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プロポーズ
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「勘違いするなよ」
こんな高嶺くんは出会ってから初めて見る。
声も、表情も、人形のように冷たい。
「こいつはともかく俺はアンタに普通の結婚報告をしに来たつもりは毛頭ない」
「何よ、それ。どういうことよ?」
曲がりなりにも母親だからなのか、お母さんは全く動じずに聞き返した。
「コイツの家はうちと違ってマトモなんだ。だから、俺の母親がどういう人間かその目に焼き付けさせて、これから先、俺のいない所で母親ヅラして近づいてくることがあってもフルシカトするよう教え込むためにこんな微睡っこしい手を使ってまでアンタに会わせたんだよ」
畳み掛けるように言われると、さすがのお母さんも、高嶺くんとは対象的に、顔をみるみる赤くさせた。
「な…っ、何よ!アンタみたいなろくでもない息子なんて、一生会いに行くつもりなんてなかったわよ!!」
「…そうだよな。高校受験を目前に控えた三者面談にすら来なかったような母親だもんな。でも、そろそろ親父にイチャモンつけてふんだくったカネも底をつく頃だろう?俺が弁護士やってるって聞きつけたらどういうことをしでかすか予想がつかないから、念の為の保険だよ。お母さん」
『それは、いくらなんでも言い過ぎだよ。高嶺くん』
と、言えれば良かったのだけれど。
壮絶過ぎる親子の会話にただただ圧倒されて、カフェに入ってからほとんど一言も発せないでいると、やり場のないお母さんの怒りの矛先がこちらに向いた。
「あ…アンタは何様なのよ?さっきから澄ました顔して突っ立って!!」
半分やけくそになったお母さんの声のトーンは一段上がって店内に響きわたり、周囲の注目が集まる。
それに僅かに緩んだ高嶺くんのガードをかいくぐって伸びてきた手が私の腕を引き、お母さんの真正面に座らされた。
「結婚の報告に来たなら自己紹介くらいしなさいよ」
「あの、わた、私…っ」
怖い。
ずっと黙っていたせいもあって、唇が強張り、動かない。
そんな私を高嶺くんのお母さんは、見逃してはくれなかった。
「あ、そうか。どうせすぐ離婚するつもりなんだ?」
真っ赤なルージュを引いた唇が意地悪くつり上がった。
「そりゃそうよね。景ったら私のこと大っ嫌いなはずなのに昔っから私にそっくりで。ワガママで自己中で、人の気持ちが分からない。その様子じゃ今日だって何も聞かされずに連れて来られたんでしょう?」
確かに何も聞かされては居なかったけれど。
形勢逆転。
一方的に責められているのに、高嶺くんは何も言い返さない。
それどころかお母さんの言葉にダメージを受けているように見える。
ただでさえ青白かった顔から更に血の気が失われていく。
それがただ心配で─
「本当にいいところなんて一っつもない。弁護士バッジがなきゃ、誰もアンタなんかと結婚しようなんて思わないのよ!」
「そんなことありませんっ!!」
止めのセリフを言い放った高嶺くんのお母さんに、気づけば即座に異を唱えていた。
こんな高嶺くんは出会ってから初めて見る。
声も、表情も、人形のように冷たい。
「こいつはともかく俺はアンタに普通の結婚報告をしに来たつもりは毛頭ない」
「何よ、それ。どういうことよ?」
曲がりなりにも母親だからなのか、お母さんは全く動じずに聞き返した。
「コイツの家はうちと違ってマトモなんだ。だから、俺の母親がどういう人間かその目に焼き付けさせて、これから先、俺のいない所で母親ヅラして近づいてくることがあってもフルシカトするよう教え込むためにこんな微睡っこしい手を使ってまでアンタに会わせたんだよ」
畳み掛けるように言われると、さすがのお母さんも、高嶺くんとは対象的に、顔をみるみる赤くさせた。
「な…っ、何よ!アンタみたいなろくでもない息子なんて、一生会いに行くつもりなんてなかったわよ!!」
「…そうだよな。高校受験を目前に控えた三者面談にすら来なかったような母親だもんな。でも、そろそろ親父にイチャモンつけてふんだくったカネも底をつく頃だろう?俺が弁護士やってるって聞きつけたらどういうことをしでかすか予想がつかないから、念の為の保険だよ。お母さん」
『それは、いくらなんでも言い過ぎだよ。高嶺くん』
と、言えれば良かったのだけれど。
壮絶過ぎる親子の会話にただただ圧倒されて、カフェに入ってからほとんど一言も発せないでいると、やり場のないお母さんの怒りの矛先がこちらに向いた。
「あ…アンタは何様なのよ?さっきから澄ました顔して突っ立って!!」
半分やけくそになったお母さんの声のトーンは一段上がって店内に響きわたり、周囲の注目が集まる。
それに僅かに緩んだ高嶺くんのガードをかいくぐって伸びてきた手が私の腕を引き、お母さんの真正面に座らされた。
「結婚の報告に来たなら自己紹介くらいしなさいよ」
「あの、わた、私…っ」
怖い。
ずっと黙っていたせいもあって、唇が強張り、動かない。
そんな私を高嶺くんのお母さんは、見逃してはくれなかった。
「あ、そうか。どうせすぐ離婚するつもりなんだ?」
真っ赤なルージュを引いた唇が意地悪くつり上がった。
「そりゃそうよね。景ったら私のこと大っ嫌いなはずなのに昔っから私にそっくりで。ワガママで自己中で、人の気持ちが分からない。その様子じゃ今日だって何も聞かされずに連れて来られたんでしょう?」
確かに何も聞かされては居なかったけれど。
形勢逆転。
一方的に責められているのに、高嶺くんは何も言い返さない。
それどころかお母さんの言葉にダメージを受けているように見える。
ただでさえ青白かった顔から更に血の気が失われていく。
それがただ心配で─
「本当にいいところなんて一っつもない。弁護士バッジがなきゃ、誰もアンタなんかと結婚しようなんて思わないのよ!」
「そんなことありませんっ!!」
止めのセリフを言い放った高嶺くんのお母さんに、気づけば即座に異を唱えていた。
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