惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

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第51話 求婚(1)

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 そんなこんなで準備が整い、僕らは出発することになった。

 僕がはじめて訪れた村。はじめて出会った人たち。宿屋のおかみさん、村長さん、薬師さん、大工さん、あたたかな人たち。
 そして、亡くなった門番さんたち……。決して楽しいことばかりじゃなかった。つらいこともあった。それらをしっかりと胸に刻んで、この村を出発する。

 僕らがやってきたのとは反対側の門のところで、僕らは別れの挨拶をした。たくさんの人たちが来てくれた。たぶん、村のほとんどが集まってたんじゃないかな、と思う。

 みんな、「名残惜しいけど、ありがとう」みたいな感じで、おだやかな雰囲気だった。
 そんな人々の中で、アシュリンちゃんだけがしょぼんとした様子で立っていた。そしてその顔は今にも泣き出しそうで——

「ぐず……ぐず……ぐす……、ふえぇぇぇぇぇっ……」
 泣き出してしまった……。

「あらあら……この子は」
 とアシュリンママさんが困ったような愛おしむような顔をしているし、

「今朝からずっとこんな感じなんですよ。あなた方が出立しゅったつなさると聞いてから」
 とパパさんも似たような顔をしている。

「ぐじゅ……ぐじゅ……ずるる……」
 鼻水をすすりあげて泣きじゃくるアシュリンちゃんにも、僕らは別れの挨拶をした。この村を守るために、いちばん頑張ったのはアシュリンちゃんなんだよ。そういう思いをこめて、しっかりと彼女の手を握る。アシュリンちゃんはうつむいたまま肩を震わせ、その場に立ちつくしたままだった。ぼたぼたと、大粒の涙をこぼし続けたまま。

「じゃあ……そろそろ」
 とリーシアさんが目配せし、

「そうですわね。ではみなさま、ごきげんよう」
 名目上リーダー役をしているエミーさんが挨拶をのべ、人々に見送られて、僕らはこの村を出立した。しばらく進んでから振り返っても、みんなずっとこっちを見て、手を振ってくれている。

 ——と、その中から一人の女の子がトテトテと進み出てきた。それはもちろんアシュリンちゃんで、

「お……おねえ、ちゃ~~~~~~んっ、たち!!」
 一生懸命な声が遠くから聞こえてくる。

「あり……がと~~~~~~~ぉ!!」
 その声にこたえておねえちゃんなリーシアさんとエミーさんが手を振る。

「おっ……おっ……おにい、ちゃ~~~~~~んっ、も!! ありがとぉぉ~~っ」
 単独ご指名もあった。もちろん全力で手を振る。

「あり、がと~~~~~~ぉぉっ!!」
 彼女が何度も叫ぶ。

 そして——

「あたし~~っ!」
 うん。

「大っきく、なったら~~っ!」
 うんうん。

「おにいちゃん、の~~~~っ!」
 うんうんうん。

「お、おっ……おっ! およめさん! に! なる~~~~っ!!」
 うんうんう……。

 ——えっ!?

 アシュリンちゃん、いきなりの嫁宣言!?

「えっ!?」
 エミーさんがあっけにとられ、

「はっ!?」
 リーシアさんも同じく絶句。

 村の人たちの列から一人だけ前に出ているアシュリンちゃん。その顔は、真っ赤だ。

 その背後で真っ青になっているのは……アシュリンパパ!
 愛娘が重体になって、回復して、やっと動けるようになったと思ったら、今度はお嫁に行く宣言だ。——パパさん、心中お察しします……。

 ママさんの方はその隣で、うんうんとうなずいている。心なしか「私にはわかっていましたよ?」的な表情なのはどうしてだろう。

 そして真っ青になっているのがもう一人。
 それはスヴァン少年。ということは……もしかして君は彼女に淡い恋心を? そして今、盛大に傷心を!?

 僕は少年の心中も察しつつ、嫁宣言してきたアシュリンちゃんに手を振る。
 村のみんなの雰囲気はなごやかだった。アシュリンちゃんの嫁宣言は、別れの場面での微笑ましいワンシーンと受けとめられている様子。

 だから僕が急に引きかえしていって、彼女をぎゅっと抱きしめて、僕たち結婚します! お父さん、お母さん、僕にアシュリンちゃんをください! ——みたいなことをするのは、ちょっと違う。
 僕らは先へ進まなければならない。今はそういう場面だった。

 それでも僕らは途中何度か振りかえり、手を振るのを繰り返す。
 ずっとこちらを見つめているアシュリンちゃんと村の人たちが徐々に小さくなっていく。
 歩を進めながら、

「ま、まあ……まだ小さな女の子ですし、ね!」
 とエミーさんは明らかに動揺していて、

「そ、そうです……そうだな! べ、別に求婚されたからといって、かならず受けなければならないというわけでもないし、な!」
 リーシアさんも笑顔なんだけど——その笑顔が引きつっている。
 あははは……、あははは……と力のない笑いを繰り返す二人を、僕はあっけにとられて眺めていたんだけど、

「あらあら。モテモテね♪」
 いきなり耳元で声がしてびっくりした。
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