惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

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第8話 会話(1)

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 ——僕が死んでしばらくして。遠くからかすかに声がして、誰かが歩いてくるような気配がする。たぶん……女性二人の……。

「……」
「……」

「……?」
「……なんちゃって、です♪」

「あはははっ。もーっ、そんなことをおっしゃられても。ふふふ。……あら、そろそろ日も暮れてきましたね。どこかこのあたりで野宿できそうなところを……。おやあそこに何か? あれはっ! 牙狼ファングです! お下がりを!」
「……確かに。ではわたくしが」

「いえいえっ! 私が!」
「このようなときは、、ですよね?」

「あ、はい……。ええと、それではくれぐれもお気をつけを——って、あれ? すでに息がないような……。はっ!? そこに! すぐそばに人が! 倒れて!」
「くっ! 狼はまかせます!」

「は、はいっ」
「……もし、大丈夫ですか? わかります? っ! これはひどい。この脇腹の裂傷は……。ん? 血の色が……紫?」

「狼の方は問題ありません。この方のナイフで致命傷を……んんん? この狼、毒狼ポイズン・ウルフじゃありませんか!?」
「確かにこの灰紫の毛並みは……。とすれば複合治療が必要ですね。すぅ、はぁ……。では、〈大気におわしますマナよ、しばし我に力をかしておくれ。のものにひとときのやすらぎと休息を与え、再び立ち上がる力を。そして身内に巣食い、内側から損なうものを取りのぞき、とこしえの癒やしを——ヒール・アンド・キュア〉!」

「うーん。それにしてもどうして毒持ちが……。この地域での出没情報は、今までなかったですよねえ——どうしました?」
「手応えが……? 表面の傷はほぼ癒えました。毒も消失した感触があります。けれど回復の効果が遅いような?」

「んー? 妙な感じですね」
「もう一つ……〈ハイ・ヒール〉!」

「どうでしょう?」
「んんん? やはり手応えが……?」

「ないのですか!?」
「いえ、あるにはあるのですが……?」

「意識、戻りませんね。呼吸も弱いようですし……」
「…………」

「どういたしますか?」
「……。わたくしはこのままこの方についています。ひとまず野営の準備を。今日はとくに目立たないように」

「かしこまりました。すぐに」


 ——しばらくして。


「どういうことでしょうかねえ……。傷そのものは修復できてますよね。でもまったく意識が戻りそうにないですよねえ……」
「わたくしの治癒魔法が効かない事例が……こんなに早く……。けれど今はこの方に何か手を打たないと……」

「そういえば体温も下がったままですものね。たき火のそばですが、あまり上がらず……。あっ……そうだ……」
「何か?」

「あ、あのぅ、思い出したのですが……。私の家の古い言い伝えなのですが……。でもこういうときに役立つかどうか」
「何か! 方法が! あるのですかっ!」

「いえ、でも、その、ごにょごにょ……」
「なんですか! あるのならさっさと言いなさい! さっさっと! さぁ!」

「あのー、そのー、冬の遭難者とかに行う方法で、このうららかな季節に行うものでは……そのぉ……、ありませんのででしてね……」
「ええい! まどろっこしい! さっさと言いなさい!」

「……です」
「ひとは……なんです?」

「人肌です。そのー、肌と肌をくっつけて温めるのです。それがいちばんだと」
「肌と、肌を? 手のひらを当てるのですか?」

「いえ、その……、あのぅ、救助者側が添い寝してですね。傷病者にぴたっと密着するんですけどね。それをハダカで……」
「ハダカで」

「はい」
「いたすのですか?」

「つまり、すっぽんぽんで」
「すっぽ……」

「それがいちばんだと……。特に男性には女性の肌がいちばん効くと……。なるべくエッチな感じでねっとり絡みついてあげると、さらに効能覿面てきめん・効果抜群! たちまちびっくり! 立ちあがり! と我が家伝来の古文書に……!」
「………………」

「………………」
「………………」

 ——急に静かになった。
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