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第23話 依頼
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「こんばんは、旅の方々。この村の滞在はお気に召されましたでしょうか」
まず、壮年の男性が僕らに話しかけてきた。
「ご飯がおいしくて大変幸せです~」
エミーさんがフランクに返事をした。ジョッキを持ちあげつつの軽い調子だ。
リーシアさんも、うんうん、とうなずいている。
僕は、場の雰囲気がいまいちつかめず挙動不審している……。
「それはそれは……。よろしゅうございました」
旅の面々の満足そうな様子に、男性の隣にいる初老の女性の表情も、心なしかホッとしているように見える。
そこにリーシアさんがズバッと切りこんだ。
「それで、ご用件は?」
村の重役らしき二人は一瞬驚いたようだったが、ちらりと目をかわして意を決した顔になった。壮年の男性が自己紹介してきて、
「わたくし、この村の長をしております、ランドルフと申します。それでこちらは——」
「この村で長年薬師をやっております、クィンです」
ランドルフ村長さんと、クィン薬師だった。
「じつはお願いがございまして……」
薬師のおばあさんが切り出す。
「私は魔力持ちではありませんで、おもに薬草中心の治療をしておりまして。ときにはポーションを取り寄せたりもするのですが……」
うんうん、とエミーさんが先をうながす。
「不肖ながら私では、どうにも手に負えない症状のものが幾人かおりまして。本日治癒術士様がこの村にご来訪くださったのも何かの縁、よろしければお力添えをいただけないかと」
「なるほど」
とエミーさんは、リーシアさんとそれとなく視線をかわし、
「かしこまりました。おいしいお食事とおいしい同衾ベッド……こほん、お宿をいただいております。こちらとしてもできるかぎりの協力はさせていただきたく存じます」
丁寧な言いまわしだ。こういうの慣れているのかな?
「そうですか。ありがとうございます」
薬師のおばあさんは、ホッとした表情をみせた。それに対してエミーさんは、ちょっと申しわけなさそうな顔でつけくわえた。
「ですが、私はそれほど高位の術が使えるわけではありませんよ? とりあえず診せていただいてから、対応できる、できないの判断を決めさせていただきたいと思いますので——」
「はい。よろしくお願いいたします」
薬師さんが深々と頭を下げた。
今のところ僕は、治癒術士については、このズボラでちょっとお調子者のエミーさんしか知らない。けれどもしかしたらこの職業は、この世界では貴重な存在なのかもしれない。術者の数が少ないとかかな? まだわからないけど。
「——それで、村長さんの方の用向きは?」
リーシアさんが話をふった。
「ええ……、それなんですが……」
あれ? 村長さん、声をひそめた。
「その、今日あなた様方が門番にお伝えくださった件でして……」
あ。あの毒狼のことだ。門のところでは、かなり深刻なやりとりをしたのを思い出す。
それで、とリーシアさんは先をうながした。
「あれから私含め数名で現地調査にむかったのですが、実情もおっしゃられたとおりのことと確認しまして——つきましてはもう少し詳しい情報をいただきたいのと、対応策等をご相談できればと……」
「うーん、対応策と言ってもなあ」
リーシアさんは頭をかいている。ちらりと僕を見て、
「まあ、詳しい話ならできると思う。その……ここでいいか?」
「あ、いえいえ、できれば私の家で」
村長さんの家でかあ。今みたいに食堂で話してるから村人に秘密ってことでもないようだけど、もう少し情報をもらって、方針を決めてからみんなには話すってことかな? 普通のやりとりのようで、そこそこ緊張感がある。
「うん、承知した。彼も同行させてよいか? 第一発見者は彼だ」
あれ? 僕も話に巻きこまれる?
「おお……、それはそれは是非にお願いいたします」
ということで、僕らにはいくつかの用事ができてしまった。
食事も終えたところだし、このまま移動することに——あれ? もしかして村長さんたち、そのあたりのタイミングも考えて依頼してきた、とか? いや僕の考えすぎかもしれないけど。
それから外に出るとき、
「おー、行ってきなー」
なんとなく事情がわかっているらしい宿のおかみさんにも声をかけられた。それから再度の、
「またねー、ろしゅつまのおにいちゃーん」
アシュリンちゃんのかわいい声で食堂内がドッと笑いにつつまれるのを背に——あれ、待って? どうして食堂に来たばっかりの村長さんもニンマリしてて、薬師のおばあさんまでもが口に手をあてて、こっそり肩をふるふる震わせてるんだ!?
