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特別 1
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体の熱が引いて来ると思考もクリアになって、恥ずかしさで死にそうになる。
桐嶋はまだ私の背中に半分体を預けたまま。
顔を合わせてないのがせめてもの救いだ。
恋人同士であれば愛を囁き合う幸せな時間は、私と桐嶋の関係性の下では居心地が悪いものとしか言いようがない。
それに耐えかねて桐嶋の下から這い出て体を起こすと、生温かい感触がドロッと内腿を伝った。
「ちょっと…!また!!」
「また、何?」
「な、ナカに!!」
「ナカに、何だよ」
私に恥ずかしい言葉を言わせようと悪戯っぽく笑う。
「~っっ変態!!」
そうはさせまいと、それしか言わずにバスルームに駆け込んだ。
チェックアウトの手続きは大地先輩が済ませてくれていたらしく、着付けし直してもらった代金の清算だけして、ロビーで桐嶋のタバコ待ちをしていると、隣の席で新聞を読んでいた外国人と目が合った。
“You look so beautiful!”
彼はニッコリと微笑んで身を乗り出してきた。
“Oh, Thanks.”
着物でしょ、着物。分かってる。さっき誰かさんに言われたから。
“What brings you here today ? I wanna get to know better.”
そう言うと今度はスッとナチュラルに私の手を両手で包み込んで撫でて来た。
ん?これはもしかしなくても…ナンパされてる…?
顔はちょっとカッコイイけど軽すぎる。
“I'm sorry but I can't help you.”
お決まりの断り文句でやんわりと断ってみる。
“Don’t give me that.”
意外としつこい…と困っていたら桐嶋が現れて無言で私の腕を掴んで、出口の方に私を引っ張って行った。
「ちょっと!腕痛いってば。離してよ!」
「何でお前はそんなに隙だらけなんだよ」
「知らないわよ。着物が珍しいだけでしょ!?」
「簡単に手ぇ握られてんじゃねーよ」
「手ぐらい何よ。外国じゃ普通なんじゃないの?」
桐嶋の反論が止まったかと思うと、腕を掴んでいた手が、私の手まで下りてきてキュッと包んだ。
「何…?」
「…外国じゃ普通なんだろ?」
「ここ、日本…」
猛烈に恥ずかしさが込み上げてきて、頬が熱くなる。
さっきまでもっと恥ずかしいことをしていたのに。
この前は、ただただ居心地が悪かっただけなのに。
一体何どうなっているんだろう。
握られた手を振りほどけないままホテル出口の自動ドアが開き、正面に現れた人物を見て足が止まった。
「依子?」
「お、お父さん!?」
「お前、今日は堂本先生と会ってたんじゃ…」
慌てて繋がれていた手を離そうとブンッと振る。
…解けない!?
さっきより強くもう一回振る。
やっぱり解けない。
桐嶋を見上げて『何考えてるのよ!!』と目で訴えてみても、こちらを見もしない。
「…桐嶋くんだね?立ち話も何だから中で」
と、父に促され、ホテルへ逆戻りした。
桐嶋はまだ私の背中に半分体を預けたまま。
顔を合わせてないのがせめてもの救いだ。
恋人同士であれば愛を囁き合う幸せな時間は、私と桐嶋の関係性の下では居心地が悪いものとしか言いようがない。
それに耐えかねて桐嶋の下から這い出て体を起こすと、生温かい感触がドロッと内腿を伝った。
「ちょっと…!また!!」
「また、何?」
「な、ナカに!!」
「ナカに、何だよ」
私に恥ずかしい言葉を言わせようと悪戯っぽく笑う。
「~っっ変態!!」
そうはさせまいと、それしか言わずにバスルームに駆け込んだ。
チェックアウトの手続きは大地先輩が済ませてくれていたらしく、着付けし直してもらった代金の清算だけして、ロビーで桐嶋のタバコ待ちをしていると、隣の席で新聞を読んでいた外国人と目が合った。
“You look so beautiful!”
彼はニッコリと微笑んで身を乗り出してきた。
“Oh, Thanks.”
着物でしょ、着物。分かってる。さっき誰かさんに言われたから。
“What brings you here today ? I wanna get to know better.”
そう言うと今度はスッとナチュラルに私の手を両手で包み込んで撫でて来た。
ん?これはもしかしなくても…ナンパされてる…?
顔はちょっとカッコイイけど軽すぎる。
“I'm sorry but I can't help you.”
お決まりの断り文句でやんわりと断ってみる。
“Don’t give me that.”
意外としつこい…と困っていたら桐嶋が現れて無言で私の腕を掴んで、出口の方に私を引っ張って行った。
「ちょっと!腕痛いってば。離してよ!」
「何でお前はそんなに隙だらけなんだよ」
「知らないわよ。着物が珍しいだけでしょ!?」
「簡単に手ぇ握られてんじゃねーよ」
「手ぐらい何よ。外国じゃ普通なんじゃないの?」
桐嶋の反論が止まったかと思うと、腕を掴んでいた手が、私の手まで下りてきてキュッと包んだ。
「何…?」
「…外国じゃ普通なんだろ?」
「ここ、日本…」
猛烈に恥ずかしさが込み上げてきて、頬が熱くなる。
さっきまでもっと恥ずかしいことをしていたのに。
この前は、ただただ居心地が悪かっただけなのに。
一体何どうなっているんだろう。
握られた手を振りほどけないままホテル出口の自動ドアが開き、正面に現れた人物を見て足が止まった。
「依子?」
「お、お父さん!?」
「お前、今日は堂本先生と会ってたんじゃ…」
慌てて繋がれていた手を離そうとブンッと振る。
…解けない!?
さっきより強くもう一回振る。
やっぱり解けない。
桐嶋を見上げて『何考えてるのよ!!』と目で訴えてみても、こちらを見もしない。
「…桐嶋くんだね?立ち話も何だから中で」
と、父に促され、ホテルへ逆戻りした。
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