四天王寺ロダンの冒険

ヒナタウヲ

文字の大きさ
83 / 106
馬蹄橋の七灯篭――『四天王寺ロダンの挨拶』より

その15

しおりを挟む
(15)

 ――みきちゃん、僕です。
 今回は『東夜楼蘭』での公演劇に誘ってくれてありがとう。僕等の様なしがない役者集団の小さな劇団に大手芸能プロダクション『アズマエンタープライズ』から声をかけていただいたのも、きっとみきちゃんのお陰だと僕は思っています。
 僕とみきちゃんは出会ってどれくらいだろうね。もう、始まりを思い出せないくらいの幼い頃だったからね。
 みきちゃんは『東夜楼蘭』の劇に誘ってくれた時、いくつかお話をしてくれましたね。それは『警察官ピストル強奪事件』『連続婦女暴行事件』だけじゃなく、根来動眼、それに東珠子さんや田中竜二、火野龍平さんの事等々。そして確かにみきちゃんの言う通り『馬蹄橋』はあった。勿論『七灯篭』もあって、動眼温泉の名残ある旅館街もあった。僕等劇団員は君の言う通り先に入って『東夜楼蘭』で劇の練習をして、そこに泊まり込んだ。
 でも、今回こうしてみきちゃんに調べたことをパソコンでパチパチと音を鳴らして書くうちに、ひょっとしたらみきちゃんが僕に声をかけてくれたのは、過去の事を調査してほしいと思ったからで、役者としての自分は必要とはされていなかったのかなぁ何て、思う次第です。(あっ、でもこれは僕の一方的な邪推かもしれない、もしそうならご免なさい!!汗)
 何故そう思うのかというのは幼い頃からの僕を良く見知っているみきちゃんが、僕自身の偏執狂的性格――つまり物事を深く行動して調べ尽くす性格と後は僕の遠い親戚があるえらい探偵の助手だったことを知っているからで、もしかしたら僕ならその過去のあらゆることを自発的に調べてくれるんじゃないかと思った次第です。だから僕は馬蹄橋の過去に彩られた『東夜楼蘭』に送り込まれたのかなと。
 違うなら再度御免なさい。
 さて、僕はみきちゃんの期待通りだったかは別として、結局自ら自発的に過去を日捲るように調べてしまったのです。そしてそれをここにしたためました。でもせっかくなので僕はこれを小説仕立てにしてみました。そうすれば万一誰かの目に留まっても個人の名も名誉も架空のフィクションとして、また劇の素人脚本として読まれるだけでしょうから。
 僕という存在は決して現在のみきちゃんの存在を危うくするものではない唯のしがない三流劇団員の役者です。いつでも蜥蜴のしっぽの様に切り落とせるようなもんです。
 では、みきちゃん、冒頭を長々と書きましたが物語のあらすじとして読んでいただいたら、いよいよ本文へと進んでください。
 そう、この短編小説のタイトルは『馬蹄橋の七灯篭』にしました。
 それでは、みきちゃん。僕の拙い短編小説を是非読んで下さい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...