どうしてみんな知っているんだーっ!
まず、壮年の男性が僕らに話しかけてきた。
「ご飯がおいしくて大変幸せです~」
エミーさんがフランクに返事をした。ジョッキを持ちあげつつの軽い調子だ。
リーシアさんも、うんうん、とうなずいている。
僕は、場の雰囲気がいまいちつかめず挙動不審している……。
「それはそれは……。よろしゅうございました」
旅の面々の満足そうな様子に、男性の隣にいる初老の女性の表情も、心なしかホッとしているように見える。
そこにリーシアさんがズバッと切りこんだ。
「それで、ご用件は?」
村の重役らしき二人は一瞬驚いたようだったが、ちらりと目をかわして意を決した顔になった。壮年の男性が自己紹介してきて、
「わたくし、この村の長をしております、ランドルフと申します。それでこちらは——」
「この村で長年薬師をやっております、クィンです」
ランドルフ村長さんと、クィン薬師だった。
「じつはお願いがございまして……」
薬師のおばあさんが切り出す。
「私は魔力持ちではありませんで、おもに薬草中心の治療をしておりまして。ときにはポーションを取り寄せたりもするのですが……」
うんうん、とエミーさんが先をうながす。
「不肖ながら私では、どうにも手に負えない症状のものが幾人かおりまして。本日治癒術士様がこの村にご来訪くださったのも何かの縁、よろしければお力添えをいただけないかと」
「なるほど」
とエミーさんは、リーシアさんとそれとなく視線をかわし、
「かしこまりました。おいしいお食事とおいしい同衾ベッド……こほん、お宿をいただいております。こちらとしてもできるかぎりの協力はさせていただきたく存じます」
丁寧な言いまわしだ。こういうの慣れているのかな?
「そうですか。ありがとうございます」
薬師のおばあさんは、ホッとした表情をみせた。それに対してエミーさんは、ちょっと申しわけなさそうな顔でつけくわえた。
「ですが、私はそれほど高位の術が使えるわけではありませんよ? とりあえず診せていただいてから、対応できる、できないの判断を決めさせていただきたいと思いますので——」
「はい。よろしくお願いいたします」
薬師さんが深々と頭を下げた。
今のところ僕は、治癒術士については、このズボラでちょっとお調子者のエミーさんしか知らない。けれどもしかしたらこの職業は、この世界では貴重な存在なのかもしれない。術者の数が少ないとかかな? まだわからないけど。
「——それで、村長さんの方の用向きは?」
リーシアさんが話をふった。
「ええ……、それなんですが……」
あれ? 村長さん、声をひそめた。
「その、今日あなた様方が門番にお伝えくださった件でして……」
あ。あの毒狼のことだ。門のところでは、かなり深刻なやりとりをしたのを思い出す。
それで、とリーシアさんは先をうながした。
「あれから私含め数名で現地調査にむかったのですが、実情もおっしゃられたとおりのことと確認しまして——つきましてはもう少し詳しい情報をいただきたいのと、対応策等をご相談できればと……」
「うーん、対応策と言ってもなあ」
リーシアさんは頭をかいている。ちらりと僕を見て、
「まあ、詳しい話ならできると思う。その……ここでいいか?」
「あ、いえいえ、できれば私の家で」
村長さんの家でかあ。今みたいに食堂で話してるから村人に秘密ってことでもないようだけど、もう少し情報をもらって、方針を決めてからみんなには話すってことかな? 普通のやりとりのようで、そこそこ緊張感がある。
「うん、承知した。彼も同行させてよいか? 第一発見者は彼だ」
あれ? 僕も話に巻きこまれる?
「おお……、それはそれは是非にお願いいたします」
ということで、僕らにはいくつかの用事ができてしまった。
食事も終えたところだし、このまま移動することに——あれ? もしかして村長さんたち、そのあたりのタイミングも考えて依頼してきた、とか? いや僕の考えすぎかもしれないけど。
それから外に出るとき、
「おー、行ってきなー」
なんとなく事情がわかっているらしい宿のおかみさんにも声をかけられた。それから再度の、
「またねー、ろしゅつまのおにいちゃーん」
アシュリンちゃんのかわいい声で食堂内がドッと笑いにつつまれるのを背に——あれ、待って? どうして食堂に来たばっかりの村長さんもニンマリしてて、薬師のおばあさんまでもが口に手をあてて、こっそり肩をふるふる震わせてるんだ!?
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