運命の落とし穴

恩田璃星

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運命の再会2

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 「あら、やっぱり二人、お知り合い?」

 今日の世話役のおばちゃんが、固まっている私にはお構いなしに、嬉しそうな声を上げた。

 「ええ、同じ高校だったんです。学年は違いましたけど」

 「まあ!きっとご縁があるのね。じゃあ、改めまして、お忙しいところ、ようこそおいでくださいました。こちらは、羽立はだてすばるさんです」

 「羽立昴です」

 私の向かいに座る羽立くんが、きちんと頭を下げる。

 「こちら、常盤ときわ奏音かのんさんです」

 「……常盤…奏音です」

 私は、羽立くんに合わせて、壊れた首振り人形みたいにカクカクと頭を下げるだけ。

 「お二人は高校の先輩と後輩ってことになるのかしら?当時から面識があったの?」

 パニック状態の私が何も答えられずに、さっきの店員さんが持って来てくれたお冷やをあおっていると、羽立くんが答えてくれた。

 「はい。奏音さんは、とても面倒見が良くて、生徒会長までしていたので、みんなのお姉さん的存在でしたから」

 「分かるわぁ。長身だし、お顔立ちも凛としていらして、いかにも頼れる姐御って感じだものね。もしかして、羽立さん、当時から憧れてらしたとか?」

 「実は、そうなんです。このお見合いのお話をいただいた時は、何て言うか、運命みたいなものを感じました」

 「ぐふぅっ」

 予想外の言葉に口に含んでいた水を吹き出しそうになった。

 幸い、ハンカチで口を押さえたので、鼻がツンとしただけで済んだけれど。

 『憧れ』?

 『運命』!?

 一体どの口がそんなこと言ってるの!!?

 この話をもらったとき、私には運命なんて言葉、頭の隅を過ぎりもしなかった。

 それに、相手が羽立くんだと分かっていたら、絶対に、親に偽装彼氏を紹介してでも断ったのに。

 一刻も早くこの場から立ち去りたい。

 どうすればいい?

 急に具合が悪くなったことにでもする?

 いや、だめだ。

 そんなこと言ったら、羽立くん、なんだかんだで優しいから心配掛けてしまう。

 むしろ病院まで付き添われちゃう。

 ここから逃げる方法を、脳みそをフル稼働してぐるぐると考えていたらー

 「あら、それならもう早速後は若い二人で…にした方が良さそうね。お返事は、私の方に連絡くださいね。じゃ、私達はこれで」

 そそくさと、席を外そうとするおばちゃん。

 「ありがとうございます」と立ち上がって、また丁寧に頭を下げる羽立くん。

 それを愕然と見上げるしかできない私。


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