋服を買ったりして、私にできる最大限の準備をして決戦の日を待った。

高嶺くんはそんな私に気づいてはいたようだけど、特にアドバイスをくれることはなかった。

そして、今朝。
よりによって当日。
珍しく早起きして一緒に朝食を食べていたタイミングで。

「今日、会わせるから」

と言ってきた。

「えっ、今日!?」

「そう、今日」

「何でそんな急に」

「事前に教えたら静花が緊張で死ぬと思って」

そ、それは…っ!
確かにそうかもしれないけど。

「あ!手土産準備してない…!」

「大丈夫。必要ない。ちょっと遠いから。9時には出発するぞ」

…ってあと1時間もない!!

「高嶺くんはゆっくり食べてて!」

食べかけの朝ごはんをほっぽり出して、洗面所に駆け込んだ。

普段あまり出番のない高嶺くんの車に揺られること2時間。

「ねえ、本当にここで合ってる?」

「ああ、大丈夫」

連れて来られたのは郊外のショッピングモール内にあるカフェだった。
約束に時間には少し早かったのか、高嶺くんは案内係の店員さんに待ち合わせであることを告げることなく、店内を見渡しやすそうな席を選び、私に隣に座るように言った。

てっきりそれなりにかしこまったお店か、ご自宅にお邪魔するものだと思っていたので、少しだけ緊張が解れる。

けれどそれは束の間だった。

入り口のところに、凄いオーラを放つ美人が現れたから。
しかも、その顔の作りは、少し離れたここから見ても高嶺くんと同じと分かる。

間違いない。
高嶺くんのお母さんだ。

一歩一歩こちらに近づいてくるごとに緊張が増し、背筋が伸びる。
相手がいよいよという位置に来て、こちらから挨拶するべく立ち上がろうとしたら、高嶺くんに止められた。

どうして?と尋ねる間もなく高嶺くんのお母さんは私達のテーブルの前までやって来て─







そして、私達の目の前を通り過ぎ、一番奥の、二人用の席に座ってしまった。
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