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プロポーズ

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「どこなのよ?景のいいところって。言ってみなさいよ」

再び睨みつけられ、膝が震える。
本当は今すぐ逃げ出したい。

だけど、今日だけは、今だけは引き下がれない。

「たっ、高嶺くんは、私の事何回も助けてくれました。学校で襲われそうになった時も、お客さんに襲われそうになった時も」

「あなた…ちょっと襲われすぎじゃない?大丈夫なの??」

「高嶺くんのお陰で無事でした!!それに、親友と上手くいかなくなったときも、仲を取り持ってくれたし、熱が出たときちょっと甘えたがるところは可愛いし…っ」

「甘える?景が…?」

信じられないと言うように、お母さんの眉間にシワが深く刻まれる。

「…もういいわ。こんなところで大声でのろけないでよ、恥ずかしい。でも…あなただって今は若くて綺麗かもしれないけど、数年もしたら景に捨てられるに決まってるわ」

それは────ある。
大いにあり得る。

けど、ここで認めるわけにはいかないのに。
高嶺くんのための反論ならできても、自分のことになると口を糸で縫い付けられたように言葉が出てこない。

何か言わなきゃ。
言い返さなきゃ。

そう思えば思うほど、何も浮かべられないでいると、ずっと黙っていた高嶺くんが

「大丈夫。それだけは、絶対にない」

と言って、胸元から写真のようなものを取り出して、お母さんに手渡した。

「…何よ、これ?景と…誰よこの隣の地味でダサくて暗そうなブス」

…もしかして。
いや、もしかしなくても。

「本人目の前にしてブスって言うな。高校時代の俺らだよ」

やっぱり───!!

何で!?
何で高校時代の写真そんなものがこの世に存在するの!?
何で持ち歩いてるの!!?

大慌てでお母さんから写真を取り上げようと手を伸ばしたけれど、サラリと躱された。

「は?嘘でしょ。何がどうしてこうなるのよ。別人じゃない。あ、分かった!整形しいじったんでしょう!?」

「いっ、いじってません。友達が色々教えてくれて…」

「絶対いじってるって!目?それとも鼻??」

面白がって食い入るように写真を見ていたお母さんに、今度は高嶺くんが手を伸ばした。
もちろん、私のときとは違って、躱されることはなく。
高嶺くんは胸ポケットに大事そうに写真をしまった。

「ってことで。この頃からずっとコイツに惚れてるんだ。これから先年取って外見が変わったくらいで心変わりするなんて、ありえない」

これには高嶺くんのお母さんも返す言葉がないようだった。

内心、高校時代の私の写真が高嶺くんのセリフにそこまで説得力を持たせていると思うと複雑だし、できれば今ここで燃やしてこの世から消して欲しいけれど。

「あの…私も、一生高嶺くんのそばに居たいです」

勇気を振り絞ってダメ押しすると、高嶺くんのお母さんは

「せいぜい頑張れば?」

と言い残して去っていった。

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