惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

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第22話 来訪者

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 明かりがついたことが合図になったのか、僕らのいる宿屋兼食堂に村の人たちが集まってきた。

 夕食の時間らしい。
 ガヤガヤとした雰囲気にまじって、僕らも食事をいただくことになった。
 まわりのテーブルをそれとなく見まわしていくと、いろんな料理がある。僕の知識にあるもので近い表現をすれば、パン、パスタ、ハーブソテー、ニョッキ、煮込み、スープ等々。

 うん、やっぱりおいしい。でも僕は人間になって間もないし、すべてを新鮮に感じるから、口にするものすべてをおいしいと思うのだろうか。もしかしたら一般的には普通の味かもしれないなあ、と思っていたら、

「うん、おいしいな」
「あたりでしたわね~」
 と二人も言いあっているので、たぶんここの味はすごくいいんだろうな。

 それから飲み物。これってやっぱり小麦のジュース……。ぐびぐび、ぷはぁ~、ひっく……。

「おー、アスト殿、いい飲みっぷりだなー」
「そういうリーシア様もぉ、顔赤いですよ~?」

 するとリーシアさんがあわてた様子で声をひそめた。

「ちょっ!? 今はは禁止……!」
「あ~、はいは~い。今は楽しい食事中でサマすよ~? 誰も聞いてないサマすし、聞こえても気にしませんサマよ~っと」

 とジュースのせいでさらに言動がいい加減になったエミーさんが、手をひらひらさせていい加減さをアピールしている。

 うーん……。
 やっぱり今までの二人の言動から推測すると、どうもこの二人の上下関係は表向きとは違うっぽい。

 見た感じは「旅の途にある高貴なヒーラーさんに獣人さんが護衛として付き従っている」という体裁だ。けれどもしかしたら獣人リーシアさんのほうが立場が上なのでは? と思わないでもない。でも、こういう複雑な事情がありそうなことは、まだ聞かないほうがいいかも……と思っていると、

「あ、おねえちゃんたちだ。こんばんは」

 かわいらしい声がしたのでそちらを向くと、昼間のファイヤーボール少女、アシュリンちゃん。それとその後ろにママさんらしき若い女性。母娘そろって美人さんだ……。

「あら、こんばんはです~」
「うむ、こんばんはだぞ」
 エミーさんとリーシアさんが挨拶をかえすと、

「昼間は娘がお世話になったようで……」
 とアシュリンママさんがお礼を言う。
「おかげさまで、アシュリンアシュリィの様子もずいぶん楽になりまして、いつも以上に元気になってしまって……」

「えへへ」
 と、はにかむアシュリンちゃん。魔素中毒症の話だったな。
 エミーさんとリーシアさんがそれに応じて、

「大丈夫ですわ。魔力のあつかい方をおぼえて慣れていけば、だんだんよくなっていくでしょうし」
「うんうん。熱が出たときと同じような対処方法だな。ちゃんと休ませれば問題ない」

「はい……ありがとうございました」
 そういってアシュリンちゃんとママは、パパさんらしき人が手を振っている向こうのテーブルに移動していった。パパさんも向こうから会釈してくる。できたパパさんだ。そして、

「じゃーねー、ろしゅつまのおにいちゃんっ」

 えっ!?

「ちょ、ちょっとアシュリィ。露出魔って、どういうこと!?」
 席に戻りながらママさんがひそひそとたずねている……!

「ん? えーっとね、あのおにいちゃんねー……」

 遠ざかる母娘の会話が何やら不穏な方向へ……。アシュリンちゃん、最後にすっごい爆弾を落としていっちゃったよ……。

「な、なははは……」
 僕は力なく笑うしかない。

「まあ、子どもの冗談だとすぐにわかるだろう」
 リーシアさんはまったく気にしない様子で小麦の……ジュースの入ったジョッキをグイッとやっている。リーシアさんの年齢は、僕より少し上くらいだと思う。この世界では何歳くらいから、こういう飲み物を飲んでいいのだろうか。

「少しばかり飲みすぎじゃありませんこと?」
「まあ、このくらいはまだ飲みはじめで……ひっく」

 エミーさんのたしなめに応じるリーシアさんの口調が心なしか軽い。

「それにですよ、今夜はたぶん……」
「わかってる。うん、まあ、だろうな」

 ほろ酔いで軽口を叩きあっているのに二人はどこかまじめだ。
 いや、どこかで気を張っている、とでもいったほうが正しいだろうか。

 そうなのだ。
 さすがの僕も気づいている。ガヤガヤしている食堂だけど、ときどき村人たちの視線がこちらに、ちらちらと注がれてくる。
 そして、リーシアさんが言った「そろそろ」とはどういう意味なんだろう。そんなことを思っていると——

 ギイィィィ、パタン、パタン、出入り口のスイングドアが動く。誰かが入ってきた。

 店内がぐっと静かになった。
 ざわつきがおさまり、話し声がとぎれとぎれになる。

 入ってきたのは壮年の男性と初老の女性。二人はしばらくゆっくりとまわりを見たり、知りあいがいたのか、目で挨拶をしたりしている。
 けれど僕らのテーブルを認めると、まっすぐこちらへと歩を進めてきた。

 そして、その表情はかなり真剣だった。
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