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でも、私より遥かに大きなショックを受けているのは、他でもない矢吹だった。
そんな矢吹を見つめる善家社長の眼差しが、とても温かいことに気づく。
「…夫婦で話し合って、海斗には心配をかけまいと隠し事をしていたことで、息子の心をこんなに歪めてしまった点においてはね」
「俺の…ため?」
「いつから気づいていたのか知らないけれど…」
善家社長がふうっと大きく一度息を吐いた。
「海斗の言うとおり、私は同性愛者だ。今も、同性の恋人がいる」
「…っ!やっぱり…裏切り者!!母さんと再婚しておきながら…!!」
「海斗、最後まで話を聞きなさい。心配しなくても母さんは知ってる」
「え?」
「それに、私は母さんのこともちゃんと愛してる」
「は!?あんた、自分が今何て言ったのかもう忘れたのかよ!?同性愛者が女を愛せるわけないだろ?」
緊迫する空気を和らげるように、砕けた口調で宮本くんが口を挟む。
「…ないこともないんじゃないの?俺、元々は完全にノーマルだけど、昴だけはイケたもん。その逆があってもおかしくないと思うけど?」
「全く同感だ。…とは言っても、私の妻に対する感情が『恋愛』であったことは一度もない。妻と肉体的な結びつきを持ったことは一度たりともないからね」
サラリと投下された爆弾発言にその場が凍りつく。
それってつまり…矢吹は善家社長の本当の息子じゃないってこと!?
「憎まれていると思っていたのに…そんな顔をしてくれるなんて意外だったな」
私の隣に立ち尽くす矢吹は、今にも倒れそうなほどに顔色を失っている。
とても見ていられない。
支えようと手を伸ばそうとしたところで、羽立くんの様子を窺うと、ばっちり目が合ってしまった。
『何ですか?その手』
と、羽立くんが目で言ってくる。
負けずにこちらも目で言い返す。
『だって!放っておけないよ!!』
『どんだけお人好しなんですか!!』
私と羽立くんの目がバチバチと火花を散らしているうちに、本当に矢吹の体がぐらりと傾いた。
反射的に抱きとめると、すぐに引き剥がされて、入れ替わりで羽立くんが矢吹を支えた。
「…っ!触るな!!」
「矢吹さんの為なんかじゃありません。俺の奏音さん、バカがつくほどお人好しなんで、本当は怖いくせに、自分のこと犯そうとした男まで助けようとしちゃうんです」
あんなに青ざめた顔をしていた矢吹はうっすらと頬を紅潮させ、羽立くんと小競り合いをしている。
なんか…モヤッとする。
そんな私とは対照的に、善家社長は穏やかに微笑み、口を開いた。
「心配しなくてもお前は私の子だよ、海斗」
「は?どういうことだよ!?そんなことあり得ないだろう?だってアンタ、母さんとは…」
「そうだ。でも、お前が私の子であることは紛れもない事実だ。DNA鑑定しても構わない」
「…もしかして、人工授精…ですか?」
羽立くんの問いかけに、善家社長は頷いた。
そんな矢吹を見つめる善家社長の眼差しが、とても温かいことに気づく。
「…夫婦で話し合って、海斗には心配をかけまいと隠し事をしていたことで、息子の心をこんなに歪めてしまった点においてはね」
「俺の…ため?」
「いつから気づいていたのか知らないけれど…」
善家社長がふうっと大きく一度息を吐いた。
「海斗の言うとおり、私は同性愛者だ。今も、同性の恋人がいる」
「…っ!やっぱり…裏切り者!!母さんと再婚しておきながら…!!」
「海斗、最後まで話を聞きなさい。心配しなくても母さんは知ってる」
「え?」
「それに、私は母さんのこともちゃんと愛してる」
「は!?あんた、自分が今何て言ったのかもう忘れたのかよ!?同性愛者が女を愛せるわけないだろ?」
緊迫する空気を和らげるように、砕けた口調で宮本くんが口を挟む。
「…ないこともないんじゃないの?俺、元々は完全にノーマルだけど、昴だけはイケたもん。その逆があってもおかしくないと思うけど?」
「全く同感だ。…とは言っても、私の妻に対する感情が『恋愛』であったことは一度もない。妻と肉体的な結びつきを持ったことは一度たりともないからね」
サラリと投下された爆弾発言にその場が凍りつく。
それってつまり…矢吹は善家社長の本当の息子じゃないってこと!?
「憎まれていると思っていたのに…そんな顔をしてくれるなんて意外だったな」
私の隣に立ち尽くす矢吹は、今にも倒れそうなほどに顔色を失っている。
とても見ていられない。
支えようと手を伸ばそうとしたところで、羽立くんの様子を窺うと、ばっちり目が合ってしまった。
『何ですか?その手』
と、羽立くんが目で言ってくる。
負けずにこちらも目で言い返す。
『だって!放っておけないよ!!』
『どんだけお人好しなんですか!!』
私と羽立くんの目がバチバチと火花を散らしているうちに、本当に矢吹の体がぐらりと傾いた。
反射的に抱きとめると、すぐに引き剥がされて、入れ替わりで羽立くんが矢吹を支えた。
「…っ!触るな!!」
「矢吹さんの為なんかじゃありません。俺の奏音さん、バカがつくほどお人好しなんで、本当は怖いくせに、自分のこと犯そうとした男まで助けようとしちゃうんです」
あんなに青ざめた顔をしていた矢吹はうっすらと頬を紅潮させ、羽立くんと小競り合いをしている。
なんか…モヤッとする。
そんな私とは対照的に、善家社長は穏やかに微笑み、口を開いた。
「心配しなくてもお前は私の子だよ、海斗」
「は?どういうことだよ!?そんなことあり得ないだろう?だってアンタ、母さんとは…」
「そうだ。でも、お前が私の子であることは紛れもない事実だ。DNA鑑定しても構わない」
「…もしかして、人工授精…ですか?」
羽立くんの問いかけに、善家社長は頷いた。
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